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新法令「対外開放を拡大し外資を積極的に利用することに関する若干措置についての国務院による通知」の簡潔な分析

中国ビジネスレポート 法務
邱 奇峰

邱 奇峰

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2017年9月12日

1.「通知」の公布に至った背景

外資利用は中国開放型経済体制の重要な構成部分として、経済発展及び改革推進の過程において積極的な役割を果たしている。全体的には、中国の外資誘致に関する国際的な投資環境は、国際社会から肯定的な評価を得ている。例えば、国連貿易開発会議が発表した「2016世界投資報告書」によれば、中国は2015年度の外国直接投資流入の最も多い経済実体の中で、米国、中国香港地区に次いで第三位となった。また、中国米国商会の調査研究では、インタビューを受けた会員の60%以上が中国を世界3大投資目的地の一つとして考えていることがわかった。

但し、中国商務部門が公表した中国外資吸引の合計数値を見ると、ここ数年、中国の外国投資家の誘致は徐々に減速していく傾向にある。これは中国国内のコストなどの優位性が少しずつ失われていき、企業間競争も日増しに激しくなることで、中国の継続的な外資吸引の難度が高まっていることを表明している。

2.「通知」の主な内容

「通知」は、「対外開放を一層拡大する」、「公平な競争環境を更に創出する」、「外資吸引作業を一層強化する」という3つの方面から、計20項目の具体的な措置を提起している。その概要について、以下、簡潔に紹介する。

(1)対外開放を一層拡大する

「通知」の規定によると、開放・発展理念を指針とし、「外資投資産業指導目録」(以下「『目録』」という)及び関係政策法規を改正し、サービス業、製造業などの業種に対する制限を緩和することを提起している。2016年12月7日に、国家発展改革委員会、商務部が関係部門と共同で「目録」の改正作業に着手し、「目録」改正案についてパブリックコメントを募集している。本稿作成時点で、「目録」改正後の正式版はまだ公布されていない。

係る統計データによると、サービス業が外資の合計数値に占める比率は70%を超え、また外資増加に占める大きな部分でもある。サービス業の特徴のひとつに、業種の分類が細かく、広範囲にわたることが挙げられるが、中国では、センシティブで、国の経済と人々の暮らしに係る業種に対し、かなり厳しい参入制限が設定されることが往々にある。今回の「通知」によると、サービス業への外資参入を緩和すること、そして金融業界においては、銀行類金融機構、証券会社、証券投資ファンド管理会社、先物取引会社、保険機構、保険ブローカー機構への外資参入の制限を緩和することが、最優先して行うべき改革目標であるとしている。また、電信、インターネット、文化、教育、交通輸送などの中国政府部門による制限が厳しいな業種についても、秩序立てて自由化していくことが「通知」で言及されている。

また、「通知」では、製造業の参入制限について多くの規定が設けられている。中国商務部門の関係データによれば、中国製造業における外資吸引は全体的に下降傾向を示しており、そのうち、労働集約型製造業の下降傾向がやや顕著である。例えば、紡織業の場合、およそ32%減少している。一方、ハイテク製造業の場合、幾分増えている。製造業企業の発展を奨励するために、「通知」では、伝統的製造業(例えば、オートバイ製造など)への参入制限を緩和すると規定している。同時に、ハイテク技術産業の発展に対して、「通知」では内資・外資企業に対し「中国製造2025」戦略政策措置が同時に適用されると規定しており、これは将来的に、ハイエンド製造、インテリジェント製造、エコ製造などの業種に投資する外商投資企業にとっては、伝統的製造業より多くの政策上の優遇が得られることを意味するものである。

(2)公平な競争環境を更に創出する

実践において、外商投資企業と内資企業に対し、審査許可におけるダブルスタンダードを実施している地方政府は少なくない。例えば、同一の審査許可事項について、外商投資企業の場合、審査許可期間が内資企業よりも長かったり、同じ入応札プロジェクトであるのに、外商投資企業に課される審査条件の方が相対的に多いなど、である。これに対し、外商投資企業と内資企業が公平に競争できるよう、「通知」では、「市場体系の構築において公正競争審査制度を築くことに関する国務院の意見」(国発[2016]34号)の規定に従い、公正な競争審査を行い、各地区、各部門は国の政策・法規を厳格に貫徹し、実施しなければならず、外商投資企業に対する制限をみだりに増やしてはならないとしている。

また、外商投資企業の経営活動範囲が拡大し、中国政府部門が知的財産権の保護を日増しに重要視していることを受け、外商投資企業の中国における知的財産権が適法且つ合理的に保護されるよう、「通知」では、将来的に、知的財産権の対外提携メカニズムの構築を強化し、係る国際組織による中国での知的財産権仲裁・調停の支部センターの設立を推進していかなければならないと規定している。ただし、知的財産権保護制度を構築するには、国内、海外における複数の組織・機構の協力を得なければならないため、知的財産権保護制度を整備するには、更に長く困難な道を経なければならないと思われる。

(3)外資吸引作業を一層強化する

「通知」によれば、地方政府が法定の権限範囲内で企業誘致のための優遇措置を制定・公表することを認め、就業、経済発展、技術革新への貢献の大きなプロジェクトを支持し、企業の投資・運営コストを削減し、法に依拠して外商投資企業及びその投資家権益を保護し、良好な投資環境を創出するとしているが、これは今回の「通知」について広く注目されている政策である。2014年までは、地方政府のによる外資誘致を奨励するため、地方政府は、国が認める範囲以内で、税収、非税収及び財政支出の方面において外商投資企業に優遇措置を与える権限をもっていた。当該政策は、多かれ少なかれ市場の秩序を乱すものであったため、国務院は幾つもの文書を公表し、これを調整し改めた。一方、今回の「通知」では、地方政府が法定の権限内で企業誘致のための優遇措置を制定・公表することを認めることについて再び言及されており、全体的に見て、外商投資企業にとっては利のある措置であるものの、「法定の権限」という範囲がやや不明瞭であるため、実践において、優遇措置がどのような分野に及ぶのか、優遇措置の度合いはどうであるのか、外商投資企業に実質的な利益をもたらし得るのかは、現時点でまだ判断できず、今後、各地方政府での試行状況を踏まえながら、徐々に鮮明かつ明確になってくるものであろうと思われる。

また、このほかに注意に値することとして、「通知」では、外商投資企業に適用される西部での税収優遇措置について、「中西部地区外商投資優勢産業目録」の改正を提起している。当該目録の改正は、中国西部地区での外国投資にとって優位性のある産業範囲の拡大につながると思われ、これは外商投資企業にとって、より多くの産業が所得税優遇措置を享受できることを意味するものでもある。情報筋によると、改正後の「中西部地区外商投資優勢産業目録」正式版は本年度中に公表される見込みである。

3.「通知」が企業に与える影響

筆者が把握するところでは、中国の最高国家行政機関である国務院が、「対外開放」及び「外資利用」を見出しとして公表した、外国投資に関する全体政策(特定地域、特定業種を対象とする個別政策は含まない)に適用される法令は、1993年に公布された「外資利用作業の強化に関する国務院による指示」、1998年に公布された「対外開放を拡大し外資を積極的に利用することに関する若干措置についての国務院による通知(中発[1998]6号)」、2010年に公布された「外資利用作業を一層貫徹することに関する国務院による若干意見(国発〔2010〕9号)」及び今回の「通知」である。従って、「通知」の重要性は言うまでもない。

勿論、企業にとって注意すべき点としては、「通知」の多くの内容は原則的、指導的なものであり、具体的な措置は、今後、関係政府主管部門が関連政策・文書などを公表することによって徐々に実施されることになる(現時点で、一部措置の試行などがすでに行われている)。よって、その後の関連政策(今相次いで公表している中国各業種、各分野を細分化する「第13次五ヵ年」計画、及び2015年にパブリックコメントを募集したままとなっている「外国投資法」などを含む)の公表及び実施について引き続き注目していく必要がある。

(里兆法律事務所が2017年3月24日付で作成)

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