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医薬品の臨床試験データのコンプライアンスのポイントについて

中国ビジネスレポート 法務
邱靖

邱靖

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2024年9月2日

はじめに

医薬品の臨床試験は、医薬品の研究開発の過程における重要な一環であり、医薬品の市販承認の重要なステップであるだけでなく、医薬品の有効性と安全性を評価する重要なステップでもある。臨床試験データの真実性・標準化・完全性は、医薬品の安全性と有効性に直接関連される。医薬品の臨床試験の段階において、一般的なデータだけでなく、ヒト遺伝資源データなど、医療分野における特殊タイプなデータも含まれ、大量のデータが関与することになる。各種データの規制が強化される中、臨床試験依頼者、医薬品開発業務受託機関(「CRO」と略称)、臨床試験実施機関と研究者などを含む医薬品の臨床試験の各関係者は、臨床試験データのコンプライアンス管理に対する意識を強化しなければならない。本稿は、医薬品の臨床試験データ管理におけるデータの真実性とコンプライアンスについて、関心の高い問題を取り上げたものである。

本文

Q1: 医薬品の臨床試験データ管理に関する法律規範とは?

A1: 臨床試験のデータ管理業務を規範化し指導するため、中国は2016年7月29日に「臨床試験データ管理業務技術ガイドライン」を公布し、データ管理に関わる担当者の職責・資質・教育、管理システムの要件、臨床試験データの標準化、データ管理業務の主な内容、データ品質の保証と評価、および安全性データや重篤な有害事象などの6方面について規定している。また同日、「医薬品の臨床試験データ管理および統計分析の計画と報告に関する指導原則」も公布され、データ管理業務と統計分析の原則に係る詳細な計画書を制定するための技術指導を提供する。
2019年8月26日に改正・公布された「薬品管理法」、および2020年3月30日に改正・公布された「薬品登録管理弁法」の相次ぎの施行に伴い、臨床試験データおよびその関連資料を標準化された方法で提出するよう臨床試験依頼者を指導するため、国家薬品監督管理局薬品審査センターは2020年7月20日、「医薬品の臨床試験データ提出の指導原則(試行)」を公布し、臨床試験データの提出内容およびフォーマットに対して具体的な要求を出した。

国家薬品監督管理局薬品審査センターは2020年10月16日、「医薬品の臨床試験データ監督検査委員会の指導原則(試行)」を制定・公布し、医薬品の臨床試験データ監督検査委員会が規範的に運営され、円滑に実施されることを確保するため、医薬品の臨床試験データ監督検査委員会が臨床試験における職責・任務・構成などについて定めた。

Q2: 医薬品の臨床試験データの検証はどのように行うのか。

A2: 国家薬品監督管理局薬品審査センターが2020年7月20日に公布した「医薬品の臨床試験データ管理および統計分析の計画と報告に関する指導原則」において、臨床試験データの真実性・完全性、正確性・信頼性、高品質と科学的にその有効性と安全性を評価することを保証するため、事前にデータ管理業務と統計分析の原則に係る詳細な計画書を制定しなければならない。データ検証を行う前に、データ検証の内容、方法および検証要件を明確するため、詳細なデータ検証計画を制定しなければならない。関係者はデータ検証計画に基づき、プログラミングまたは手作業による検証を実施し、その後、クリエ(英語では「Query」という、データの問い合わせとの意味)を行い、データを確認する。

データ収集システムが紙ベースであろうと電子データであろうと、効率的かつ正確にデータをクリーニングできるよう、完全かつ明確なデータ検証計画を試験開始初期に作成しなければならない。最終的には、高品質のデータを得ることを目的とする。同時に、データ検証計画は、調査の漏れ・誤り・重複を防ぐために、臨床試験依頼者や統計分析者など、臨床試験の他の参加者によってもレビューされなければならない。

現在、データ管理検証に関する明確な法的根拠がないため、臨床試験データ管理品質検証の一貫性とデータ管理検証要件をを高めるために、中国医薬品質管理協会は2023年10月10日に「臨床試験データ管理品質検証の要点」を発表し、臨床試験データ管理品質検証の要点を規定し、データ管理検証の範囲内容と要点を規範化し、要点内容についてアドバイスを提出した。 同文書に記載されているとおり、臨床試験データ管理品質検証には以下の要件を含む。

● データ管理の全過程、持ち場の職責、品質保証および品質コントロールを含めた「医薬品の臨床試験品質管理規範」(以下「GCP」という)とデータ管理の関連法規の要件に適合している臨床試験データ管理システムを有さなければならない。
● データ管理検証の内容に沿った関連文書および記録が備え、関連文書の原本または証明された写しがなければならない。
● 現場で検証を受けた要員は、臨床試験依頼者の確認を経て、プロジェクトのデータ管理および関連業務を実際に完了した者でなければならない。データ管理検証および面談の対象者として、検証の内容および要点を熟知し、要件に基づいて検証の関連質問を如実に回答および解釈し、並びに検証に必要なものを提供する責任を負う。
● 現場で検証対象となる要員は、データ管理システム内容および検証対象プロジェクトのデータ管理のプロセス、結果、問題点、およびデータ管理の品質保証と品質コントロールなどについて報告し、関連質問に回答しなければならない。

Q3: 臨床試験データ管理における一般的なコンプライアンスリスクとは?

A3: データは臨床試験の極めて重要なコア内容であり、医薬品の安全性や有効性を評価する重要な要素である。完全な臨床試験データのコンプライアンスシステムは、製薬会社が医薬品の研究開発および医薬品の市場販売を円滑に推進することに役立ち、医薬品の研究開発のライフサイクル全体においても重要な一環である。臨床試験における一般的なデータコンプライアンス違反現象には、主にデータの欠落、誤り、漏洩、偽造、修正、不完全、データの盲検化、被験者による同意なしなどが含まれる。本稿は、GCP、「ヒト遺伝資源管理条例」および「個人情報保護法」を合わせて、一般的なデータコンプライアンス違反現象を以下のとおりまとめる。

主体

リスク現象

臨床試験依頼者

品質管理システムの不備による臨床データの欠落、誤り、漏洩

体系的な臨床試験の実施、データ記録および報告の欠如

電子データの修正、変換、編集トラックが反映されていない、データ管理システムのアカウント使用と認可に欠点がある

盲検法を用いてデザインされた臨床試験に盲検化のリスクが存在する

臨床試験文書の保存期間が法定保存期間を下回っている

中国の人的遺伝資源を利用して国際共同科学研究を実施しているが、中国のユニットがデータ情報のバックアップをまだ取得していない。

臨床試験実施機関および主要研究者

臨床試験のソースファイルおよびソースデータの紛失、漏洩、記録ミスのリスク

重篤な有害事象の発生による被験者の個人情報の漏洩リスク

臨床試験依頼者または臨床試験実施機関が被験者の個人情報を受け取って、折につけCROに提供する可能性があることをインフォームドコンセントに記載していないこと

臨床試験依頼者、臨床試験実施機関および主要研究者

被験者によるインフォームドコンセントを得ずに、被験者のデータを既に使用したこと

Q4: 製薬企業による臨床試験データの管理にあたるコンプライアンスアドバイスは?

A4: 製薬企業が臨床試験において、上記に関連するデータコンプライアンスリスクがある場合には、その後の医薬品市場販売中におけるコンプライアンスリスクからもたらす影響を減少するため、自社の状況に合わせて、以下のデータコンプライアンス対策を講じることができる。

(1)臨床試験データ安全保障制度の確立
製薬企業は、臨床試験データを定期的に検証し、データ検証制度とそれに対応する改正手続きを確立しなければならない。研究者から製薬企業に対して、重篤な有害事象(臨床試験中に発生した入院しての治療が必要があること、入院期間を延長する必要があること、障害などの状況を指し、以下「SAE」という)を書面で報告された場合、製薬企業は、SAEデータを検証・保存し、SAEの影響を最大限に軽減するための対応策を事前に策定しなければならない。
(2)臨床試験データ管理システムの確立
製薬企業の各部門間および製薬企業と医薬品評価審査機関との間における臨床試験の医薬品安全性データの交流の利便性およびデータの共有をしやすいように、可能な限りデータ標準管理システムを確立しなければならない。臨床試験に係る品質マニュアル、品質記録などのデータファイルの管理をしやすいように、データ管理システムの安定性および信頼性を定期的に検査・維持し、データのトレーサビリティおよびデータへのアクセス権の管理を強化しなければならない。
(3)臨床試験データに関わる要員の管理
製薬企業は、社内規程および、研究機関やCROと締結した契約において、GCPの関係規定に従い、全ての関係者の責任を明確にし、条件が許す場合において、関係要員に対して定期的に研修(守秘義務の研修、標準業務手順の実施研修を含むがこれらに限定されない)、評価および考課を実施しなければならない。研究機関、CROおよび臨床試験コーディネーター(以下「CRC」という)は、既に制定された標準業務手順および臨床試験実施計画書を遵守と実行しなければならない。
また、条件が許す場合において、招聘予定のCROおよびCRCに対してデューデリジェンスを実施し、その過去の業務実行実績やコンプライアンスなどを把握することを推奨する。
(4)臨床試験に係る契約書のリーガルチェックの要点
研究開発またはあらゆる外部委託された臨床試験の契約書作成中において、全ての関係者の主体資格および資質が適法されているか否か、マイルストーン事件や支払いノードがはっきりしているか否か、データおよびプライバシー保護の内容がカバーされているか否か、データの帰属・データの収集・保存および処理などがカバーされているか否かに特に注意を払わなければならない。

終わりに

完全な臨床試験データコンプライアンスシステムを確立することは、被験者を含む臨床試験に関わる全ての関係者の権利と利益を保護するだけでなく、医薬品の研究開発と医薬品の市場販売のプロセスを促進することにもつながる。医療業界の健全な発展を確保するため、中国では医薬品のライフサイクル全体に対する規制が継続的に強化され、臨床試験は医薬品の有効性と安全性を評価する重要なステップであるため、製薬企業は全プロセスにおけるデータコンプライアンス管理の理念を強化し、臨床試験データの真正性と正確性を保証し、法的リスクを積極的に防ぎ、法令遵守と健全な発展を実現しなければならない。

(作者:北京市中倫(上海)法律事務所 邱靖弁護士)

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