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国内直接投資外貨管理方式改革の新たな進展

中国ビジネスレポート 法務
郭 蔚

郭 蔚

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2015年10月7日

ここ数年、国家外貨管理局(以下「SAFE」という)は行政の簡素化、下部への権限委譲、資本プロジェクトの自由化などの目的から新政策を頻繁に打ち出しており、中でも直接投資プロジェクト分野が特に顕著である。2012年以来、SAFEは多くの法令、多くの「業務処理ガイド」を次々に公布している。

本年2月28日と4月8日、SAFEは2ヶ月の間に前後して「直接投資外貨管理政策の更なる簡素化と整備に関する通知」(匯発[2015]13号、以下「第13号文」という)、「外商投資企業外貨資本金人民元転管理方式の改革に関する通知」(匯発[2015]19号、以下「第19号文」という)を公布し、二つの新規定はこれまでの直接投資プロジェクト外貨管理方式に対し顕著な改革を再度行い、本年6月1日から同時に実施された。

二つの新規定の実施後、外商投資企業(以下「FIE」という)が注目する外商直接投資(以下「FDI」という)業務における外貨管理方式の更なる改革をいかにして行うかの問題について、本文で簡潔に整理し、意見を述べる。

新たな変化

第13号文と第19号文は短期間に前後して公布され、且つ同時に本年6月1日から発効した。それらのFDI業務における外貨管理方式に対する改革状況について、以下に簡潔に整理する。

1.   監督管理分業
第13号文の最も重要な改革は、これまで地方外貨管理局(以下「地方外貨局」という)のFDI項目に属していた登記権限(前期費用登記、基本情報登記などを含む)のほぼ全てを、外貨指定銀行(以下「銀行」という)に委譲し、銀行が情報管理システムを通じて地方外貨局への報告を行うものとし、FIEの各種登記手続きを簡素化した。

上記のとおり登記権限を委譲しただけでなく、ある程度において外貨管理分業の発展傾向をも体現しており、「外貨管理部門による全体の掌握、銀行による日常の監督および指導、FIEによる自らの外貨コンプライアンス意識の向上」を相互に組み合わせる形式で進められる。中国は外貨管制国として、直接投資外貨管理を段階的に緩和し、企業により多くの自主権を与えている。

2.   業務手続き
国内直接投資外貨管理において、第13号文は以下の手続きを廃止しまたは簡素化した。

1)    地方外貨局の外貨登記認可手続きを廃止した(上述の「監督管理分業」のとおり)。
2)    外国投資者出資確認登記管理において、非通貨出資確認登記および外国投資者の中国側持分買収に関する出資確認登記を廃止し、通貨出資確認登記を「国内直接投資通貨出資入金登記」(銀行が処理する)へと調整した。
3)   外貨年度検査において、直接投資外貨年度検査を廃止し、現有権益登記へ変更して実施する(銀行が処理する)。FIEは毎年の9月30日(当日を含む)までに、自らまたは会計士事務所、銀行に委託して、直接投資現有権益データを申告しなければならない。

3.   資金使用
第13号文による「審査許可の緩和」の実施に基づき、一ヶ月あまり後に公布された第19号文はFIEの資本金人民元転に対し、更に「業務の活性化」を講じ、FIEにより多くの自主権を与えた。

1)   人民元転の方式において、これまでの「支払元転制」(支払い時に人民元転を認める)以外にも、FIEは資本金口座の外貨資本金について実際の必要に応じて「自由意思元転制」(自由意思による事前の人民元転が可能)を選択し、人民元転後支払い待ち口座に預金することもできる。人民元転後支払い待ち口座は資本金口座と連動しており、FIE資本金の支出範囲を大幅に拡大することになる。例えば、利用済みの人民元借入金の弁済、外貨購入支払い、または外債の対外直接弁済、外国投資者の減資、引き揚げ資金の外貨購入支払い、または対外直接支払いなどである。
2)   人民元転の用途において、「ネガティブリスト管理」を実施し、上述した「自由意思元転制」に基づくが、証券投資、人民元による委託貸付、非自社用不動産の購入など固有の資金用途規制(法令に別途規定がある場合は除く)については、この度も依然として緩和されていない。
3)   人民元転投資において、外商投資性会社、外商投資創業投資企業および外商投資持分投資企業(以下「外資投資型企業」という)は、第13号文の規定に照らして「資本金の元の通貨の振替をもって国内持分投資を実施する」ことができるほか、第19号文の規定に照らして、プロジェクトが真実性、遵法性を具備する前提の下、外貨資本金を直接人民元転し、または人民元転後支払い待ち口座内の人民元資金を被投資企業の口座に振り替えることができる。

手続きの流れ
本年6月1日からFDI外貨管理手続きがどのように行われるかについて、以下に簡潔に整理した。

活動 事項 簡潔な分析
前期準備 登記機関 –   銀行が「前期費用基本情報登記」を行う。
–    登記金額が30万米ドル相当を超える場合、地方外貨局が個別案件集団審議を行う。
関連口座 前期費用口座 – 残高はその後FIE資本金口座へ振り替えることができる。
その他 –   以後、資源採掘プロジェクトに「特別ルート」を設けることはなく、一律に銀行および地方外貨局が登記/審議を行う。
FIEの新設 登記機関 –   銀行が「新設FIE基本情報登記」を行う。
–    銀行が「国内再投資受入基本情報登記」を行い、外資の国内再投資を受け入れる際に手続きが必要となる。
–   外国投資者および外商投資性会社が合弁で設立したFIEについては、同時に「新設FIE基本情報登記」および「国内再投資受入基本情報登記」を行う必要がある。
関連口座 –   資本金口座は、一つのFIEが同時に複数の同名口座を開設することができる。
–    国内再投資専用口座は、外資の国内再投資を受け入れる際に開設する。
その他 –   
外国投資者および外商投資性会社は、人民元利益を再投資に用いることができ、この場合、FIE登記は「人民元利益再投資」となる。また、持分譲渡所得、減資所得、先行回収所得、清算所得を再投資に用いることもでき、この場合、FIE登記は「非人民元利益再投資」となる。
合併買収でのFIE設立 登記機関  –   銀行が「外国投資者による国内企業合併買収基本情報登記」を行う。
–    持分譲渡側は上記登記証憑に基づいて国内資産現金化口座を開設する。
関連口座 –    国内資産現金化専用口座は、持分譲渡側が開設し、持分譲渡対価などの資金受け取りに用いる。
その他 –   
外国投資者が国外持分により国内会社を合併買収する場合、登記時に登記システム上で有効期間の備考が加えられ、当該企業がその後備考のない批准証書と営業許可証を取得した後に、銀行にて備考内容の削除手続きを行うことができる。
–   外国投資者がFIEを合併買収した結果、FIE基本情報に変更が生じた場合、FIE基本情報変更手続きを行わなければならない。
資金の使用 元の通貨での振替 –   資本金口座については、同名資本金口座、保証金専用口座(ある場合)、国内再投資専用口座(ある場合)などの口座へ振り替えることができる。
–   国内資産現金化口座、国内再投資専用口座については、保証金専用口座(ある場合)などの口座へ振り替えることができる。
人民元転での使用 –   資本金口座については、自由意思人民元転または支払い人民元転を実施することができる。
–   資本金口座およびその他の口座については、いずれも人民元転の際に法律規定、経営範囲に合致しなければならず、以下に用いてはならない。
1)    持分投資(外資投資型企業は除く)。
2)    証券投資(法令で別途規定がある場合は除く)。
3)    人民元による委託貸付(経営範囲を具備する場合は除く)。
4)    企業間貸付および第三者へ転貸済みの銀行人民元貸付の弁済。
5)    非自社用不動産の購入(不動産企業は除く)。
–   外資投資性会社は、外貨資本金を直接人民元転し、または人民元転後支払い待ち口座内の人民元資金を被投資企業の口座に振り替えることができる。
関連口座 –   人民元転後支払い待ち口座について、資本金口座、国内資産現金化口座および国内再投資口座の自由意思人民元転所得資金は当該口座に入金される。
出資の引き揚げ
登記抹消 –   銀行が「FIE基本情報登記抹消」を行い、税務抹消登記完了後に手続きが必要となる
資金送金

当然ながら、再度の簡素化を経たにもかかわらず、中国の外貨管理制度全体は依然として複雑、専門的である。二つの新規定は通常状況における関連手続きを簡素化、明確化したが、FDI業務の実施過程においては依然として多くの特別、具体的な状況が存在するため、その場合は更に法令の規定および外貨管理部門、銀行の実務観点に照らして個々の案件毎に判断する必要がある。

また、外貨改革措置「先行地」の特徴を具備する中国各「自由貿易区」(現在、既に上海、広東、天津、福建の四ヶ所で設立されている)は、将来的に長期にわたり外貨管理方式改革の風向計になると思われる。当所の見るところ、「投資の便利化」は長期的に中国外貨管理方式改革の主要方針になると思われる。

(里兆法律事務所が2015年6月23日付で作成)

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