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ログイン2023年7月12日
「企業中長期外債審査登記管理弁法」(国家発展改革委員会令第56号)(以下「56号新規定」という)が2023年2月10日に発効し、「企業の外債発行届出登記制管理改革推進に関する国家発展改革委員会による通知」(発改外資[2015]2044号)(以下「2044号文」という)は同時に廃止された。「56号新規定」は、外債監督管理方式を「届出登記制」から「審査登記制」へと調整するものであり、中長期外債が直面する監督管理がさらに規範化されたことを意味する。
■「56号新規定」公布の背景
2015年9月、中央の「放管服(行政の簡素化と権限委譲、行政の権限委譲と管理の両立、サービス向上)」改革精神を遂行し、企業の国外融資に便宜を提供するため、国家発展改革委員会(以下「発展改革委員会」という)は「2044号文」を発布し、企業の中長期外債借入管理を審査許可制から届出登記制へと改め、企業の国外融資に便宜を提供するようにした。しかし、市場が持続的に拡大していくにつれ、既存の政策規定はすでに新たな情勢や新たな要求には完全には適応しなくなっていた。外債リスクを効果的に防止し、企業の国外融資の健全で秩序ある実施を促進するため、主管部門は「2044号文」と現行の実践実務とを統合した上で、部門規則の形式にて「56号新規定」を公布し、外債監督管理方式を「届出登記制」から「審査登記制」へと調整した。
■ 「56号新規定」と「2044号文」との主要な内容の比較
「2044号文」及び発展改革委員会の公式サイトで発布された「企業の外債発行届出登記業務ガイドライン」中の「よくある質問Q&A」の部分の内容及びその他の係る通知(以下「外債届出登記Q&A」という)に比べてみると、「56号新規定」は全体として現行の外債管理実務とも一致し、変わらないように見えるが、「56号新規定」は外債監督管理の範囲、資金用途、審査登記手続、事後監督管理などの方面でより明確且つ詳細化された規定がなされている。
簡潔にまとめるならば、外債監督管理範囲の面では、「支配」の定義を明確にし、間接的に支配する企業を管理範囲対象に組み入れ、且つ債務ツールの具体的な種類をさらに追加している。資金用途の面では、外債用途のネガティブリストを補充し、外債資金の使用に対しより高い要求が出されている。審査登記手続の面では、届出制から審査制へと変更になり、申請条件が一層厳しくなり、申請材料がより規範化された。事後監督管理及び法的責任の面では、違反状況や制裁措置などを明確にしている。「56号新規定」と「2044号文」との主要な内容の詳細について下表で比較する。
外債監督管理の範囲 |
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項目 |
「2044号文」 及び「外債届出登記Q&A」 |
「56号新規定」 |
管理相手 |
「2044号文」: 国内企業及びその支配する国外企業又は支店。
「外債届出登記Q&A」: レッドチップ企業が1年期以上の外債を発行し、中長期国際商業ローンの借入等を行う場合、企業外債の届出登記を行わなければならない。 |
国内企業及びその支配する国外企業又は支店(各種の非金融企業及び金融企業を含む)。
支配とは、企業の過半数以上の議決権を直接または間接的に所有しており、または過半数以上の議決権を所有していないが企業の経営、財務、人事、技術などの重要な事項を支配できることを指す。
国内企業が間接的に国外から外債を借入れる場合、本法を適用する。国内企業が間接的に国外から外債を借入れるとは、国内で主要な経営活動を行っている企業が、国外に登記されている企業の名義をもって、国内企業の株式、資産、収益またはその他の類似する権益に基づき、国外で債券を発行し、または商業ローンの借入等を行うことを指す。
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管理対象 |
「2044号文」: 国外から借入れる人民元または外貨建てとした、約定に従い元金・利息を返還する1年期以上の債務ツール(国外で発行する債券、中長期国債商業ローンなどが含む)。
「外債届出登記Q&A」: 外債には、優先債、出資社債、永久債、転換社債、優先株などの国外債務性融資ツールが含むがこれらに限らない。 |
国外から借入れる人民元または外貨建てとした、約定に従い元金・利息を返還する1 年期を超える債務ツール(優先債、永久債、出資社債、中期手形、転換社債、他社株転換可能債、ファイナンスリース及び商業ローンなどを含むがこれらに限らない)。 |
資金用途 |
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項目 |
「2044号文」 及び「外債届出登記Q&A」 |
「56号新規定」 |
ポジティブリスト |
「2044号文」: 「一帯一路」、京津冀協同発展、長江経済ベルト及び国際生産能力と装備製造協力などの重大工事建設と重点分野への投資支援に優先的に使用する。 |
主力業務にフォーカスし、国家重大戦略の遂行と実体経済の発展の支援に協力するうえで有利であること。
企業が外債により集めた資金の実際の用途は「審査登記証明書」の内容と一致しなければならず、他の用途に流用してはならない。 |
ネガティブリスト |
「外債届出登記Q&A」: 用途は以下の条件を満たしていいなければならない。 (一)我が国の法律法規に違反していないこと。 (二)我が国の国家利益と経済安全を脅かさず、損なっていないこと。 (三)我が国のマクロ経済調整目標に違背していないこと。我が国の発展計画と産業政策に違反していないこと。 (四)損失の填補と非生産性支出に使用してはならないこと。 (五)銀行系金融企業を除き、他人に転貸してはならないこと。 |
用途は以下の条件を満たしていなければならない。 (一)我が国の法律法規に違反していないこと。 (二)我が国の国家利益と経済、情報データなどの安全を脅かさず、損害していないこと。 (三)我が国のマクロ経済調整目標に背反していないこと。 (四)我が国の係る発展計画と産業政策に違反せず、地方政府の隠れた債務を新たに追加しないこと。 (五)投機的売買、価格吊り上げなどの行為に使用してはならないこと。銀行系金融企業を除き、他人に転貸してはならず、外債審査登記申請書類に関連状況を記載し、且つ承認を得た場合を除く。
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審査登記手続 |
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項目 |
「2044号文」 及び「外債届出登記Q&A」 |
「56号新規定」 |
審査期限 |
7営業日 |
3ヶ月 |
登記制度 |
登記届出制 |
審査登記制 |
申請報告の内容 |
「2044号文」: 外債通貨、規模、金利、期限、募集資金の用途及び資金還流状況など。 |
(一)企業の基本状況、存続外債及びコンプライアンス状況。 (二)外債を借入れる必要性、実行可能性、経済性及び財務持続可能性に関する分析。 (三)外債借入方案、外債通貨、規模、金利、期限、債務ツールの種類、担保またはその他の信用補完措置、募集資金の用途、資金還流状況及び外債借入作業計画を含む。 (四)外債元金・利息返済計画及びリスク防止措置。 (五)企業による外債借入真実性承諾書。 |
申請条件 |
「2044号文」: 信用記録は良好、発行済み債券またはその他の債務が違約状態にないこと。良好なコーポレート・ガバナンスと外債リスク防止制御メカニズムを備えていること。信用状態は良好で、高い返済能力を有していること。 |
(一)法に依拠して設立され、且つ合法的に存続、経営し、健全且つ運営が良好な組織機構を備えていること。 (二)合理的な外債資金の需要があり、用途は前述の規定に適合し、信用状態は良好で、債務返済能力と健全な外債リスク防止制御メカニズムを備えていること。 (三)企業及びその支配株主、実質的支配者は直近三年に汚職、賄賂、財産横領、財産流用若しくは社会主義市場経済秩序を破壊する刑事犯罪、又は犯罪、重大な違法行為の疑いで法により立件調査された状況が存在していない。 |
有効期限 |
/ |
「審査登記証明書」が発行された日から1年間有効であり、期限が切れると自動的に失効する。 |
事後監督管理 |
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項目 |
「2044号文」 及び「外債届出登記Q&A」 |
「56号新規定」 |
監督管理措置 |
「2044号文」: 毎回発行終了後10業務日以内に国家発展改革委員会に発行情報を報告する。 |
毎回外債を借入してから10営業日以内に、ネットワークシステムを通じて審査登記機関に外債借入情報を報告する。 「審査登記証明書」の有効期限が満了してから10営業日以内に、相応の外債借入状況を報告する。 毎年1月末と7月末までの5営業日以内に、ネットワークシステムを通じて審査登記機関に外債資金の使用状況などを報告する。 国内外の債務返済リスクや重大な資産再編など、債務の正常な履行に影響を与え得る重大な状況が発生した場合、企業は速やかに関連情報を報告し、リスク隔離措置をとり、国内債券のデフォルトリスクの流出とクロス・デフォルトリスクを防止しなければならない。 企業または係る仲介組織は、外債を借り入れることで、国外監督管理機関による検査または調査に協力する必要があり、国家の安全または公共利益にかかわる場合は、事前に国内の関連主管部門に報告しなければならない。 |
企業の法的責任 |
「外債届出登記Q&A」: 違反行為が存在する場合、面談、公開警告、問責、国外債券発行届出登記の一時停止、不良信用記録の公示などを実施する。 |
違反行為が存在する場合、面談、公開警告、期限付き改正などの制裁措置を実施する。不正な手段で「審査登記証明書」を取得した場合は、証明書を撤回する。前記の違反状況は公示する。違法犯罪に係る場合は、法に依拠し、係る手がかりとなる情報を司法機関に移送し、その法的責任を追及する。 |
仲介組織の法的責任 |
外債関連サービスの提供に対する仲介組織の審査義務及び処罰措置(通報、法に依拠した処罰、公示、違法犯罪に係る場合、法に依拠して係る手がかりとなる方法を司法機関に移送し、その法的責任を追及する)を追加した。 |
■「56号新規定」による主要な変化を考察する
「56号新規定」の発布により、企業の中長期外債管理はさらに規範化し、整備された。具体的に以下の方面から考察する。
1.「届出登記制」から「審査登記制」へと調整された
「2044号文」では外債管理に対して届出登記制度を実施し、法律面で届出期限を7営業日と定めているが、実際には、これまでの外債届出登記申請期間は7営業日を要するだけではなく、届出プロセスにも数か月を要することになる可能性が高く、「56号新規定」が実施された後、実際の審査登記期間は従来とあまり差はないものと思われる。また、「審査登記」という言い回しも、現在の行政管理規定の要求により適合している。
また、審査登記手続について、全体的に見ると、「56号新規定」は外債審査登記ネットワークシステムを詳細化、整備し、審査登記の申請のタイミング、主体、手段、材料などの要求をさらに明確にし、外債変更申請の適用状況と取扱プロセスも規範化し、企業登記の透明性と利便性を高めている。
2.外債監督管理の範囲が拡大された
「2044号文」が公布されて以来、市場の実務に伴い、一部の明確に定められていなかった問題が徐々に浮上し、「56号新規定」では係る問題点ついてさらに明確にし、監督管理上の盲点が抑えられるよう、監督管理の全面網羅を実現させるものであり、それには主に次の事項が含まれる。
(1)「2044号文」と比べ、「56号新規定」は「支配」の定義を明確にしており、即ち、「支配とは、企業の過半数以上の議決権を直接または間接的に所有し、または過半数以上の議決権を所有していないが企業の経営、財務、人事、技術などの重要な事項を支配できることを指す」としている。しかし、実際の応用の過程においては、何が「支配」であり、どのように認定するかは、まだ一定の論争と検討の余地が存在する。また、実務例として、株式が分散し、単一の実質的支配者を判定できない企業について、「支配」関係を判断する際に、複数の国内企業が所有する国外企業の株式を合算し、共同支配と見なす必要があるかどうか、このような問題も発展改革委員会及び後続の監督管理実務においてさらに明確にされていく必要がある。
(2)「2044号文」での債務ツールの定義と比べ、「56号新規定」は債務ツールの種類をさらに補充し、また「中期手形」、「他社株転換可能債券」、「ファイナンスリース」について明確に言及している。このことから、「中期手形」、「他社株転換可能債券」、「ファイナンスリース」方式をもって外債融資を行うには、「56号新規定」に従い審査登記を行う必要があることがわかる。
しかし、これまでの手法と比べ、「56号新規定」では外債ツールの種類を列挙する際に優先株を削除している。単純に文字上の修正から理解するならば、優先株は外債の範囲に属さず、優先株の発行は事前に審査登記する必要はない、ということになる。しかし、「56号新規定」では、ここでは「を含むがこれに限定されない」と表記されているため、優先株の発行に「56号新規定」が適用されるかどうかは、発展改革委員会の更なる確認を待たねばならない。
(3)「イノベーション企業による株式または預託証券の国内発行の試行実施に関する証券監督管理委員会による若干意見」の内容(国弁発[2018]21号)によると、「レッドチップ企業」とは、登記地が国外にあり、主要な経営活動は国内にある企業を指す。「2044号文」はレッドチップ構造パターンが届出登記制度を適用するかどうかを明らかにしていないが、これより前に発展改革委員会はQ&Aの形式でレッドチップ構造パターンを発展改革委員会の監督管理の範囲に組み入れている。今回の「56号新規定」も前記の監督管理実務を認めており、レッドチップ企業が国外主体を通じて外債を借入れる(即ち、国内企業が間接的に国外から外債を借入れる)ことを監督管理の範囲に組み入れたことを明らかにしている。
3.外債資金の用途への管理を整備した
「2044号文」と比べ、「56号新規定」のネガティブリストには、主に我が国の情報データなどの安全を脅かさず、損なわない、地方政府の隠れ債務を新たに追加しないなどの規定が主に追加されている。今回の「56号新規定」で新たに追加された「情報データセキュリティ」は、近年公布された「中華人民共和国個人情報保護法」「中華人民共和国データセキュリティ法」などの政策要求とも繋がり、外債により募集された資金に関わる情報データセキュリティの保護を強化している。また、「地方政府の隠れ債務を新たに追加しない」という点は、地方国有企業や地方政府の融資機能を担う地方融資プラットフォームを対象にしたものであり、以前の政策の継続でもある。また、「56号新規定」では、外債により募集した資金の実際の用途は「審査登記証明書」の内容と一致しなければならず、他の用途に流用してはならないことを明確にしており、これも募集資金の用途に対する監督管理の強化を際立たせている
これら以外にも、これまでの手法と比べて、「56号新規定」は「損失の填補」という表現を削除し、且つ承認を得た上であれば外債資金を他人に転貸できることを補足規定しており、これはある程度において資金の使用範囲を緩和するものであり、例えば、親会社が借金を集中し、資金を募集し、実際には子会社への転貸に使用するという貸付構造である場合、外債審査登記申請書類に係る状況を記載し、主管部門の承認を得たならば、これをもって実施できる可能性がある。
4.外債を借入れる主体の必須条件を明確にした
全体として、「2044号文」と比べ、「56号新規定」は外債を借入れる企業の主体としての必須要件を詳細化し、調整しており、「56号新規定」では、企業に合理的な外債資金の需要があり、且つ用途が「56号新規定」の規定を満たしていなければならないと明確に要求すると同時に、「56号新規定」では外債を借入れる企業とその支配株主、実質的支配者に重大なネガティブ状況が存在してはならないという要求を追加したが、この条件は重大な違法行為または重大な違法リスクが存在する一部の主体が外債を借入れることを禁止するものである。
5.事後監督管理を強化し、法的責任を規範化した
「2044号文」と比べ、「56号新規定」は企業外債情報の定期報告、重大事項の報告制度、国外監督管機関による調査の事前報告、外債登記期限満了後の集計報告などの義務を明確にし、債券発行企業に対する後続監督管理を強化している。
また、「56号新規定」は企業及び仲介組織の法的責任をさらに明確にしている。これまでは発展改革委員会はQ&Aの形式で仲介組織の法的責任を明確にしてきたが、今回の「56号新規定」は前述の規定を部門規則の形式で実行し、企業及び仲介組織の責任をより明確に、規範化している。
■「56号新規定」移行期間の取り決め
現在、発展改革委員会は「56号新規定」の遡及力について別途特別には規定していない。筆者の理解では、「56号新規定」は2023年2月10日以前に届出登記された企業中長期外債取引に対し、審査登記制へとアップグレードすることはないと考えるが、2023年2月10日までにすでに届出登記された企業のその後の報告義務は「56号新規定」に基づき履行するべきなのか、それとも「2044号文」及びそれに付帯する外債届出登記Q&Aに基づき報告義務を履行するべきか、また、2023年2月10日までに届出申請を提出したが、まだ届出が完了していないプロジェクトは、届出手続をいったん終了させて、「56号新規」の要求を適用して審査登記手続を実施するべきか、これら移行期間の取り決めについては、発展改革委員会が政務サービスプラットフォームを通じて「56号新規定」と関連する業務ガイドラインまたはQ&Aを発布し、さらに明確にしていく必要がある。
終わりに:
全体的に見た場合、「56号新規定」は従来の「2044号文」及び外債届出登記Q&Aなどの既存の管理実務と管理手法においては基本的に似ているが、文書の効力の次元はより高く、監督管理の度合いもより強化され、関連規定もより系統的、規範化され、近年の外債監督管理審査が強化されていく動きを反映している。
(作者:里兆法律事務所 董紅軍、黄蓉蓉)
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