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人的資源社会保障部による「労働契約法」の解説、「労働契約法」がより詳細化される

中国ビジネスレポート 法務
邱 奇峰

邱 奇峰

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2015年10月30日

―「『労働契約法』実施貫徹に関する若干規定(検討案)」の重要条項を解説する(連載の一/全二回)―

2015年6月、人的資源社会保障部は、労働契約の実施貫徹をテーマとするシンポジウムを開催し、「『労働契約法』実施貫徹の若干規定(検討案)」と呼ばれる文書について重点的に論議した。筆者はそのうちの重要と思われる条項を幾つかピックアップし、簡潔に考察する。なお、本検討案はあくまでも内部検討文書でしかなく、最終稿の公布スケジュールはまだ出ていない。従い、本文における検討案の考察目的は、あくまでも読者に立法の動きを紹介しながら分析することにあり、この点、予めご理解いただきたい。

第十条:
使用者が労働契約法第四条の規定に基づき、民主手続きを経て制定し又は修正した規則制度の内容が合法であり、且つ従業員に対して公示又は告知を行っている場合、雇用管理および労働紛争処理の根拠とすることができる。
使用者が労働者の密接な利益に直接関係する規則制度および重大事項決定の公示又は告知を行う場合、労働者によるサイン受取、研修実施など労働者への周知に便利な方法を取ることができる。

第十二条:
労働契約法実施前に使用者が法に依拠し制定した規則制度の内容が現行の法律、行政法規および政策規定に違反しておらず、且つ労働契約法第四条規定の手続きを履行した上で公示、告知をしている場合、雇用管理および労働紛争処理の根拠とすることができる。

【筆者の考察】
検討案の本条項は、「労働契約法」実施前および実施後に制定された規則制度のいずれに対しても民主手続きの実施を要求しており、本要求は多くの地区の現行政策と合致していない。

1. 江蘇[1]、広東[2]、北京[3]などの一部地区では、「労働契約法」実施後に制定された規則制度のみに民主手続きを要求しており、「労働契約法」実施前に制定された規則制度に対しては民主手続きの実施を要求していない。

2. 広東、浙江[4]などの一部地区では、「労働契約法」実施後に制定された規則制度について民主手続きの実施を要求しているものの、使用者による労働管理の実情を充分に考慮した上で、民主手続きを実施していない場合であっても、使用者が公示手続きを実施しており、且つ労働者も異議を唱えておらず(通常、労働者によるサイン受取を指す)、規則制度が法律規定に違反していなければ、適用可能である旨規定している。上海でも実務上、このような方法を実施する傾向にある。
 
北京、広東、江蘇、上海、浙江などの地区の現行政策と比較すると、検討案では民主手続きに対する要求が異様に厳しくなってはいるものの、多くの地区の現行政策と抵触するため、検討案が更に修正される可能性も否定できない。しかしながら、検討案において人的資源社会保障部が民主手続きを重視していることは紛れもない事実であり、従って、使用者が規則制度の制定、修正を行うにあたっては、民主手続きの実施を更に重要視する必要がある。

備考:[1]「労働紛争案件審理に関する指導意見」【蘇高法審委[2009]47号】

第十八条:
使用者が「労働契約法」実施前に制定した規則制度は、「労働契約法」第四条に規定する民主手続きを経ていないものの、その内容が法律、行政法規および政策規定に違反しておらず、且つ著しく不合理な状況が存在せず、労働者に公示または告知済みの場合、労働紛争処理の根拠とすることができる。使用者が「労働契約法」実施後に規則制度の制定、修正を行い、法定の民主手続きを経て、工会または従業員代表との協議を行っているものの、合意に至っていないが、同規則制度の内容が法律、行政法規の規定に違反しておらず、著しく不合理な状況が存在せず、且つ労働者に公示または告知済みの場合、労働紛争処理の根拠とすることができる。

独立法人資格を有する子会社が親会社の規則制度を実施する場合、子会社が「労働契約法」第四条に規定する民主手続きを履行している、または親会社が「労働契約法」第四条に規定する民主手続きを履行しており、且つ子会社内で労働者に公示または告知をしている場合、親会社の規則制度を子会社の労働紛争を処理する上での根拠とすることができる。

[2]「『労働紛争調停仲裁法』、『労働契約法』適用の若干事項に関する指導意見」【粤高法発[2008]13号】

第二十条:
使用者が「労働契約法」実施前に制定した規則制度は、「労働契約法」第四条第二項に規定する民主手続きを経ていないものの、内容が法律、行政法規および政策規定に違反しておらず、且つ労働者に公示または告知済みの場合、使用者による雇用管理の根拠とすることができる。

「労働契約法」実施後、使用者が労働者の密接な利益に直接関係する規則制度または重大事項を制定、修正する場合で、「労働契約法」第四条第二項に規定する民主手続きを経ていないとき、原則上、使用者による雇用管理の根拠とすることはできない。但し、規則制度または重大事項の内容が法律、行政法規および政策規定に違反しておらず、著しく不合理な状況が存在せず、且つ労働者に公示または告知済みであり、労働者が異議申立てをしていない場合、労働仲裁および人民法院による裁判における根拠とすることができる。
[3]「労働紛争案件の法律適用問題に関する北京市労働社会保障局、北京市高級人民法院による検討会議事録」

37、使用者が「労働契約法」実施前に制定した規則制度は、「労働契約法」第四条第二項に規定する民主手続きを経ていないものの、その内容が法律、行政法規および政策規定に違反しておらず、労働者に公示または告知済みの場合、使用者による雇用管理の根拠とすることができる。

[4]「労働紛争案件審理の若干事項に関する意見(試行)」【浙法民一(2009)3号】

第三十四条 :
使用者が「労働契約法」実施前に制定した規則制度は、同法第四条第二項に規定する民主手続きを経ていないものの、内容が法律、行政法規および政策、集団契約規定に違反しておらず、且つ著しく不合理な状況が存在せず、労働者に公示または告知済みの場合、人民法院による労働紛争案件審理の根拠とすることができる。

「労働契約法」実施後、使用者が労働者の密接な利益に直接関係する規則制度または重大事項を制定、修正する場合で、同法第四条第二項に規定する民主手続きを経ていないとき、一般的には、人民法院による労働紛争案件審理の根拠とすることはできない。但し、規則制度または重大事項決定の内容が法律、行政法規、政策および集団契約規定に違反しておらず、著しく不合理な状況が存在せず、且つ労働者に公示または告知済みであり、尚且つ労働者が異議申立てをしていない場合、人民法院による労働紛争案件審理の根拠とすることができる。

第二十七条:
労働契約期間が満了し、労働者が労働契約法第十四条第二項に規定する状況に適合する場合、労働者が期間の定めのある労働契約の締結を申入れた場合を除き、使用者は労働者と期間の定めのない労働契約を締結しなければならない。

労働契約法実施後、使用者が労働者と連続して2回、期間の定めのある労働契約を締結し、且つ労働者に労働契約法第三十九条および第四十条第一号、第二号に規定する状況がない場合、労働者が期間の定めのある労働契約の締結を申入れた場合を除き、使用者は2回目の労働契約期間の満了時に、労働者と期間の定めのない労働契約を締結しなければならない。

【筆者の考察】
連続して2回、期間の定めのある労働契約を締結した後、3回目の契約更新時に期間の定めのない労働契約を締結する際に、使用者に選択権があるかどうかについては、実務上、意見が完全に2つに分かれている。

1. 使用者に選択権を認める意見:「労働契約法」第14条規定の締結条件は、「連続して2回、期間の定めのある労働契約を締結し、且つ労働者に第三十九条および第四十条第一号、第二号に規定する状況がなく、労働契約を更新する場合
であり、ここで言う「労働契約を更新する」とは、「双方が契約更新に同意する」ことと理解すべきであり、いずれか一方が契約更新に同意しなかった場合には、期間の定めのない労働契約を締結しないことを選択する権利があるというもの。上海[5]では、この見方がなされている。

2. 使用者の選択権を認めない意見:上記の「労働契約を更新する場合」についての理解とは異なり、労働者が期間の定めのない労働契約の締結を申し入れてきた場合には、締結しなければならないと考えるもの。北京、江蘇など大部分の地区では、この見方がなされている。

検討案の本条項では後者側の見方をしており、将来、後者側の意見で実施された場合、すでに本意見どおりに実施されている他地域での影響は大きくないが、現在、前者側の意見を実施している上海では、やや大きな影響があると思われるが、そのタイミングで上海で再び新たな政策が出されるかどうかについては、現在定かではない。

しかしながら、検討案に本規定があることから、上海の使用者は2回目の期間の定めのある労働契約締結問題については慎重に対処する必要があると思われる。

備考:[5]「『労働契約法』適用の若干事項に関する意見」【滬高法[2009]73号】

四、期間の定めのない労働契約に関する事項

(四)使用者が労働者と連続して数回、期間の定めのある労働契約を締結後、契約更新を行う場合、期間の定めのない労働契約を締結しなければならない

「労働契約法」第十四条第二項第(三)号の規定は、労働者がすでに使用者と連続して2回、期間の定めのある労働契約を締結済みであり、労働者と3回目の契約更新を行う時、労働者が期間の定めのない労働契約の締結を申し入れた場合を指していると考えられる。

(里兆法律事務所が2015年8月28日付で作成)

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