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外商投資企業外債管理制度の改革について簡潔に紹介する

中国ビジネスレポート 法務
邱 奇峰

邱 奇峰

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2018年7月19日

2016年上半期から2017年の年明けにかけて、中国人民銀行(以下、「中央銀行」という)及び国家外貨管理局(以下「外貨管理局」という)が一連の「外債(中国本土外からの借入金、以下同じ)」管理政策を相前後して公布したことにより、外商投資企業(以下「外資企業」という)の外債管理スキームに重大な変化が生じている。中央銀行公布の「全範囲におけるクロスボーダー融資マクロプルーデンス管理の関連事項に関する通知」(銀発[2017]9号、以下「9号文」という)によると、2017年1月12日からの1年間は外資企業にとっての移行期間であり、この間、外資企業は既存のスキームと9号文のスキームのうち、いずれか1つを選択して適用することができ、移行期間満了後は、外資企業に対する外債管理スキームについては、中央銀行、外貨管理局が9号文の全体的な実施状況に基づき評価したうえで確定するとされている(※1)。

「全範囲におけるクロスボーダー融資マクロプルーデンス管理」というスキームが中国外債改革における必然的な趨勢であることを踏まえ、改革が進みつつある外債業務の実践に外資企業がよりゆとりをもって対処できるよう、本稿では、近年における外資企業の外債管理制度の改革について簡潔に紹介する。

一.法令の沿革

●2003年3月1日、「外債管理暫定弁法」が正式に発効し、様々な外債管理を全範囲で規範化する初めての規則となった。同弁法により、外資企業の外債については、「投注差(投資総額と登録資本金の差額)」による管理が実施されることになった。

●2011年10月13日には「外商直接投資人民元決済業務管理弁法」(中国人民銀行公告[2011]第23号)が、そして2012年6月14日には「外商直接投資人民元決済業務取扱細則を明確にすることについての通知」(銀発[2012]165号。以下「165号文」という)が発効した。この2つの規定によると、外資企業がその国外の株主、グループ内関連企業及び国外金融機関から借り入れた人民元建て借入金及び外貨建て借入金については合計金額を合算して求め、また、外資企業の国外での人民元建て借入金については発生額に基づき合計金額を求めるとされた。

●2013年5月13日、「外債登記管理弁法」及び「外債登記管理取扱ガイドライン」(匯発[2013]19号。以下併せて「19号文」という)が正式に発効したことで、外債管理の行政審査許可手順が簡素化され、外債契約の調印及び登記の変更・抹消手続きを除き、外債口座の開設、資金の元転及び元金返済利息支払などはいずれも外貨指定銀行が直接に審査し処理することになり、また外資企業の外債借入条件、外債枠の計算といった方面での特別な規定がさらに明確になった。

●2014年6月1日、外貨管理局が公布した「クロスボーダー担保外貨管理規定」(匯発[2014]29号)が発効し、国外の担保差入による国内貸付スキームにおいて、国内債務者が担保を履行したことにより形成された対外負債について、未償還元金残高は上年度末時点での会計監査済み純資産額を超えてはならず、もしも上述の限度枠を超えた場合、自身の外債枠を占用しなければならないとした。

●2015年8月5日、外貨管理局が公布し実施した「多国籍会社外貨資金集中運営管理規定」(匯発[2015]36号)では、多国籍会社のメンバー企業が借り入れた外債について、比率の自主規制を実施することが定められた。多国籍会社の外債枠、元転資金の使途、償還通貨の種類などについて例外規定が設けられた。

●2016年5月3日、中央銀行が公布した「全国範囲における全範囲クロスボーダー融資マクロプルーデンス管理の実施に関する通知」(銀発[2016]132号。以下「132号文」という)が正式に発効し、各外債ごとの審査許可又は限度枠認可という前置管理方式を廃止し、国内企業(中国資本及び外資企業を含むが、非金融企業だけに限定され、さらに政府融資プラットフォームと不動産企業は含まれない)及び金融機関のクロスボーダー融資を届出管理へと改め、クロスボーダー融資上限枠内で人民元対外貨のクロスボーダー融資を独自に実施することができ、また、人民元対外貨の全範囲管理を実施するとした。

●2016年6月9日、外貨管理局公布の「資本項目の元転管理政策の改革・規範化に関する通知」(匯発[2016]16号。以下「16号文」という)が正式に発効し、そこでは、国内企業(中国資本企業と外資企業を含むが金融機関は除く)の外債資金は、予めまとめて元転しておき払出時期を自由に決められる元転方式(以下、「自由元転」という)により元転手続きを行うことができ、また、国内機構の資本項目における外貨収入について自由元転手続きを経て得られた人民元資金を「元転後支払待ち専用口座」に預け入れ管理することができるとされている。

●2017年1月12日、9号文が正式に発効し、外資企業の外債枠、限度枠の免除範囲などについて調整が行われ、移行期間に係る政策がさらに明確にされた。同時に、132号文は同日をもって廃止された。

二.外債管理スキームの比較

9号文の規定によると、移行期間中、外資企業は19号文に規定されるクロスボーダー融資管理スキーム(つまり、「投注差」スキーム)及び9号文規定のスキーム(つまり、「全範囲」スキーム)のうち、いずれか1つのスキームの適用を選択することができる。下表では、外債枠、外債の使途、登記・届出の要求及び資金口座管理などの方面から、この2つのスキームを比較する。

19号文 旧スキーム 9号文 新スキーム
外債枠 ■一般外資企業(※2):
外債枠=(投資総額-登録資本金)*外国側株主の資本金払込比率-短期外債残高-中長期外債発生額

注:国外担保による国内貸付に基づく担保の履行により形成された対外負債につき、未償還元金残高が上年度末時点の会計監査済みの純資産額を超えた場合、短期外債として取り扱い管理する。

■特種形態外資企業
・外商投資リース会社
当年度外債枠の計算式:上年度末の純資産*10-上年度末のリスク資産総額

・外商投資性会社
登録資本金が3,000万米ドル以上の場合、外債枠計算式:払込済みの登録資本金*4-短期外債残高-中長期外債発生額-国外担保による国内貸付に基づく担保者の契約履行により形成された国内機構の対外債務。
登録資本金が1億米ドル以上の場合、外債枠の計算式:払込済みの登録資本金*6-短期外債残高-中長期外債発生額-国外担保による国内貸付に基づく担保者の契約履行により形成された国内機構の対外債務

・外商投資不動産企業
2007年6月1日以降(6月1日を含む)、商務主管部門から許可を得た、又は届出済みの外商投資不動産企業については、外債契約登記を受理しない。つまり、原則的には外債を借り入れることができない。
2007年6月1日より前(6月1日は含まない)に商務主管部門から批准証書を取得し、且つ商務部にて届出済みの場合、旧「投注差」の範囲内で関連規定に従い、外債を借り入れることができる。増資後の「投注差」が増資前の「投注差」より小さい場合、増資後の「投注差」に準じ、且つ「国有土地使用証」未取得の場合、又は開発プロジェクトの資本金がプロジェクト投資総額の35%未満の場合、外債を借り入れてはならない。

■一般外資企業(※3):
リスクの度合いで加重しクロスボーダー融資残高(既に利用済みの未償還残高)を算出し、リスク加重後のクロスボーダー融資残高(以下「クロスボーダー融資リスク加重残高」という)は、クロスボーダー融資リスク加重残高上限を超えてはならない。そのうち、

・クロスボーダー融資リスク加重残高上限の計算式:資本又は純資産*クロスボーダー融資レバレッジ率*マクロプルーデンス政策因数(※4)(つまり、現行の規定によれば、企業はその純資産の2倍を超えない枠内で外債を借り入れることができる。)

・クロスボーダー融資リスク加重残高計算式:∑人民元/外貨クロスボーダー融資残高*期限リスク転換因数*類別リスク転換因数+∑外貨クロスボーダー融資残高*為替相場リスク換算因数(※5)

・クロスボーダー融資リスク加重残高及び上限の計算は全て人民元を単位とし、外貨クロスボーダー融資は払出日の為替相場基準を以下の方式に基づいて換算し計上する。

・また、以下の業務形態は、現時点でクロスボーダー融資リスク加重残高計算の対象に組み入れない。
A.企業が国外機構による国内債権市場への投資により発生した人民元外貨受動負債。
B.企業が真実のクロスボーダー貿易により発生した貿易貸付及び国外金融機関から得た貿易融資。
C.企業が取り扱った届出済みのグループ内クロースボーダー資金集中管理業務により発生した対外負債。
D.自社使用のパンダ債。
E.既に債務減免が許可された場合又は資本転換のクロスボーダー融資。

■特種形態の外資企業
・外商投資不動産企業
「全範囲」スキームを適用せず、従来の規定に従い実施する。
・外商投資リース会社、外商投資性会社などの特種形態の外資企業は、マクロプルーデンス管理スキームを選択していなければ、引き続き19号文で明確にした外債量コントロール方法を適用し外債を借り入れることができる。

外債の使途(※6) ・債務者が借入契約で約定する外債資金の使途は、外貨管理規定に適合しなければならない。つまり、関連主管部門及び外貨管理局が許可した使途で使用しなければならない。短期外債は原則上、運転資金にしか用いることができず、固定資産投資などの中長期的な使途に用いてはならない。

・16号文の発効日から、同文に記載される外債の使途に関する規定は同様に19号文スキーム(詳細は右欄)に適用される。

■9号文では、外債(人民元建て/外貨建てを区分しない)の使途のみについては、「企業が借り入れた資金の使用は国の関連規定に適合し、自身の生産経営活動に用いらなければならず、また、国及び自由貿易区の産業マクロ調整政策に適合し、借り入れた外貨資金は自由元転することができる」という総則的な規定しか定めていない。

■外貨管理局がその後に公布された「全範囲クロスボーダー融資マクロプルーデンス管理政策質疑応答(第一期)」(以下「『政策質疑応答』」という)第13条の規定によると、外債の使途について、16号文の関連規定も同時に適用される。即ち、通知で禁止される使途を除き、また法律法規に適合するという前提のもと、企業は自身の経営範囲内又は外債資金に係る契約で定めた範囲内で資金を使用することができる。

そのうち、禁止事項は以下の通りである。
・企業の経営範囲以外の目的又は国の法律法規で禁止される支出に直接に又は間接的に用いてはならない。
・別段の明白な規定がない限り、証券投資又は銀行の元金保証型商品以外のその他の投資・資金運用に直接に又は間接的に用いてはならない。
・経営範囲で明確に許可されている場合を除き、非関連企業への貸付に用いてはならない。
・非自社用不動産の建設、購入に用いてはならない(不動産企業は除く)。

登記届出の要求 企業は外債契約締結後15業務日以内に、所在地の外貨管理局にて外債契約登記手続きを行わなければならない。その後、外債登記証明などの文書をもって、外債に関連する口座開設、払出、元転及び元金返済利息支払手続きを直接銀行にて行う。 ■企業はクロスボーダー融資契約締結後、遅くとも払出の3業務日前までに、資本項目情報システムにクロスボーダー融資状況の契約届出手続きを行わなければならない。

■届出後、企業のためにクロスボーダー融資業務を取り扱った決済銀行は、払出、返済手配に基づいて、借入主体のために、係る資金決済を取り扱うことができる。また、係る決済情報を規定に従い中央銀行、外貨管理局の関連するシステムへ伝送し、クロスボーダー融資情報のアップデートを完了させる。

■企業は毎年、クロスボーダー融資及び権益に関連する情報(国外債権者、借入期限、金額、利率及び自身の純資産などを含む)を遅滞なくアップデートしなければならない。会計監査済みの純資産、融資契約における国外債権者、借入期限、金額、利率などに変化が生じた場合、遅滞なく変更届出手続きを行わなければならない。

資金口座管理 企業は払出及び返済のための外債専用口座を開設する必要があるが、実際の必要に応じて、外債返済のための元金返済利息支払専用口座を開設することもできる。 クロスボーダー融資に係る資金のやり取りを、企業は通常人民元外貨建て口座で行うことも、自由貿易口座で行うこともできる。

三.その他の要注意ポイント

(一)人民元建て外債に関する特別規定

1.19号文スキームに基づく外債枠管理及び登記・届出の要求

外資企業から国外の株主、グループ内の関連企業及び国外金融機関への人民元建て借入金及び外貨建て借入金は合計額を合算して求め、また、外資企業の国外人民元建て借入金は発生額に基づき合計額を計算する。

企業が人民元建て外債を借り入れる場合、所在地の外貨管理局で外債契約登記手続きを行うほかに、企業の登録地に所在する銀行で人民元建て外債専用預金口座を開設する必要がある。国内決済銀行は、外資企業のために国外人民元建て借入金決済手続きを行ってから5業務日以内に、人民元クロスボーダー決済情報管理システムに当該外資企業の基本情報及び人民元建て借入金の情況を伝送し、また外資企業から提出された関係書類の写しを検査に備えて保管することになっている。

2.人民元建て外債の使途についての特別な制限

上記のいずれのスキームを適用する場合であっても、企業が人民元建て外債を借り入れるには、165号文の関連規定を同時に満たさなければならない。その規定は主に以下の通りである。
1)国の関係部門が許可した経営範囲内で使用しなければならず、有価証券及び金融派生商品の投資に用いてはならず、委託貸付に用いてはならない。財テク商品、非自社用不動産を購入してはならず、また、投資性外資企業でない場合には、国内再投資に用いてはならない。
2)国内外貸付金の返済には用いることができる。

(二)9号文におけるその他の規定

1.企業のクロスボーダー融資の契約上の通貨種類、払出通貨種類、償還通貨種類は一致していなければならない。
2.企業はリスク転換因数、クロスボーダー融資レバレッジ率及びマクロプルーデンス政策因数の調整により、クロスボーダー融資リスク加重残高が上限超過となる場合、もとのクロスボーダー融資契約を期間満了まで保有しておくことができる。但し、クロスボーダー融資リスク加重残高が上限枠内に調整されるまでは、クロスボーダー融資期日延長を含む新たなクロスボーダー融資業務を取り扱ってはならない。

9号文の規定によると、1年の移行期間は2018年1月11日に満了しており、移行期間後、外資企業の外債管理スキームは中央銀行、外貨管理局が9号文の全体的な実施状況に基づき、評価したうえで確定することになる。しかしながら、本稿を執筆した時点では、新たな規定はまだ公布されていないようである。だが、これまでの実務経験及び関連主管部門に確認した結果を踏まえると、新規定が公布されるまでの間、主管部門は移行期間における規定をそのまま継続使用する傾向がある。今後の立法の動きや監督管理政策の動向について、引き続き注意を払いたい。

(里兆法律事務所が2018年4月6日付で作成)

(※1)移行期間はすでに過ぎているが、筆者が把握する限りでは、関係する新たな規定は2018年2月末現在まだ出ていない。
(※2)本文にいう一般外資企業とは、当該外資企業が次の何れの状況にも該当せず、後続の文中にいう特種形態の外資企業にも該当しないものをいう。(1)外国投資者の出資比率が25%未満である、(2)投資総額と登録資本金が等しい、(3)投資総額が明確にされていない(この3つのケースのいずれかに該当する場合、同企業による外債の借り入れについては、国内の中国資本企業の関連規定にならう)。
(※3)なお、外貨管理局の要求によると、企業は毎年、第一回目の外債契約届出(登記)手続きを行う際に、上年度末又は直近の会計監査済みの純資産の額を書面で届け出るために、所在地の外貨管理局へ上年度末又は直近の会計監査済みの財務報告書を提出しなければならない。設立後1年未満の企業で、会計監査済みの財務報告書を提出できない場合、マクロプルーデンススキームに基づき外債を借り入れることは現時点で認められない。
(※4)現時点で、企業のクロスボーダー融資レバレッジ率は2、マクロプルーデンス政策因数は1とされている。
(※5)期限リスク転換因数:返済期限が1年を超える(1年は含まない)中長期クロスボーダー融資は期限リスク転換因数を1とし、返済期限が1年(1年を含む)以下の短期クロスボーダー融資は期限リスク転換因数を1.5とする。類別リスク転換因数:オンバランス融資の類別リスク転換因数を1とし、オフバランス融資(偶発負債)の類別リスク転換因数を1とする。為替相場リスク換算因数:0.5。
(※6)外貨管理局傘下の中国外貨管理雑誌が主に運営している中国外貨ウェブサイトで公布された「全国版外債資金自由元転政策の質疑応答」によると、16号文の外債使途に関する規定を適用する際、左記の2点に注意しなければならない。(1) 外債資金を関連企業への貸付に用いた場合、関連企業が当該資金の使用についても、16号文の資金使途に係る規定を遵守しなければならない。(2) 16号文では企業が外貨建て外債を国内でのエクイティへ再投資することを明確に禁止していないが、16号文において「資本項目外貨及びその元転で得た人民元資金収入を企業の経営範囲以外の目的に直接又は間接に用いてはならない」とされているため、経営範囲に投資業務が含まれる企業は、その外貨建て外債を国内でのエクイティ再投資に用いることができると考えられる傾向にある。(注:ここでは参考まで記載するだけであり、監督管理機構の立場や観点を代表するものではなく、法律効力を有するものでもない)。

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