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最高裁判所の指導判例:労災認定

中国ビジネスレポート 法務
邱 奇峰

邱 奇峰

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2015年2月20日

労災認定における「勤務場所」、「業務上の原因」についての説明を行い、従業員に職務勤務中の過失があった場合でも、労災の認定には影響しないことを明確にした

キーワード:
労災認定、勤務場所、業務上の原因、勤務中の過失、行政訴訟

基本背景:

1. 孫某は天津市の某防雷技術有限公司(以下「使用者」という)の業務員であった。2003年6月10日午前、孫某は使用者から空港へ人を迎えに行くように指示を受けた。孫某が使用者所在地の天津市南開区某国際商業センター(以下「商業センター」という)8階から駐車場所に車を受け取りに行ったところ、1階入り口の階段で足を滑らせ、四段の高さから地面に落ち、四股が動かせなくなり、孫某は複数ヶ所に怪我、擦り傷を負った。

2. 孫某が所在地労働局(以下「労働局」という)へ労災認定申請を行ったところ、労働局は、孫某は業務による外出中に負傷したが、負傷は業務に起因するものではなく、本人の不注意によるもので、足元がふらつき、階段を降りる際に転倒負傷している。よって、孫某の転倒負傷事故が業務によるものであることを示す証拠がないため、孫某の転倒負傷事故を労災事故と認定しないとの判断であった。

3. 孫某は労働局の労災認定を不服として、天津市第一中級人民法院(以下「天津一中院」という)に行政訴訟を提起した。天津一中院が下した行政判決は以下のとおりである。一、労働局が下した労災認定を撤回する。二、労働局は判決発効後60日以内に改めて具体的な行政行為を行う。

4. 労働局は上訴したが、天津市高級人民法院は上訴を棄却し、原審の行政判決を維持する判決を下した。

事件の焦点:

1. 孫某が転倒負傷した地点は本人の「勤務場所」に該当するかについて
「勤務場所」とは、従業員の業務職責と関連する場所を指し、勤務場所が複数存在する状況においては、従業員が複数の勤務場所を往来する間の合理的な区域も含まれなければならない。本件において、商業センター8階に位置する使用者事務所は孫某の勤務場所であり、空港へ人を迎えに行く任務を完了するために運転しなければならない自動車の駐車場所は孫某のもう一つの勤務場所である。自動車は商業センター1階の門外に停車しており、孫某が運転任務を完了するには、必ず商業センター8階から1階の門外駐車場所へ下りなければならないため、商業センター8階から駐車場所までは孫某が二つの勤務場所の間を往来する合理的な区域であり、やはり孫某の勤務場所と認定されなければならない。

2. 孫某の転倒負傷が「業務上の原因」によるものか
「業務上の原因」とは、従業員の負傷と当人の職務勤務との間に関連関係が存在し、即ち、従業員の負傷と当人の職務勤務との間に一定の関連があることを指す。孫某が自動車を運転して人を迎えに行く業務任務を完了するためには、必ず商業センター8階の使用者事務所から1階の門外駐車場所へ下りなければならないため、当該行為は当人の業務任務と密接な関係があり、孫某が業務任務を完了するための客観的に行わなければならない行為であって、当人の業務職責範囲を超えたその他の無関係な個人的行為には該当しない。

3. 孫某が勤務中に注意が不十分であった過失は労災認定に影響するか
労働局は孫某の転倒負傷に至った原因は孫某自身の不注意であることを理由に、孫某は「業務上の原因」による転倒負傷には該当せず、労災として認定しないと主張している。ただし、「労災保険条例」第十六条では労災認定を排除する三つの法定状況を定めており、即ち、故意に犯罪を犯し、酔酒または麻薬の利用、自傷または自殺した場合は、労災と認定しない、または労災と見なしてはならないと定めている。従業員の職務勤務中にたとえ過失があったとしても、上記の労災認定を排除する法定状況に該当しない場合、労災の認定には影響しない。

弁護士の意見:

1. 「労災保険条例」第十四条第一項によれば、従業員が勤務時間中および勤務場所において、業務上の事由により事故にあい負傷した場合は、労災と認定しなければならないと規定している。本規定における「勤務場所」の認定について、複数の勤務場所が存在する状況では、従業員が複数の勤務場所の間を往来する合理的な区域も含まれなければならない。よって、従業員が使用者の手配した業務任務を完了するために、当人の勤務時間中および業務任務完了の合理的なルート上で事故により負傷した場合、通常、それを労災範囲外へと排除することは困難である。

2. 「業務上の原因」の認定については、原則として、従業員の負傷と当人の職務勤務との間に一定の関連があれば認定される。実務においては、更に従業員が使用者の手配した公益活動、スポーツの試合などに外出参加する状況で負傷する場合もあり、現行の処理意見に基づき、実際の判例に照らせば、通常、労災と認定される。

3. 労災保険の「過失がなければ補償する」との原則によれば、たとえ負傷した従業員にときに不注意、注意力散漫などの過失行為があったとしても、労災認定を排除する法定状況には該当しない。

4. 使用者は、従業員のために労災認定を申請する過程において、上記原則と関連判例に照らして、従業員に協力し、労働部門との協議交渉を行うことが考えられる。

法令リンク:
労災保険条例」第十四条第一項、第十六条

(里兆法律事務所が2014年12月30日付で作成)

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