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製薬企業がどうやって医薬品の臨床試験を実施するか

中国ビジネスレポート 法務
邱靖

邱靖

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2024年4月18日

はじめに

医薬品の臨床試験は、医薬品の市場販売における決定的なステップであり、真実で規範化された完全なデータを提供し、医薬品の安全性と有効性を保証するものである。革新的医薬品の研究開発プロセスにおけるこのリンクの重要性は自明であり、医薬品が市場販売承認を得るための必要条件でもある。本稿は、医薬品の臨床試験の基本的な概念とプロセスを紹介し、製薬企業が臨床試験を実施する際に遵守しなければならない規制規定およびコンプライアンス要件について説明する。

本文

Q1:臨床試験の参与主体は何か?

A1:「薬物臨床試験品質管理規範」の規定により、医薬品の臨床試験において、主に関わるのは、治験依頼者、研究者、倫理委員会と被験者である。

●治験依頼者:臨床試験の発起、管理および臨床試験の費用を提供する個人、組織または機関のことを指し、通常は製薬企業が該当される。

●研究者:臨床試験を実施し、臨床試験の品質および被験者の権益と安全に責任を負う臨床試験実施現場の責任者のことを指し、通常は臨床試験実施機関の職員が該当される。

●倫理委員会:医学、薬学およびその他の背景の人員から構成される委員会のことを指し、その職責は、試験実施計画書および関連文書の独自レビュー・同意・フォローアップを通じて、被験者のインフォームド・コンセントに使用される方法および資料の入手と記録を行い、被験者の権益および安全が保護されることを確保することである。

●被験者:臨床試験に参加し、試験薬を投与される者のことを指し、患者および健常者を含む。

Q2:中国で医薬品の臨床試験を実施するにあたり、遵守しなければならない法律は何か。

A2:臨床試験とは、ヒト(患者または健常者)を対象とした試験のことを指し、医薬品の治療効果や安全性を判断するために、ある被験薬の臨床医学、薬理学およびその他の薬効学作用、副作用、または被験薬の吸収、分布、代謝および排泄を発見または検証することを目的とする系統的な試験である。

「薬物臨床試験品質管理規範」(GCP)の関連規定により、治験依頼者が医薬品の臨床試験を実施するには、以下の原則を満たさなければならない。

●倫理委員会の審査と同意を受け、「世界医学大会ヘルシンキ宣言」の原則および関連する倫理的要件を満たさなければならない。

●十分な科学的根拠を持たなければならない。臨床試験は、被験者と社会の予想されるリスクと利益を比較考量し、予想される利益がリスクを上回る場合にのみ実施または治験実施計画書を継続するべきである。試験実施計画書は、明らかで、詳細かつ実行可能でなければならない。

●被験者のプライバシーとその関連情報の守秘性を守らなければならない。

●すべての臨床試験の紙タイプまたは電子資料は適切に記録・処理・保存し、正確に報告、解釈および確認できるものでなければならない。

●臨床試験の品質管理体制は、被験者の保護、試験結果の信頼性、および関連法律法規の遵守に重点を置き、臨床試験の全過程をカバーしなければならない。(「品質管理体制原則」と略称)

●臨床試験の実施にあたり、利益相反回避原則を遵守しなければならない。(「利益相反回避原則」と略称)

治験依頼者による臨床試験の実施に対する指導・監督の役割を果たす「薬物臨床試験品質管理規範」の関連規定に加え、2023年11月3日、国家薬品監督管理局は「薬物臨床試験機関監督検査弁法(試行)」を公布し、当該弁法は2024年3月1日より正式に施行され、薬物臨床試験機関に対して全面的に監督することを目的として、関連法律法規を厳格に遵守するとともに、「薬物臨床試験品質管理規範」を実行することを確保するため、検査機関や検査担当者、検査プロセス、検査業務のつながりと検査結果の処理などの内容について詳細に規定している。当該新弁法の公布および実施は、治験依頼者による医薬品の臨床試験の管理作業の強化を強く促すものである。

Q3:臨床試験における治験依頼者の義務とは何か?

A3:治験依頼者は、医薬品の臨床試験を発起、申請、案配、経済的援助および監査の責任を負う。治験依頼者は通常製薬会社であるが、ほかの組織や機関である場合もある。「薬物臨床試験品質管理規範」を参照すると、治験依頼者の義務は主に以下の通り概括できる。

1.臨床試験の許認可または届出
臨床試験を開始する前に、治験依頼者は薬品監督管理部門に臨床試験の関連情報を提出し、臨床試験の許可を得るか、または届出を完了しなければならない。

2.契約の締結
治験依頼者は、研究者や臨床試験機関など全て臨床試験に参加される関係会社と契約を締結し、各当事者の責任を明確にしなければならない。

3.被験者の権益保障
治験依頼者は、臨床試験の実施過程、目的および起こりうるリスクを被験者に対して解明し、臨床試験に関連する被験者の損害に関する診療費用を負担するとともに、法に基づいて相応の補償を行うものとする。

4.有害事象の報告
治験依頼者は、安全性に関連する情報をあらゆる情報源から入手した場合、その情報の重大性、治験薬との関連性および予期事象であるか否かなどを含め、直ちに分析・評価しなければならない。臨床試験において発見された被験者の安全性に影響を及ぼす可能性のある問題、臨床試験の実施に影響を及ぼす可能性のある問題、倫理委員会からの同意を変更する可能性のある問題については、研究者および臨床試験機関、薬品監督管理部門に速やかに通知するものとする。

5.臨床試験の停止または早期終了
医薬品の臨床試験において、予期せぬ重篤な副作用が広範に発生した場合、または臨床試験に使用された医薬品に重大な品質上の問題があると証明できる証拠がある場合、治験依頼者および治験実施機関は直ちに、当該医薬品の臨床試験を停止しなければならない。薬品監督管理部門はその職責に従い、臨床試験計画書の調整、医薬品の臨床試験の停止または早期終了を命じることができる。

Q4:治験依頼者は、治験のプロセスにおける管理体制をどのように整えるのか。

A4:臨床試験の品質管理体制は、被験者に対する保護、信頼性の高い治験結果の保証、および関連法規の遵守を含め、臨床試験の全過程をカバーしなければならない。管理体制を整え、およびデータコンプライアンスを確保するため、治験依頼者は以下のことを行うことができる。

●有能な医学専門家を指定し、適時に臨床試験に係る医学問題について医学専門家と相談する。

●臨床試験業務と任務の一部または全部を受託研究機関(CRO)に委託するが、治験依頼者は臨床試験データの品質と信頼性について最終責任者であり、CROが行う様々な業務を監督しなければならない。

●独立したデータ監査委員会を設置し、安全性データや重要な有効性エンドポイントデータを含む臨床試験の進捗状況を定期的に評価する。

●研究者、臨床試験機関、治験依頼者の関係者が臨床試験において、試験実施計画書、標準業務手順書、および関連法律法規を遵守しないことが判明した場合には、直ちに是正措置を講じ、臨床試験における良好的な患者コンプライアンスの徹底を図る。

●臨床試験で使用される医薬品の管理を強化し、その調製は臨床試験で使用される医薬品の製造品質管理に関する関連要件に満たし、その使用は試験実施計画書に従わなければならない。

●必須書類のファイル管理体制を確立し、各当事者の臨床試験ファイルに適切に保管されることを確保する。

終わりに

新薬の有効性・治療効果および市場販売できるか否かは、臨床試験を通じて確認されなければならない。臨床試験の被験者、データの安全性とデータ品質のコンプライアンスを確保することは、革新的医薬品の研究開発における市場・技術・規制リスクに対抗するためのキーポイントである。国家が医薬品に対し規制を強化するもとで、「薬物臨床試験品質管理規範」を厳格に遵守し、臨床試験の職責を真面目に遂行し、被験者の権益と安全を確保してこそ、製薬企業は医薬品の臨床試験を円滑に実施し、新薬の研究開発プロセスの加速を促進することができる。

(作者:北京市中倫(上海)法律事務所邱靖弁護士)

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