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税関による自主開示に関する新政策を簡潔に紹介する

中国ビジネスレポート 法務
董 紅軍

董 紅軍

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2024年4月24日

概要:

対外貿易の発展への自信を深め、一流のビジネス環境をさらに最適化するため、税関総署は2023年10月8日、2022年第54号公告(以下「54号公告」という)をベースとして、「違反行為の自主開示関係事項に関する税関総署による公告」を発布した(以下、「新公告」という)。新公告の有効期間は2023年10月11日から2025年10月10日までであり、適用範囲、期限の要求、罰則の度合いなど複数方面においての調整がなされている。本稿では、新公告を考察し、分析したうえで、企業のコンプライアンス経営に対し助言を行うものである。

本文:

税関の自主開示は、一種のミス許容メカニズムである。輸出入企業が自己検査を通して、自己の輸出入活動において税金の過少納付、納付漏れ、又は、他の税関監督管理規定に違反するといった状況が存在することを発見した場合、自主的に税関に書面で報告し、税関の処分を受け入れると、税関は、法律に依拠し行政処分を軽めに下し、軽減し又は科さないとする扱いを行う。自主開示は、輸出入企業に対し、自己検査と自己是正、法令遵守の利便性のルートを提供し、企業が自主的かつ合法的に経営するよう導き、促すことができる。

一、新公告による主な更新ポイント及びその解釈

1.自主開示の適用範囲を大幅に拡大した

新公告の適用範囲は、54号公告の「税金徴収に影響する税関監督管理規定に違反する行為」だけに限定されず、「税関規定に違反する行為」にまで拡大された。新公告によると、自主開示することで行政処罰が科されない取扱いが適用される行為には、①税金徴収に影響する税関監督管理規定の違反行為、②国の輸出税還付管理に影響する規則違反行為、③加工貿易業務における規則違反行為、④税関統計の正確性に影響する規則違反行為、⑤税関監督管理の秩序に影響する規則違反行為、⑥税関監督管理貨物に関する手続面での規則違反行為、⑦税関検査検疫業務規定に違反する行為が含まれる。

新公告の適用範囲は、「中華人民共和国税関行政処罰実施条例」第15条及び第18条で例示されている規則違反行為をほぼ網羅しており、輸出入企業によく見られる規則違反行為を概ね網羅している。この変更は、税関が企業による規則違反行為の自主的開示を奨励する一方で、処罰の度合いがより科学的かつ合理的になっていることを体現するものである。新公告が発布されるまでは、税務関連の規則違反行為だけが自主開示によって処罰を科さないという取扱いがなされ、その影響がより軽微な行為については、明確な実施根拠がなかったことから、かえって行政処罰に直面することとなった。

2.自主開示の期限要求が緩和された

新公告は、税関への自主開示期限を「税務関連の規則違反行為の発生日から1年以内」から「2年以内」へと緩和したが、これは「中華人民共和国行政処罰法」(以下、「行政処罰法」という)における時効の遡及に関する一般規定に一致する。また、新公告は、税関による統計の正確性に影響を与える行為については、異なる期限の要求を設定しており、法律法規に違反する行為が発生した当月末日の24時から3か月後までの期間、と限定している。

加工貿易業務における規則違反行為のように、公告に明確な期限の要求のない規則違反行為についても、筆者の理解では、違反行為が発生した日から2年以内に税関に自主開示することで、「行政処罰法」の時効の遡及に関する一般規定が適用されるはずである。

3.企業が受ける政策上の恩恵を引き続き最適化する

税務に関する規則違反行為について、企業が法に依拠して、延滞税の減免を申請することのできる条件は、「企業が自主開示し、遅滞なく是正し、税関に自主開示と認められること」である。54号公告と比べると、新公告は、「行政処罰を科さない」という前置条件が削除され、延滞税減免の適用範囲が拡大されている。これもまた、税関が堅持している「信用監督管理」モデルとの深い融合であり、信用による奨励と拘束のメカニズムを活用して、より多くの企業が自覚し、誠実に法律を遵守するよう導き、企業の順法と税関利便化という好循環を形成するものである。

同時に、新公告では、54号公告の信用管理メカニズムの政策上の恩恵措置を据え置き、「輸出入企業および組織が自主開示し、且つ税関から警告を受け、又は100万元未満の行政処罰が科される行為は、税関による企業の信用状況認定記録には記載されない」ことを明確にしている。ただし、この他に注意すべきこととして、検疫に係わる事項、及び安全、環境保護、衛生に係わる事項に関する検査事項は、新公告の自主開示により処罰が科されないこと及び企業信用管理に関する規定は適用されない。従って、これらの事項については、企業は日常管理において、コンプライアンス意識を強化し、手遅れになってまう前に対策を講じておくのが好ましい。

4.「同一」の定義及び適用条件を明確にした

54号公告と比べると、新公告は、「同一の税関規定違反行為」の定義をさらに明確にしており、法執行の基準を統一するうえで役立つ。「同一行為」とは、「性質が同じであり、且つ同じ法律条文の同一の項号の規定に違反する行為」である。新公告では、同一行為に時間の限定が加えられ、即ち、「一年以内(12か月連続)」に二回目及びそれ以上の規則違反行為があった場合、自主開示による処分を科さない取扱いは適用しない、としている。旧54号公告では、企業が同一の税務に関する規則違反行為を税関に再び自主開示した場合、処分を科さない取扱いは適用しない、とされていたが、新公告の規定によれば、企業が1年の期限満了後に同一の規則違反行為を税関に再度自主開示する場合、処分が科されないようにしてもらうことができる。

「初回」の自主開示の時間の認定については、税関は、公式アカウントが「新公告」の実施日、即ち、2023年10月11日以降に一回目に開示した時間を税関に「初回」自主開示した時間とすると発布した。

二、係る助言について

自主開示制度は、企業に恩恵をもたらす政策として、自主的に法律を遵守するよう企業を促し、導き、ミスを許容することをもってミスを正すよう促し、「誠実に法を順守すれば利便性が与えられ、信用を失い違法であれば制裁する」との価値観の方向性を強調し、誠実で信用のある企業には自らミスを是正する機会をより多く与える。政策の恩恵をさらに受けることができるよう、企業は以下の点に注意すべきである。

1.コンプライアンス意識を高め、コンプライアンス再点検を定期的に行う

新公告は、自主開示の適用範囲を大幅に拡大しており、従来の税務に関する規則違反の行為に加え、企業の関係者は、上記の新たに増えた範囲についてもある程度、理解することによって、規則違反のリスクを識別する能力を身に付けなければならない。企業は、税関もしくは専門機構が主催するセミナーに積極的に参加し、自主開示に関する新公告の関係規定および要求をさらに把握すべきである。

自主開示に適用する規則違反の行為については、新公告ではいずれも期限の要求を定めているため、企業は自主的なコンプライアンス体制を確立し、運営上のそれぞれの節目において適切なチェックポイントを設置しておくとよい。企業は、税関規定に違反する行為が存在することを発見した場合、当該違反行為のほか、類似の経営行為に対しても速やかに是正する必要がある。さらに、企業は係る法律の要求を会社のマネジメントシステムに落とし込み、コンプライアンス評価審査制度と自主開示制度を構築しておくとよい。

2.意思疎通ルートを築き、自主開示を穏当に展開する

企業が業務の運営においてコンプライアンス上の問題が存在することを発見した場合、規則違反行為の性質、自主開示適用の条件を満たすかどうか、自主開示の申請が企業に影響を及ぼすかどうかを遅滞なく分析しなければならない。自主開示政策が適用できることを前提として、企業は適宜、税関との意思疎通を積極的に行うと同時に、専門的な弁護士もしくは仲介機構に依頼して、企業による自己検査及び効果的な自主開示の実施に協力してもらい、不完全な開示又は不十分な準備による不利な結果を回避するようにしなければならない。

その他、企業が通関業者に通関を依頼する際に注意すべきこととして、筆者の経験上、通関業者は自社の評判等のいくつかの理由から、税関への協力をしたがらないことがある。企業は、自主開示手続きが円滑に進められるよう、通関業者と事前に協議し、係る責任負担を明確にしておき、税関に自主開示する際には、真実性、正確性、完全性を堅持するのがよい。

(作者:里兆法律事務所董紅軍、陳昕)

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