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中国におけるLDT(Laboratory Developed Test)モデルの規制現状およびコンプライアンスの要点について

中国ビジネスレポート 法務
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邱靖

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2026年1月13日

はじめに

精密医療(プレシジョンメディシン)および個別化治療の需要が急増する中、従来の体外診断用医薬品(IVD)の登録承認モデルでは、新興バイオマーカーまたは希少疾患検査に対する臨床の迅速なニーズに対応しきれない場合がある。こうした背景のもと、補完的モデルとして位置付けられるLDT(Laboratory Developed Test:ラボ開発検査)は、中国において政策面での「規制緩和」と規範化が進んでいる。特に2025年以降、パイロット範囲がさらに拡大されるにつれ、LDTは製薬企業と医療機関に新たな協力の機会をもたらしている。本稿では、関連事業者への参考となるよう、中国のLDT事業の規制現状と中核的なコンプライアンス要点を解説する。

本文

Q1: LDTとは何か?また、中国で実施する際の法的根拠は何か?

A1: LDTとは通常、医学検査部門が独自に開発・検証・使用する検査手法を指し、当該医学検査部門の内部でのみ使用され、他の医学検査部門・病院・個人への商品販売は行われない。中国において、LDT事業の合法性の核心的な根拠は「医療機器監督管理条例」第53条に由来する。同条は、「国内に同種製品が上市されていない体外診断用医薬品について、条件に適合する医療機関は、自施設の臨床上の必要性に基づき、独自に研究開発することができ、医師の指導のもとで自施設内において使用することができる」と規定されている。当該規定により、LDTが長らく規制の「グレーゾーン」に置かれていた状況は終焉を迎え、その合法的な地位が確立された。

Q2: 現在、中国におけるLDTのパイロット政策の進捗状況は?

A2: 中国はLDTに対し、「小刻みに迅速に進め、段階的にパイロットを実施する(中国語:小歩快跑、分批試点)」という規制方針を採用している。

● 第1次パイロット(2022年開始): 国家薬品監督管理局と国家衛生健康委員会が共同で通知を発表し、北京(6施設)、上海(4施設)、広東(1施設)の病院でパイロットを実施した。

● 第2次パイロット(2025年開始): 2025年、規制当局は第2次パイロット開始の通知を発表し、パイロット範囲を6省市に拡大し、新たに18医療機関を追加した。さらに、新設の国家医学センターも自動的にパイロット資格を取得することとなる。

Q3: LDT事業を実施するには、満たさなければならない中核的な制限条件は何か?

A3: 法規制およびパイロット文書に基づき、LDT事業の実施にあたっては以下の「4つの基本原則」を厳守する必要がある。

● 「国内に同品種製品が上市されていない」: これはLDTが存在する前提条件である。もし国内で既に登録証を取得した同種のIVD製品が上市されている場合、医療機関は原則として当該LDTプロジェクトの実施を継続してはならず、あるいは規定期間内に撤退しなければならない。

● 「条件に適合する医療機関である」: 現在のパイロット事業は上記の特定病院に限られ、第三者医学検査ラボ(ICL)は現時点で国家レベルのパイロット範囲に直接組み込まれていない。

● 「自施設内での使用」: LDT製品は原則として、当該試薬を研究開発した医療機関内での使用に限られ、他病院への販売または譲渡は認められない。

● 「届出管理」:医療機関は所在地の省級医薬品監督管理部門へ届出を行う必要がある。

Q4: 医薬企業(外資企業を含む)はどのように中国のLDT事業に参画できるか?

A4: 法規では、LDTの主体は「医療機関」と定められているが、医薬企業は以下のモデルを通じて参画することが可能である。

● 委託生産: 「医療機関による体外診断用医薬品の独自研究開発・使用に関するパイロット業務の実施についての通知」に基づき、パイロット病院は相応の生産資格を有する医療機器製造企業にLDT試薬の生産を委託することができる。これは、相応の資格を持つ製薬企業が病院の受託製造業者となることを意味する。

● 「病院と企業の共同設立」モデル:企業と病院が協力してラボを設立し、企業が設備、試薬原料、技術サポートおよび人員研修を提供して病院のLDT研究開発を支援し、最終的に病院を主体として届出および使用を行うモデルである。

● LDTからIVDへの転換: 企業はLDT段階で蓄積された臨床データ(リアルワールドデータ)を利用し、それを後のIVD医療機器登録申請の根拠とすることで、製品の上市プロセスを加速させることができる。

Q5: LDT事業の実施において直面する主なコンプライアンスリスクは何か?

A5: LDT事業の実施においては、主に以下のコンプライアンスリスクがある。

● 商業賄賂リスク: 「病院と企業の共同設立」または試薬原料の調達プロセスにおいて、リベートや利益供与などによる病院の選択への影響は厳禁である。特に近年、医療分野の腐敗防止の情勢が厳しく、通常の学術プロモーションと商業賄賂を厳格に区別する必要がある 。

● 広告宣伝のコンプライアンスリスク: LDT製品は医療機器登録証を取得していないため、通常「医療機器」の名目で広告宣伝を行うことはできない。企業がマーケティングを行う際は、ブランド広告(製品情報を直接紹介しない)の形式による宣伝を検討し、具体的な検査性能指標に言及しないよう注意するとともに、「患者事例」、「検出成功」、「保険金請求/がん基金」など、治療効果を保証しているとみなされる手法の使用は避けるべきである。さらに、ソーシャルメディア(小紅書「RED」、抖音「TikTok」など)のKOLを活用した有償の「種草(購買意欲を植え付けること)」は比較的センシティブであり、医療広告の違法掲載またはイメージキャラクターの違法使用と認定されるリスクがある。

● 製品品質責任: 「自社開発・自社使用」であっても、医療機関はLDT製品の品質安全について主体的な責任を負う。有害事象が発生した場合、相応の責任を負う必要がある。

終わりに

総じて言えば、中国のLDT規制は「規範化された開放」へ向かう重要な時期にある。先進的な検査技術や生産能力を持つ日系企業およびその他の外資企業にとって、パイロット病院との技術提携は、市場に参入する有効な手段となる可能性がある。今後、第2次パイロットの実施に伴い、規制当局はより詳細な技術指導原則を打ち出すと予想される。関連企業は、各省・市の薬品監督管理局が発表する届出リストおよび規制動向を注視し、自身の実情に合わせて「LDT+IVD」の二本立て発展戦略を事前に構築することを推奨する。

(作者:北京市中倫(上海)法律事務所 邱靖弁護士)

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