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ログイン2025年3月31日
はじめに
2025年1月10日、国家市場監督管理総局は、「医薬企業の商業賄賂リスク防止コンプライアンスガイドライン」(以下「ガイドライン」という)を正式に発表し、これは2024年10月11日に発表した「医薬企業の商業賄賂リスク防止コンプライアンスガイドライン(意見募集稿)」(以下「意見募集稿」という)からわずか3ヶ月であった。「意見募集稿」に比べ、正式版の「ガイドライン」に大きな改正はなく、細かいところや表現について少し調整がある程度となっている。本稿は、正式版の「ガイドライン」の発表が業界発展への推進の意義を紹介するとともに、正式版が「意見募集稿」との改正の相違点を分析し、企業への引率の役割をまとめる。
本文
Q1: 「ガイドライン」の発表の背景および意義とは?
A1: 近年、中国では、医薬業界のコンプライアンス管理業務を推進するため、法規や工作通知を相次いで発表し、「中華人民共和国薬品管理法(2019年改正)」、「医薬品購入販売分野と医療サービスにおける不正を是正するための作業要点」および「医薬代表管理弁法(意見募集稿)」などを含むがこれらに限らず、医薬企業のコンプライアンスに基づいた業務遂行に関する指導や規範を提供しているが、内容が比較的原則的であること、規範段階が十分詳細でないことが問題として存在し、特に商業賄賂に関する立法において、具体的なビジネスシーンに対するオフィシャルのガイドラインまたは解読が欠けている。
「ガイドライン」は、中国初の政府規制部門が発表した全国的な医療衛生業界における商業賄賂を防止するためのコンプライアンス指導意見であり、医薬品や医療機器事業の全チェーンにおける9つのシナリオから、医薬業界における商業賄賂防止関連の法律法規を具体化したもので、今後の医薬業界のコンプライアンス管理に大きな影響を与えるものである。
Q2: 立法に比べ、「ガイドライン」はどのような実践的な意義を持つか。
A2: 「ガイドライン」は、「中華人民共和国不正競争防止法」、「中華人民共和国医薬品管理法」などの法律、法規の規定に基づき、業界で公認された行動準則を参照し、中国の商業賄賂防止の法執行実務と緊密ににらみ合わせ、医薬業界の実情に基づき、9つの主要なビジネスシナリオにおける商業賄賂のリスクポイントを体系的に整理・要約したものである。
「ガイドライン」は政府が発表された指導意見として、立法と異なり、強制力はないが、「ガイドライン」の内容は規制当局の傾向的な態度を反映したものであり、医薬企業のコンプライアンス体制構築やコンプライアンス方針策定の重要な参考となるものである。
Q3: 「意見募集稿」に比べ、「ガイドライン」の正式稿の主な改善ポイントは何か。
A3: 「意見募集稿」に比べ、「ガイドライン」の正式稿は、各章のスタイルや具体的な規定について大きな変更はないが、細かいところについて調整が加えられ、詳細は以下の通りである。
1.より企業の実情に近づいている
以下に例を挙げる。
● 援助対象および援助方法に関する制限の減少
意見募集稿 | 第 32 条 本ガイドラインでいう経済的援助とは、その医療衛生サービスレベルを向上させるために、医薬企業が医療衛生機関に対して無償で行う財務的な援助をいい、医学的または科学的研究、医療施設の改善などを含む。 |
正式稿 | 第 32 条 本ガイドラインでいう経済的援助とは、その医療衛生サービスレベルを向上させるために、医薬企業が経済的援助を受ける側に対して無償で財物を提供するなどの手段で行う援助をいい、医学的研究の実施、医療施設の改善などを含む。 |
「ガイドライン」の正式稿は、医薬企業の資金援助の対象を「医療衛生機関」から「経済的援助を受ける側」に、「財務的な援助」から「財物などの手段」に変更していることは、まず、医薬業界において、医療機関だけでなく、学会・協会などのその他のタイプの主体にも援助を行われている実情に即したものであり、次に、援助の形態も限定せず、経済的援助のほか、サービスまたはその他の形態で援助を行うこともできることである。
2.より科学的で合理的な要件
以下に例を挙げる。
● 医薬品処方箋枚数の要求および集計の全面的な禁止
意見募集稿 | 第13条(3)医薬代表[1]および医療機器販売促進者が、訪問を名目として、医療衛生機関や医療衛生機関内の診療科または医療衛生機関の職員が発行した各種医薬品使用量の情報を要求および集計することを禁止する。 |
正式稿 | 第13条(3)医薬代表および医療機器の学術宣伝担当者が、医療衛生機関や医療衛生機関内の診療科4または医療衛生機関の職員が発行した各種医薬品の処方箋枚数を要求および集計することを禁止する。 |
[1] 医薬代表:医薬情報担当者のことを指し、MR(Medical Representatives)ともいう。
「ガイドライン」の正式稿においては、「訪問を名目とする」という形式的な制限が削除され、即ち、訪問という名目であるか否かをかかわらず、いかなる名目でいかなる場合においても、要求または集計をしてはならない。
● 医薬代表による代金の回収や仕入・販売請求書の処理などの営業行為を実施することを明確に禁止する。
意見募集稿 | 第13条(1) 医薬企業が医薬代表および医療機器販売促進者に販売業務を割り当てることを禁止する。 |
正式稿 | 第13条(1) 医薬企業が医薬代表および医療機器の学術宣伝担当者に販売業務を割り当て、代金の回収や仕入・販売請求書の処理などの営業行為を実施させることを禁止する。 |
2024年に発表された「医薬代表管理弁法(意見募集稿)」において、医薬企業が医薬代表に代金の回収や仕入・販売請求書の処理などの営業行為を実施させることを明確に禁止し、「ガイドライン」の正式稿も、前述の法規や今後の規制動向の要求に沿ったものであり、医薬代表の学術宣伝の職責と営業職の営業業務の切り離しを改めて強調されている。
Q4: 「ガイドライン」は、医薬企業がリスク事象への対応メカニズムを最適化するよう、どのように引率するか?
A4::「ガイドライン」は、リスクの内部処理や外部規制との協力の2つの面から企業にアドバイスを提案する。
1.リスクの内部処理
内部処理として、「ガイドライン」は、医薬企業に対し、商業賄賂のリスクとなる経営行為を調査・評価し、評価結果に基づいて適時に有効な処理措置を講じることを求めていることを以下の通りまとめる。
調査の実施 | 医薬企業(または招聘した第三者機関)は、社内ヒアリングや事件に係る資料のレビューなどの方法を通じて、リスク疑惑の事件について社内調査を実施する |
評価結果 | 調査結果に基づき、当該事件に係る行為のリスク等級、影響の範囲、影響の程度などを含め、当該事件に対して初歩的な評価を行う |
対応措置 | 事件に係る関係者の責任を追及し、悪影響を排除し、管理制度を改善する |
長期方案 | 改善、モニタリング、評価とレビューなどの措置を継続的に行い、必要時に関連規則制度を改正し、コンプライアンス研修を強化する |
2.規制による法執行への協力
商業賄賂を発見した場合、医薬企業は主動的に市場監督管理部門へ報告して関連証明資料を添えることを奨励している。市場監督管理部門から調査された場合、医薬企業は市場監督管理部門の要求に基づいて調査に協力し、関連資料と実情を如実に提供しなければならない。
また、「ガイドライン」においては、市場監督管理部門が行政処罰を軽減する参考根拠となる8つの状況、および市場監督管理部門が行政処罰としない参考根拠となる3つの状況を挙げ、これは医薬企業がさらに積極的に外部の規制調査への協力を推進するものとなる。
終わりに
総じて、「ガイドライン」は、企業のコンプライアンス体制の構築、主要なシナリオにおける行動規制とリスク予防、社内のリスク処理などにおいて、実用性の高いものであるが、正式版の打ち出しは、企業が商業賄賂のガバナンスの長期的な仕組みを構築・実施するように引率するものである。医薬企業にとって、「ガイドライン」は、企業が持つ潜在的なコンプライアンスリスクを効果的に回避することに役立つだけでなく、企業発展のための強固な基礎を築き、より完璧なコンプライアンス管理システムの構築を推進することで、さらに長期的な発展を促進することに有利である。
(作者:北京市中倫(上海)法律事務所 邱靖弁護士)
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