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「医薬企業による商業賄賂リスク防止のコンプライアンスガイドライン(意見募集稿)」の要点解読について

中国ビジネスレポート 法務
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邱靖

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2025年1月30日

はじめに

2024年10月11日、国家市場監督管理総局は、「医薬企業による商業賄賂リスク防止のコンプライアンスガイドライン(意見募集案)」(以下「ガイドライン」という)を発表した。 「ガイドライン」は、医薬企業が商業賄賂防止活動を実施するための総合的で詳細かつ実行可能な指導意見を提供するものである。「ガイドライン」の最終稿はまだ発表されていませんが、本ガイドラインの内容は、現在の規制動向を一定程度反映しており、参考となるものである。以下では、関係の実務担当者の参考となるよう、ガイドラインのポイントについて解読する。

本文

Q1: 「ガイドライン」における規制のポイントとは?

A1: 「ガイドライン」第2条では、医薬企業の商業賄賂コンプライアンスの全体要求事項について特別に記載している。そのうち、製薬分野における商業賄賂の本質特徴を最も反映できるのは当該条項の後半の「医薬企業は、……医療機関および医療従事者の一般的な診療行為を妨げてはならない」である。「ガイドライン」では、「一般的な診療行為」については規定されていないが、字面の意味から、医療機関および医療従事者が、専門家として、患者に責任を持つ姿勢で、影響を受けることなく、関連診療規範に従って、診療行為を単独で実施することと理解できる。実務上、ある行為が商業賄賂の疑いがあるかどうかは、当該基準を採用して初歩的な判断を下すことができ、すなわち、当該行為が、医療機関および医療従事者の単独な診療行為に影響を与える目的または効果を持つか、または持つ可能性があるかどうか。

Q2: 「ガイドライン」は強制的なものなのか?

A2: 「ガイドライン」はガイダンス文書であり、強制的なものではない。「ガイドライン」第3条に規定されているように、「本ガイドラインは、中華人民共和国の国内において医薬品製品の研究開発、製造、流通などに従事される医薬企業および関連第三者に対して参考となるものを提供することを目的とする」ものである。

しかし、市場監督管理総局が発表した『「医薬企業による商業賄賂リスク防止のコンプライアンスガイドライン(意見募集案)」に関する起草説明』(以下「起草説明」という)により、その制定依拠には、「国内商業賄賂防止法規」および「国内の行政法執行の実践」などがある。言い換えれば、「ガイドライン」は強制的なものではないが、上位法の強制的な要件と法執行実務における規制部門の法執行意見を反映している。従って、「ガイドライン」の関連規定の遵守は、商業賄賂の法規を実際に遵守し、ビジネス慣行が規制要件に準拠していることを確保するために有用な措置である。

Q3: 「ガイドライン」の適用対象は?

A3::「ガイドライン」は、適用対象について詳細に規定し、異なる規模の企業に対する適用程度についても区別し、企業規模とコンプライアンスコストの関係を十分に考慮している。「ガイドライン」は、主に中国国内で医薬品の研究開発、製造、流通などに従事される医薬企業および関連第三者に適用され、中国にある一般医薬品経営企業のほか、国外医薬品上市許可保有者が指定する国内企業法人、輸入医療機器登録者(届出者)が指定する国内企業法人なども含まれる。大中規模企業および小規模企業については、それぞれ「本ガイドラインに基づいて、完全な商業賄賂リスク防止のコンプライアンス管理体制を建立すること」および「本ガイドラインを参考に、商業賄賂リスクに対するコンプライアンス管理作業を実施すること」を奨励することが適用範囲とされている。

Q4: 「ガイドライン」が 医薬企業のコンプライアンス管理体制建立に対する具体的な要件とは?

A4::「ガイドライン」第 2 章は、医薬企業による商業賄賂リスク防止のコンプライアンス管理体制の建立に対し、提案や要求事項を打ち出し、主に以下の方面が含まれる。

● コンプライアンスの意識と支援:「ガイドライン」は、医薬企業の最高管理層が身をもって模範を示し、商業賄賂リスク防止のコンプライアンス管理体制の建立を積極的に推進し、組織機構およびリソース配分などの面で十分な支援を提供することを提唱している。
● コンプライアンス組織体制:「ガイドライン」は、医薬企業がその経営規模および事業モデルに見合った商業賄賂リスク防止のコンプライアンス管理体制を建立し、コンプライアンス管理要員を配置することを求めている。また、完全なコンプライアンス管理と法務管理、財務監査、内部統制、リスク管理などとの連携メカニズムを建立し、統括・連携を強化し、管理効能を向上させる。
● コンプライアンス制度の建立:「ガイドライン」は、医薬企業に対し、コンプライアンスに関する要求事項を速やかに規則制度または行動規範に転換し、商業賄賂リスク防止のコンプライアンス管理制度を建立することを求めている。
● コンプライアンス体制の運行:「ガイドライン」は、医薬企業が商業賄賂リスク防止という目標の要求事項に従って、健全なコンプライアンス運行メカニズムを建立し、体系化した運行を通じて、商業賄賂リスクを有効な予防と対応することが求められている。

Q5: 「ガイドライン」は、医薬企業の事業活動におけるどのような具体的なシナリオを想定してリスク防止を提案しているか。
A5::「ガイドライン」は、医薬企業の一般的な9つのビジネスシナリオについて、医薬企業に対して具体的な商業賄賂に関するリスク防止要件と提案を提示している。

シナリオ 要件と提案
学術訪問交流 医薬代表や医療機器プロモーション担当者の学術プロモーション活動を規制し、営業担当者の学術訪問への参加を禁止するとともに、学術訪問交流に関する注意事項や予防しなければならない潜在的リスクを明確にする。
接待 医薬企業に、接待の範囲と基準を明確に定めること、接待基準が接待対象者に適用される各種管理規定に合致していること、費用が妥当かつ節度あるものであることを確保することが求められている。
コンサルティングサービス 医療従事者を雇用してコンサルティングサービスを提供する場合、医薬企業は、雇用回数や費用総額を合理的に制限し、サービス内容や結果などを如実に記録しなければならない。
業務委託サービス 契約上に合意された業務委託料の基準または実際に支払われる価格が、適正な市場価格から著しく乖離していないか注意し、適正な参入手続きなどを経ずに業務委託先と直接契約を締結し、業務を展開されることなどを避ける。
値引、割引およびコミッション 値引やコミッションが契約上の依拠を有し、如実に記帳されることを確保し、内部制定の値引政策の部門と具体的な執行部門との間で適切な職責分離などが行われていないことを避ける。
寄付、協賛、援助 医療衛生機関またはその内設部門、医療従事者個人に対して直接協賛を行ったり、または第三者を介して協賛の受け先を指定したりすることを避けなければならず、協賛の名目を仮借して医療従事者による医薬製品の処方箋の発行に影響を与えることを防ぐ。
医療設備の無償提供 医療設備の無償提供により医療従事者の意思決定に影響を与えることを避け、設備提供の合理性や正当性を確保する。
臨床研究 研究者、臨床試験機関などの参与者との間で契約を締結し、費用明細、支払い時期や技術的要件などを含む各当事者の責任を明確にし、関係部門による臨床試験および研究に対する管理要件などを遵守しなければならない。
小売の最末端販売 小売の最末端に不当な利益を提供することにより、小売の最末端販売に影響を与えることを避ける。

終わりに

総じて、「ガイドライン」は、医薬企業が潜在的な商業賄賂リスクをよりよく特定し、対処するための明確で運用可能なコンプライアンスガイドラインを提供するものである。「ガイドライン」の最終版はまだ発行されていないが、その内容は現在の規制動向を反映している。したがって、中国にある医薬企業にとって、当該「ガイドライン」の内容を参照し、自社の実情に照らしてコンプライアンス管理体制を改善することにより、その事業活動のコンプライアンスを確保することが重要である。当該「ガイドライン」の提案や要求事項を積極的に遵守することにより、中国にある医薬企業は、商業賄賂リスクを有効に予防することができるだけでなく、自身のコンプライアンス管理レベルを向上させることもできる。

(作者:北京市中倫(上海)法律事務所 邱靖弁護士)

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