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ログイン2022年12月22日
先頃、最高人民法院は労働紛争における指導的意味合いを有する7件の判例を公表し、なかでも、解雇通知が解雇の適法性に対し影響をもたらした判例(指導的意味合いを有する判例180号)は、広く世間の注目を集めている。本稿では、実務でよくみられるやり方を切り口に、解雇通知の各類型ごとに法的な結果を説明する。
一、解雇通知に明記されている事由を事後的に変更した場合
雇用主が解雇事由を事後的に変更した場合、人民法院はこれを支持しない。最高人民法院が今般、公表した指導的意味合いを有する判例180号において、法院が雇用主による一方的な解雇行為の適法性を判断するにあたっては、雇用主から労働者に発した解除通知の内容を認定の根拠としなければならず、雇用主が後になって主張した解雇通知の内容と異なる他の事由は、解雇の適法性を判断する上での根拠としてはならないことを明確にしている。したがって、通知に記載された事由が一方的な解雇の要件を満たしていないということになれば、雇用主は、違法解雇を行ったと判断されるおそれがある。
二、解雇通知において解雇事由を記載していない、または漠然とした記載内容になっている場合
雇用主が解雇通知に単に労働契約を解除すると記載しただけで、解雇事由を記載していない場合、法院に違法解雇として認定されるリスクがある。広東省深セン市中級人民法院が下した「(2016)粤03民終字第19016号」判決(これは一般的な判例であり、最高人民法院指導判例のような、「指導的」意味合いを有するほどのものではないものの、法院による判決の傾向を知ることができる)では、雇用主が解除の理由を説明せずに一方的に解除を決定した場合、理由のない一方的な解除(即ち、違法解雇)であり、後から追加された解除事由に遡及的効力は生じないと、法院は判示している。
しかし、雇用主が解雇通知において、解雇事由を記載していない、または解雇事由の記載が漠然とした書き方であった場合、法院は雇用主が労働仲裁及び訴訟の段階において解除事由を後から追加することを認める可能性もある。上海市第一中級人民法院が行った「(2020)滬01民終681号」判決(一般判例)では、雇用主が解雇通知において、規則制度への重大違反に基づき労働契約を解除する旨だけを明記し、労働者が違反した規則制度の詳細を記載していなかったが、法院は直接、解雇の適法性を否定するのではなく、雇用主が仲裁廷における審理時に雇用主から初めて説明された解除理由をもとに適法性の審査を行った。
三、解雇通知に複数の解雇事由が記載されている場合
解雇通知において複数の解雇事由が記載されている場合、通常、いずれかの事由が認められれば、適法な解雇となる。しかし、実務では、多くの雇用主は「段階的な」懲戒処分制度を採用し、労働者が数回にわたって規律違反行為を行ってからでないと、労働契約の解除という最も厳しい処罰を実施することができない。したがって、もし解雇は、複数の事由が段階的に積み重なった上での結果である場合で、そのうちのいずれか1つの事由が法院に認められなかったとき、雇用主の解雇条件を充足していないとして、違法解雇となる可能性がある。上海市第一中級人民法院がなした「(2021)滬01民終12544号」判決(一般判例)では、法院は雇用主から主張された規律違反を構成する一部の事実を否定し、違法解雇であると判示している。
四、対応のアドバイス
まず、雇用主が解雇を決定するにあたっては、解雇事由を慎重に特定するべきであり、できる限り労働仲裁及び訴訟の段階で変更しないようにするのが望ましい。法院が解雇の適法性を審査する際にしては、雇用主から初めて主張された解雇事由に限定して審理するのが一般的である。したがって、もし雇用主が解雇事由について十分な検討を経ることなく、安易に解雇に踏み切ってしまった場合、違法解雇となるリスクが高まることになる。
次に、雇用主は解雇通知において記載する解雇事由を適宜増やし、解雇の適法性が認められる確率を高めるといった方法もある。実態として、解雇理由が複数ある場合、法院は多くの場合、それらを逐一審査する。雇用主が理由を複数明記していることによって、雇用主側に法的に不利となる結果を招くことはなく、逆に、解雇事由を特定することが難しい場合、その事由には解雇の正当性が認められないとして違法解雇になることを避けることができる。
最後に、雇用主が解雇事由を漠然とした書き方で記載する、又は記載しないといったやり方は避けるべきである。解雇事由を漠然とした書き方で記載する、又は記載しないことで、雇用主が解雇事由を後から追加するための余地が残っていることになるが、このようなやり方は、違法解雇となる可能性は一定程度ある。また、もし雇用主が最終的にこのように対応することを決めた場合、弁護士などに事前に相談し、訴訟戦略を明確にした上で、労働仲裁及び訴訟の段階においても細心の注意を払いながら解雇事由を主張するようにする必要もある。
(作者:里兆法律事務所 邱奇峰 向亜飛)
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