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医療機器の寄贈に係るコンプライアンスリスクの解読および実務上のアドバイス

中国ビジネスレポート 法務
邱靖

邱靖

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2024年11月28日

はじめに

医療機器の寄贈とは、製薬企業、組織や個人が合法的に所有する医療機器を、公益を目的として、医療機関、基金会などに自発的に無償で提供することを指す。このような寄贈は、マーケティング活動とは異なる非営利性を強調し、医療衛生事業を支援し、医療サービスのレベルを向上させ、公衆の健康の権益を保護することを目的としている。実施中においては、関連法規を厳格に遵守し、寄贈行為がオープンで透明性が高く、法令に準拠していることを保証しなければならない。本稿では、製薬企業が医療機器の寄贈を実施する際のコンプライアンスの要点と、それに対応する規制要件および対策を紹介する。

本文

Q1: 医療機器の寄贈の定義および法的要件とは?

A1: 「衛生・計画生育機関による公益事業寄贈の受入に関する管理弁法(試行)」(以下「管理弁法」という)第3条の寄贈に関する明確な定義により、寄贈とは国内外の自然人、法人およびその他の組織が自発的に無償で衛生・計画生育機関に医薬品、医療機器を提供する形での公益支援および援助のことを指す。関連法律規定により、医療機器の寄贈は以下の要件を満たさなければならない。

1. 公益の目的が明確で、非営利である
医療機器の寄贈の基本的な属性は、その公益性と非営利にあり、不適切な条件を付けてはならない。「管理弁法」第5条は、衛生・計画生育機関が受け入れることができる寄贈の範囲を明記し、医療機関の患者に使われる医療救助費用の軽減・免除、公衆の健康などに使われる公共衛生サービスと健康教育、衛生・計画生育分野に使われる学術活動、衛生・計画生育分野に使われる科学研究などが含まれる。

2. 自主原則
寄贈行為は、自発性の原則を十分に反映する必要があり、製薬会社が主動的に寄贈を発起するか、または受贈者が要求を出すかを問わず、寄贈の自発性と無償性を確保しなければならない。特に受贈者が主動的に寄贈を要求する場合、双方は変相した商業賄賂リスクの可能性を厳格に回避し、寄贈行為の純粋性を確保しなければならない。

3. 受贈者の資質の適法
「公益事業寄贈法」の規定により、医療機器の合法的な受贈者は、基金会・慈善団体・公立教育機関・科学研究機関および公立医療衛生機関などの公益性社会団体や非営利団体でなければならない。

Q2: 実務上、医療機器寄贈の合法性はどのように定義されるか。

A2: 2024年7月3日、中国共産党中央紀律検査委員会は、「医療機器の「寄贈」を受入後の指向購買に係るサービスがどのように判定するか」と題する記事(以下「記事」という」)を発表し、病院および診療科の関係責任者が医療機器の「寄贈」を受入後の指向購買に係るサービスがどのように判定するかについての意見分析を行った。記事および「管理弁法」の関係規定を参考し、寄贈の合法性を判断する基準は主に以下の3点が含まれる。

1. 寄贈時には不適切な条件を付されているか
記事において、企業と病院の消耗品取引の抱き合わせ行為は「不適切な条件を付す」ことに該当し、その「不適切」な存在は主に、「管理弁法」第6条の規定である「医療衛生機関が受け入れる寄贈は、商業的営利活動に関与してはならず、経済的利益や知的財産権、科学的研究成果、業界データおよび情報など寄贈に関係する権利や主張を付されないものとする。」に違反したからである。

2. 寄贈行為は商業的営利を図ることに関与するか
実務上、「寄贈」と「商業的営利を図ること」の関係を判断することが難しく、当該記事は、具体的な判断基準として、「寄贈」と「具体的な購買行為」の間に因果関係がある場合は、商業賄賂の疑いがあると挙げている。また、因果関係を有しない初歩的な判断方法として、例えば、寄贈の受け先が通常の購買ニーズに基づいて購買を実施し、購買が必要な承認および一般入札の手続を履行し、通常の市場競争を通じて寄贈企業がサプライヤーとなる場合などを挙げている。

3. 寄贈手続きが完備されているか
「公益事業寄贈法」の第12条や第16条、「管理弁法」の第16条や第17条、第28条などの規定により、公立医療機関は、寄贈企業と寄贈契約を締結し、寄贈される機器の数量、価値、用途などを明確にしなければならない。医療機関が寄贈を受け入れる場合、正式な財務手続きを行い、寄贈先の企業に対して合法的かつ有効な領収書を発行し、寄贈を受けた財産を登録し、財務帳簿に如実に記録するなどしなければならない。

Q3: 実務上、寄贈行為が商業的営利を図るか否かをどのように判断するか。

A3::「中華人民共和国不正競争防止法」第7条により、事業者が取引機会または競争上の優位性を得るために財物またはその他の手段を用いて賄賂を行うことを禁止する。ここでいう「競争上の優位性」には、現実の取引だけでなく、製薬企業が財物を通じて病院と関係を築き、病院との関係を利用して将来の購買活動で優先権を得ることも含まれる。従って、病院と取引関係がない企業でも、以下の要素とにらみ合せ、商業的営利を得る行為に該当するか否かを総合的に判断する必要がある。

1. 受贈者(または関係者)は企業と潜在的な顧客関係が存在されているか
実務上、多くの場合において、受贈者は企業との購買関係がない研究または学術機構であり、但し学術機構は附属病院を設立することができ、科学研究者が医療機関の医師を兼務したりすることもあるため、学術機関と製薬企業間の不当取引が罰則の対象となるケースもある。従って、学術機関への寄贈が絶対安全というわけではなく、規制当局は、製薬企業が受贈者と/または関係者との関係について、実質的な審査を行うことがある。

2. 購買需要量が正常であるか否か
実務上、購買需要量の判断は、時期、数量、購入製品などに基づいて総合的に行われることがある。購買量が通常の消費量よりはるかに超える場合、または購買行為の発生時期が寄贈時期と近すぎる場合、商業賄賂として認定されるリスクが増加される。

3. 購買入札がコンプライアンス遵守されているか否か
製薬会社が通常の入札を通じて、自身の市場における競争優位性でサプライヤーとなった場合、その寄贈行為が商業賄賂として認定されるリスクは低くなる。しかし、医療機関が入札を行わなかったり、価格比較を行わなかったり、若しくは明らかに製品または価格の優位性がないにも関わらず企業が落札した場合、その寄贈行為には疑問がある。

終わりに

医療機器の寄贈は常に市場からの関心が高いが、新たなビジネスモデルに適応するためには、細則を明確化し、コンプライアンス基準を適時に更新しなければならない。規制がますます厳しくなることにつれ、市場競争がより公正になる中、企業は寄贈前にコンプライアンス評価を実施し、日々のコンプライアンス管理を強化し、対象的なコンプライアンス研修を実施し、社外の法的要件を遵守しながら、社内のプロセスを改善し、事態を未然に防ぐ必要がある。

(作者:北京市中倫(上海)法律事務所 邱靖弁護士)

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