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外資三法が1つにまとめられる中国「外国投資法(草案意見募集案)」およびそれが外商投資企業に及ぼす影響を簡潔に分析する

中国ビジネスレポート 法務
郭 蔚

郭 蔚

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2015年6月8日

2015年1月19日、中国商務部は「中華人民共和国外国投資法(草案意見募集案)」(以下「外国投資法草案」という)を公布し、中国「外資企業法」、「中外合弁経営企業法」、「中外合作経営企業法」の三法が1つにまとめられた。当該「外国投資法草案」が最終的に発効し法律となった場合、現在の外商投資関連法律が分散した立法方式は終了し、外資管理体制全体に重要で深い影響を及ぼすことになる。本文では「外国投資法草案」について初期評価分析を行い、改正理由および重要内容、反映される中国政府の外国投資に対する管理姿勢、及び発効後の現有外商投資企業に及ぶと思われる影響などを簡潔に紹介する。

一、改正理由および重要内容

中国商務部が「外国投資法草案」について行った説明によれば、改正理由は以下の通りである。一つ目は、現行の外商投資関連法律で確立された案件毎の審査許可制管理方式が、既に開放型経済新体制構築の需要に適応できず、市場の活性化および政府職能の転換に不利であること。二つ目は、現行の外商投資関連法律における企業組織形態、経営活動などに関する規定が「会社法」などの関連法律と重複しており、更には不一致が存在すること。三つ目は、外資の買収、国家安全審査などの重要な制度を外国投資関連基本法に組み入れる必要があることである。

現在公布されている「外国投資法草案」は11章、計170条に分かれており、それぞれ外国投資者および外国投資の定義、参入管理制度、国家安全審査制度、情報報告制度、投資の促進、保護制度、法的責任などの多方面について規定を設けている。そのうち、現行の外商投資関連法律について行われた重大な変革内容は以下の通りである。
1.外商投資企業分類の統一:現行の外商投資関連法律と異なる点として、「外国投資法草案」では、以後、外商投資企業の組織形態に対する規範化を行わず、外商投資企業は中国国内企業と同じく会社設立、管理、清算およびその他の会社業務の面で統一的に「会社法」、「パートナーシップ企業法」および「個人独資企業法」などの法律が適用される。
2.ネガティブリスト制度の構築:外国投資者の中国国内における投資は内国民待遇を享受する。中国は統一的な外国投資参入許可制度を実施し、特別管理措置目録(ネガティブリスト)に従った管理が実施され外国投資を禁止または制限している分野もしくは投資金額を除き、外資の参入はいずれも中国商務部門の許可を必要としない。
3.国家安全審査の強化:現行の「外国投資者による国内企業買収の安全審査制度構築に関する国務院弁公庁の通知」(2011年)に基づき、国家安全審査制度の適用範囲を拡大し、整備された安全審査手順、安全審査主体および区分された安全審査意見を設置、規定した。
4.情報報告制度の構築:具体的な形式には、初期報告、変更報告、年度報告、四半期報告などが含まれる。外国投資者または外国投資企業は、投資実施前または投資実施後の一定期限内に外国投資情報報告システムを通じて自主的に報告しなければならない。

二、反映される中国政府の外国投資に対する管理姿勢

1.投資環境の更なる開放、透明化:2013年以降、上海自由貿易試験区では既に率先してネガティブリスト制度を採用し、ネガティブリスト以外の領域において、外商投資企業に関する商務審査許可の実施を停止して届出管理へと変更することを提起している。今回、「外国投資法草案」は更なる開放を進め、ネガティブリスト以外の領域への投資であれば、いかなる事前の届出または審査許可も必要とせず、後続の監督、管理の多くは情報報告制度を通じて実施される。これは、外国投資者が直面する投資環境が更に開放され、透明化することを意味する。
2.中国商務部門の更なる外国投資活動への介入:これまで、中国商務部門は外国投資参入前の審査許可のみに責任を負い、後続の監督、検査などのより多くの部分は工商部門が行っており、商務部門が外国投資活動において果たす役割は相対的に消極的であった。「外国投資法草案」は監督検査制度を個別に増設し、整備された検査、調査に関する制度と手順を規定しており、更には告発、実地調査および事後の処罰などの内容までも含まれている。これは、商務部門が事前の監督管理から事後の監督管理へと、外国投資活動により多く介入することを意味する。

三、発効後の現有外商投資企業に及ぶと思われる影響

1.企業組織形態、組織機構の変更:「外国投資法草案」が発効してから三年以内に、現有外商投資企業の組織形態、組織機構が「会社法」、「パートナーシップ企業法」などの法律規定と一致しない場合は、調整しなければならない。なお、既存の経営期限が当該法発効後三年以内に期間を満了し且つ経営期間を延長する予定である場合、企業の既存の経営期限内に変更を行わなければならない。即ち、中外合弁経営企業、中外合作経営企業、外資企業の分類は廃止され、同時に「会社法」の要求に従って、株主会/株主、董事会/執行董事、監査役会/監査役などの組織機構を設置することになる。

2.参入許可制度の適用:発効後、現有外商投資企業が「外国投資法草案」の定める参入許可の申請を必要とする業種または投資金額の範疇に該当する場合、既に許可されている経営範囲、期間およびその他の条件を変更しない前提であれば、改めて参入許可を申請する必要はないが、現有外商投資企業が経営範囲の変更、投資金額の追加を行った後、参入許可が適用される状況に該当し、または基準に達するのであれば、参入許可申請を行う必要がある。

3.情報報告義務の履行:「外国投資法草案」は明確な規定を設けていないが、情報報告制度が今後商務部門の行う外国投資活動の監督、検査の主要ルートと手段になることを考慮すれば、現有外商投資企業も同様に当該制度を適用しなければならないと思われる。ただし、当該報告制度は現行の工商部門の企業年度報告公示制度とも交錯すると思われるため、両者がどのように関連し共存するかは注目しなければならない。

四、発効までに履行しなければならない関連立法手順

中国法の立法手順によれば、中国商務部はパブリックコメントを求めた後、「外国投資法草案」に対し修正改善を行い、その後国務院へ提出して審議を行い、改めて国務院から全国人民代表大会常務委員会に報告され表決可決となる。外国投資にかかわる利益は複雑であり、関連する部門も多く、一部の重大問題においては未だ論争が存在するため、現在のところ、正式立法および公布施行までには時間がかかると思われる。外国投資者には中国が採用しようとしている新たな外資管理体制に対する理解、評価を行い、将来の中国における投資および運営について合理的な計画と手配を行うための十分な時間が残されている。

(里兆法律事務所が2015年3月27日付で作成)

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