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中国の幹細胞業界における主な規制と保護方法の概要について

中国ビジネスレポート 法務
邱靖

邱靖

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2024年10月2日

はじめに
 
再生医療の急速な発展に伴い、幹細胞技術は大きな可能性を秘めた最先端科学として、医学研究と臨床治療の展望を徐々に変えつつある。中国では、幹細胞分野の研究や応用が国内外の科学研究機関や企業から広く注目されているだけでなく、ますます多くの投資者からも注目を集めている。しかし、幹細胞は複雑な倫理的、法的、および技術的な問題に関わっているため、中国では厳しく規制されている。本稿では、中国の幹細胞業界における主な規制方法およびその保護措置について解説し、関連従事者や投資者にとって有益な情報を提供することを目的とする。
 
本文
 
Q1: 幹細胞とは何か?中国で幹細胞ビジネスを行うためには、どのような法律規定を遵守しなければならないか?
 
A1: 「幹細胞製剤の品質管理および臨床研究に関する指導原則(試行)」により、幹細胞とは、異なる分化能を持ち、非分化状態で自己複製能を有する細胞の一種である。幹細胞とそのほかの細胞に比べ、2つの特徴がある。まず、幹細胞は未分化な細胞であり、長期間にわたって自己複製能を有する。次に、特定の条件において、これらは特定の細胞に分化誘導できる。重要再生医学製品である幹細胞は、人体のほぼすべての重要組織と器官の修復、および人類が直面する多くの医学的難題に係る研究に応用される可能性があり、細胞の置換、組織の修復、疾患の治療などにおいて大きな可能性を秘めている。
 
中国の幹細胞に関する規制は、主に以下の規制や文書に反映されている。「幹細胞臨床研究管理弁法(試行)」、および「ヒト由来幹細胞製品の非臨床研究に関する技術指導原則」、「ヒト由来幹細胞製品の薬学的研究および評価に関する技術指導原則(試行)」、「ヒト由来幹細胞およびそれに由来する細胞治療製品の臨床試験に関する技術指導原則(試行)」、「移植片対宿主病(GVHD)の予防および治療のための間葉系幹細胞(MSC)の臨床試験に関する技術指導原則(試行)」などの関連技術指導原則が含まれる。
 
Q2: 中国は、外資系企業が中国での幹細胞の開発や応用の従事を認めるか?
 
A2: 「外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)(2021年版)」により、「ヒトの幹細胞、遺伝子診断、治療技術の開発および応用」は、外国投資者による投資禁止分野となっている。しかし、2024年9月7日に発表された「医療分野の対外開放拡大の試行に関する通知」により、当該通知の発表日以降、中国(北京)自由貿易試験区、中国(上海)自由貿易試験区、中国(広東)自由貿易試験区および海南自由貿易港において、外資企業による人体の幹細胞、遺伝子診断・治療技術の開発および応用を認めるものとし、販売登録および生産に使用することができる。
 
Q3: 中国における幹細胞の開発と応用は、ヒト遺伝資源から規制されているのか?
 
A3: 中国では、ヒト遺伝資源に関わる開発や研究は厳しく規制されている。「ヒト遺伝資源管理条例」により、ヒト遺伝資源にはヒト遺伝資源材料およびヒト遺伝資源情報が含まれ、幹細胞はヒト遺伝資源材料の一種であるため、ヒト遺伝資源に関する法律法規で規制されている。ヒト遺伝資源に関する法規により、外国投資者は、中国国内でヒト遺伝資源を収集・保存したり、中国のヒト遺伝資源を外国に提供したりしてはならず、中国のヒト遺伝資源を利用して科学研究活動を行う必要がある場合は、中国の法律、行政法規および国家の関連規定を遵守し、中国の科学研究機関、高等教育機関、医療機関および企業との協力という形を取らなければならない。
 
Q4: 幹細胞の臨床研究を行うために適合しなければならない条件とは何か?
 
A4: 「幹細胞臨床研究管理弁法(試行)」により、幹細胞臨床研究とは、ヒト自己由来または同種由来の幹細胞を、体外操作後に人体に送り込む(またははめ込む)し、疾患の予防または治療の臨床研究に用いることを指す(体外操作には、幹細胞の体外での分離、精製、培養、拡大、誘導分化、凍結保存および回復などが含まれる)。
 
幹細胞臨床研究を行うためには、以下の条件を満たす必要がある:
 

条件の種類

内容

二重届出

「研究機関届出」および「研究プロジェクト届出」

幹細胞臨床研究機関の資格条件

三級甲等病院、幹細胞臨床研究に相応な診療科目を有すること。

法に基づいて、関連専門の医薬品臨床試験機関としての資格を得ること。

医療、教育および科学研究の総合能力が強く、幹細胞研究分野における重要な研究プロジェクトを担当し、出所が合法的で、比較的安定した十分なプロジェクト研究経費の支援があること。

完全な幹細胞品質管理条件、全面的な幹細胞臨床研究品質管理システムおよび独立した幹細胞臨床研究品質保証部門を有すること。幹細胞製剤品質受権者制度を確立すること。完全な幹細胞製剤の製造および臨床研究の全過程における品質管理とリスク管理手順や関連文書(品質管理マニュアル、臨床研究作業手順書、標準操作規範および試験記録など含む)を有すること。資格を有する内部監査員および内部・外部監査制度を含む幹細胞臨床研究監査システムを有すること。

幹細胞臨床研究のプロジェクトリーダーおよび製剤品質受権者は、機関の主要責任者から正式に授権され、正高級専門技術職称を有し、科学研究において良好な評価を得ていなければならない。主要研究者は、医薬品臨床試験品質管理規範(GCP)の研修を経て、相応な資格を取得する。機関は、幹細胞臨床研究を実施するために十分な資格を有する人材を配置し、幹細胞臨床研究者の研修計画を策定・ 実施し、研修効果をモニタリングしなければならない。

実施される幹細胞臨床研究に適した上級レベルの専門家から構成される学術委員会と倫理委員会を有すること。

幹細胞臨床研究のリスクを未然に防止するための管理メカニズムと、有害事象や有害事件を処理するための措置を講じること。

臨床研究プロジェクトの要件

幹細胞臨床研究は、十分な科学的根拠がなければならない。

疾患の予防または治療効果が既存の手段よりも優れていること、あるいは、未だ有効な治療法がない疾患、生命を脅かし、生存の質に深刻な影響を与える疾患、医療衛生上の重大なニーズに対して用いられること。

 
Q5: 中国現行の規制制度において、幹細胞関連技術はどのように保護されているのか?
 
A5: 中国現行の規制制度において、幹細胞関連技術は主に営業秘密と特許に よって保護されている。注意しなければならないのは、幹細胞関連技術が営業秘密として保護されるためには、「不正競争防止法」に基づく営業秘密の秘密性、価値性および守秘性の要件を満たさなければならない。また、特許に関しては、中国国家知識財産権局が発表した「特許審査ガイドライン(2023年)」により、体内発育を経ず、受精14日以上のヒト胚を用いて幹細胞を分離または取得する発明である場合、ソーシャルモラルに反するという理由で特許権の付与を拒否される。
 
終わりに
 
総じて、中国における幹細胞技術の発展は、厳しい規制環境に直面しているが、その莫大な医学的潜在能力と商業的価値を無視することはできない。当該分野での研究または投資を希望する企業や個人にとって、中国の関連法規を理解し遵守することは極めて重要である。また、適切な知的財産権の保護とコンプライアンス運営により、リスクを回避できるだけでなく、激しい市場競争の中で優位に立つことができる。本稿で紹介した概要が、企業の皆様の意思決定の参考になればと考え、今後も中国の幹細胞分野における規制の動向を注目しながら、関連情報を発信したいと考えている。
 
(作者:北京市中倫(上海)法律事務所 邱靖弁護士)

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