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ログイン2020年2月18日
2020年の年初に、新型コロナウィルス肺炎(以下「感染症発生状況」)が全国で流行し、今回の感染症発生状況に対応すべく、各地方政府が重大突発公共衛生事件1級対応をそれぞれ発動し、事業再開延期等措置に関する通知を発したことで、様々な形式の契約の履行に影響が及んだ。2020年2月10日、全国人民代表大会常務委員会法制作業委員会は感染症の感染拡大防止に関連する法的問題についての記者からの質問に対して、「感染症拡大防止措置のために契約を履行できないことは、不可抗力に該当する」と言及した。このため、不可抗力は目下及び今後の契約履行においてキーワードとなり得ることから、後文ではQ&Aの形で今回の感染症発生状況下における不可抗力の適用について考察する。
Q1:感染症発生状況の影響を受けた契約の全てに不可抗力が適用されるのか?
A:「民法総則」第180条及び「契約法」第117条の規定により、不可抗力とは予見できず、回避できず且つ克服できない客観的状況を指すとしており、尚且つ不可抗力を適用するには、「不可抗力により契約を履行できない」という条件を満たす必要もあり(即ち、不可抗力と契約を履行できないこととの間に因果関係がなければならない)、このため、今回の感染症発生状況に不可抗力が適用されるか否かといった問題を「一様に処理する」ことはできず、個々の状況ごとに判定していく必要がある。例えば、感染症発生状況の発生後に当事者が締結した契約の場合、感染症発生状況を予見することができなかったことにはならないため、不可抗力を適用することはできない。契約不履行が感染症発生状況の影響によるものではない場合(例えば、感染症発生状況の程度が他地域よりも軽かった地域にあり、事業・生産の停止を要求されていない企業であり、契約履行不能の状況には至っていない場合)、感染症発生状況と契約を履行できないこととの間に因果関係はないため、この場合も不可抗力を適用することはできない。
Q2:不可抗力が適用されることによって、全責任の免除又は契約解除が可能となるのか?
A:先ず、「契約法」第117条の規定によると、不可抗力により契約を履行できない場合、不可抗力の影響に基づき、一部又は全ての責任が免除されることになっている。ここで免除される責任は当事者が契約を履行しないことにより発生する違約責任であり、当事者は以後において契約を履行しなくてもよいことを意味しているのではなく、また全ての責任が免除されるわけでもない。免除される責任の範囲は不可抗力によって契約を履行することができなくなった範囲に基づき決まってくるものであり、一概に論じることはできない。例えば、不可抗力によって契約の履行に影響が生じているのが契約の一部分だけである場合、免責範囲は契約における当該部分の未履行部分のみに限定され、契約における他の部分に対しては、当事者は依然として履行する必要がある。
次に、「契約法」第94条の規定によると、不可抗力に起因して契約の目的を実現することができなくなった場合、当事者は契約を解除することができることになっている。このため、契約が不可抗力の影響により履行できなくなれば、当然に解除することになるわけではなく、不可抗力によって契約の目的を実現することができなくなったときにはじめて、契約を解除できるのである。契約の目的をすでに実現することができない状態にあるか否かについては、契約の種類、履行する具体的内容、不可抗力によって契約の履行がどの程度妨げられたかを踏まえて、総合的に判断する必要がある。
Q3:不可抗力の適用に際して、どのような注意事項があるか?
A:まず、契約における準拠法を的確に選定しなければならない。法域が異なっても不可抗力に対する見方、法的原則等多くの点で共通点はあるが、同様にそれぞれの制度、文化や司法実践によって違いがあるため、準拠法を正しく選定することは不可抗力を的確に適用するうえでの重要な要素となる。
次に契約における不可抗力に関する約定に注目すること。契約法においては、無効、取消し可能等状況がある場合を除き、契約における条項約定が当事者間において「最高位の法律」となる。このため、契約において不可抗力について特約を設けている場合、契約に従い履行する必要があり、例えば契約によっては不可抗力について詳細に定めた条項を設けている場合もあり(例えば、不可抗力発生後何日以内に通知を発し、証明を提供しなければならない、不可抗力が発生してから何日後に当事者は契約を解除する権利があるのか等について定めている場合)、この場合、契約に約定した内容通りに履行しなければならない。
最後に、不可抗力を適用するに際しては、「契約法」第118条によると、当事者は遅滞なく契約の相手方当事者に通知し、証明材料(例えば、交通封鎖、物品取引の制限、営業停止、事業再開延期、事業再開してはならないこと等に関する政府の通知文書、中国における各貿易促進会の発行した不可抗力と関係のある事実状況に関する証明等)を提出し、然るべき措置を講じ、契約の相手方当事者の損失が拡大しないようにしなければならないとされている。
また、当事者は契約の相手方当事者に通知した後、契約の相手方当事者と積極的に協議を行い、解決策を見出さなければならない。例えば、契約を引き続き履行するのであれば、履行期間を適度に延長し、もし契約の目的を実現することができない状態にあるならば、協議の上契約を解除するか又は契約を締結し直すようにし、契約の相手方当事者にもたらした合理的な損失を公平の原則に従い分担する等について、双方にて合意に至った場合には、書面にて合意した内容を明確にしておくのがよい。また契約の相手方当事者と協議する過程においては、後に発生する可能性のある紛争、訴訟に備えて、当事者において証拠(例えば、契約の相手方当事者宛の通知、不可抗力に関する証拠等)をしっかりと残しておく必要がある。
(里兆法律事務所が2020年2月14日付で作成)
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