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ログイン2025年8月5日
はじめに
現在の世界貿易情勢において、米中関税戦争は多くの業界に衝撃を与え、医薬企業もその影響を免れることはできない。米国は2025年4月、中国の医薬製品に対し追加関税を145%まで引き上げ、中国も同等の対抗措置を取っていた。その後、5月の米中経済貿易会談により双方の関税率は10%に引き下げられ、24%の追加関税部分は一時停止されたが、関税の変動は依然として医薬製品の輸出入に多くの不確実性をもたらしている。国家薬品監督管理局は2025年4月7日、「海外で既に上市された医薬品の承認前における商業規模ロット製品の輸入に関する公告(意見募集稿)」(以下「新規定」という)を発表し、海外で既に上市された医薬品を国内の臨床に早く使用できるように支援するため、承認前における商業規模ロット製品の輸入制度を確立することを目指している。本稿では、医薬品の輸入現状を分析し、新規定が医薬品業界に与える可能性のある影響についてまとめる。
本文
Q1: 新規定の前は、海外で既に上市された医薬品の承認前に商業規模ロット製品を輸入することができるか?
A1:「薬品管理法」に基づき、医薬品は国家薬品監督管理局による登録承認を経て初めて国内で上市販売が可能である。承認なしに商業規模ロット製品を輸入する行為は違法であり、製品価額の15倍以上30倍以下の罰金に処される可能性があり、さらに「両罰制」の実行により企業と責任者の両方の法的責任が追及される。
Q2: 海外で既に上市された医薬品を承認前に輸入できることが許可される特別なケースはあるか?
A2: 以下の状況においては、海外で既に上市された医薬品の承認前の輸入が許可されている。
●臨床試験用の対照薬:一回限りの輸入承認が必要で、研究または臨床試験のみに限定される。
●臨床上緊急に必要とされる医薬品の臨時輸入:医療機関が申請し、指定された病院で使用され、数量には制限がある。
●個人の自己使用物品の携帯または郵送:限度金額以下で個人使用物品として通関され、超過分は貨物としての輸入手続きが必要で、販売は厳禁される。
Q3: これまでに関連の政策パイロットはあったか?
A3: はい、例えば北京などで「保税ストック」モデルのパイロットが行われていた。北京天竺総合保税区は2024年2月、希少疾病用医薬品の初回ストックを完了させ、このモデルでは、海外の希少疾病用医薬品を事前に総合保税区に保管し、医療機関が必要に応じて数回に分けて、引き出して使用することができ、医薬品の交渉や調達輸入にかかる時間を大幅に短縮できる。また、研究用の対照薬についても、省レベルの薬品監督管理部門が20営業日以内に一回限りの輸入承認を完了させることができる。しかし、これらのパイロットの適用範囲が限定的であり、「保税ストック」モデルは希少疾病用医薬品で特定の地域とプロセスが関わるもののみに適用され、一回限りの輸入承認は研究用途に限定されるため、いずれも商業規模の輸入ニーズには答えられない。
Q4: 新規定が打ち出された政策的背景とは何か?
A4: 輸入医薬品は、中国の医薬品承認証明文書を取得した後、生産、輸送、通関などのプロセスに長く時間がかかり、実際に国内市場に投入されるまで平均で約半年遅れることが実情である。上記のような緩和政策やパイロットが存在するものの、適用範囲は依然として狭く、手続きも複雑である。新規定は、「国務院弁公庁による医薬品・医療機器の監督管理改革の全面的深化と医薬産業の質の高い発展の促進に関する意見」(国弁発〔2024〕53号)の要求事項を実現することを目的とし、要件を満たす承認前の商業規模ロット製品の輸入販売を許可する。この措置は、海外で既に上市された医薬品をの中国における承認前輸入プロセスを最適化し、革新的医薬品の早期中国市場への投入を支援し、特に不足医薬品や希少疾病用医薬品の供給といった臨床ニーズに応えるものである。
Q5: 新規定では、どのような医薬品が承認前に商業規模ロット製品として輸入が許可されるか?
A5: 新規定の適用範囲は、海外で既に上市され、かつ中国の医薬品承認証明文書を取得した医薬品であり、具体的には以下のものが含まれる。
●先発医薬品:世界で初めて承認・上市され、完全かつ十分な安全性・有効性データを上市根拠とする医薬品、および中国薬品監督管理部門が条件付きで承認された医薬品である。
●国家不足医薬品リストに収載されている後発医薬品(ジェネリック医薬品):「国家不足医薬品リストの通知」に基づき、6品目の医薬品が国家不足医薬品リストに収載されている。
●国家臨床上に必要で不足しやすい医薬品の重点モニタリングリストに収載されている後発医薬品:「国家不足医薬品リストの通知」に基づき、57品目の医薬品が国家臨床上に必要で不足しやすい医薬品の重点モニタリングリストに収載されている。
●希少疾病治療用の後発医薬品:「第一期希少疾病リストの公布に関する通知」および「第二期希少疾病リストの公布に関する通知」に基づき、合計207品目の希少疾病が希少疾病リストに収載されている。
Q6: 新規定は、輸入医薬品の品質規制に対してどのようなコンプライアンス要求事項を打ち出しているか?
A6: 「薬品輸入管理弁法」の要求事項および上記の適用医薬品範囲の要件を満たすことに加え、承認前の商業規模ロット製品は以下の条件を満たさなければならない。
●海外上市証明:海外の薬品監督管理機関が上市販売を承認した証明文書(世界で初めて中国で承認された先発医薬品を除く)の取得
●品質基準:製品の品質基準が中国薬品監督管理部門が承認された登録基準に適合し、製造場所、製造プロセスが中国での承認内容と一致していること
●生産の適合性:中国、製造地の所在国(地域)または既に上市された国(地域)のGMP(「医薬品の適正製造規範、Good Manufacturing Practice of Medical Products」)適合性調査に合格し、かつ検査後から承認前までに生産工場がGMP不適合と判定されていないこと
●添付文書およびラベル:中国語版は中国での承認内容と一致しなければならず、承認されていない適応症または用法を記載してはならない。
Q7: 上記の医薬品が輸入され流通した後、医薬企業はどのように規制の要求事項に対応すべきか?
A7: 医薬企業は、完備されている医薬品リスク管理体系を確立し、承認前の商業規模ロット製品に対して、副作用モニタリングや追跡体系の確立などを含む全ライフサイクルにわたる品質管理を行わなければならず、規定に違反した販売は厳禁される。違反があった場合、国内責任者の所在地にある省レベルの薬品監督管理部門が法に基づいて調査・処罰される。また、承認取得後は、30日以内に承認前ロット製品の説明書を更新し、最終的に承認された内容と一致させることを確保しなければならない。
終わりに
革新的医薬品の研究開発に注力する海外の医薬企業にとって、中国市場は常に巨大な潜在力を秘めている。今回の新規定は、海外医薬企業が中国で事業を展開する上で多くの前向きな指針と促進効果をもたらすものである。輸入プロセスの簡素化、市場参入ハードルの調整から、品質規制要求事項の明確化およびリスク管理の規範化に至るまで、多方面にわたって海外医薬企業にとってより良いビジネス環境を創出している。米中関税競争という複雑な背景において、この政策の打ち出しは、海外医薬企業の中国市場での発展にとって強力な後押しとなり、世界の優れた医薬品がより迅速に中国に参入することを助け、国内患者の医療ニーズを満たす一方で、医薬業界の国際交流と協力を促進することもできる。
(作者:北京市中倫(上海)法律事務所 邱靖弁護士)
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