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「会社登記管理実施弁法」の注目すべきポイント

中国ビジネスレポート 法務
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沈偉良

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2025年7月8日

概要:

2024年12月20日、国家市場監督管理総局が「会社登記管理実施弁法」(以下「『実施弁法』」という)を公布し、同「実施弁法」は2025年2月10日から施行されている。

今回の「実施弁法」は、新「会社法」(2024年7月1日から施行)の関連規定として、会社登記手続きの実務上の問題点を踏まえてさらに規定している。下記において、「実施弁法」の主な内容を簡潔に説明する。

 本文:

注目点その一:会社登録資本金の払込みに対する管理要求を詳細化

1.出資期限の調整

「実施弁法」 根拠となる条項
第五条:有限責任会社の株主による出資金払込の引き受けは、誠実信用の原則に従い、全株主が払込みを引き受けた出資額は、株主が会社定款の規定に基づき、会社設立の日から五年以内に全額払い込まなければならない。株式有限会社の発起人は、会社設立までに、自身が払込を引受けた株式の全額を払い込まなければならない。……

 

第七条:有限責任会社が登録資本金を増加する場合、株主が払込みを引き受けた資本金の増加分の出資は、会社定款の規定に従い、登録資本金の変更登記の日から五年以内に全額払い込まなければならない。

株式有限会社が登録資本金を増加するために、新株を発行する場合、会社の株主が株式の増加分を全額払い込んだ後、登録資本金変更登記手続きを行わなければならない。

 

第八条:2024年6月30日までに登記し、設立された有限責任会社は、残りの払込引受出資期限が2027年7月1日から5年を超えている場合、2027年6月30日までに、残りの払込引受出資期限を5年以内へと調整し、且つそれを会社の定款に記載するものとし、株主は調整後の払込引受出資期限までに引受出資分を全額払い込まなければならない。残りの払込引受出資期限が2027年7月1日から五年未満の場合、又はすでに登録資本金を全額払い込んでいる場合、払込引受出資期限の調整は不要である。

2024年6月30日までに登記し、設立された株式有限会社の発起人又は株主は、2027年6月30日までに、自身が払込を引受けた株式の全額を払い込まなければならない。

新「会社法」

第四十七条:有限責任会社の登録資本金は、会社登記機関にて登記した、全株主が払込みを引き受けた出資額とする。全株主が払込みを引き受けた出資額は、株主が会社定款の規定に基づき、会社設立の日から五年以内に全額払い込まなければならない。

法律、行政法規及び国務院の決定により、有限責任会社の登録資本金の払込み、登録資本金の最低額、株主の出資期限について別段の規定がある場合、その規定に従う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「『中華人民共和国会社法』登録資本金登記管理制度の実施に関する国務院による規定」(以下、「『登録資本金規定』」という)

第二条:2024年6月30日までに登記し、設立された会社は、有限責任会社の残りの払込引受出資期限が2027年7月1日から五年を超えている場合、2027年6月30日までに、残りの払込引受出資期限を五年以内へと調整し、且つそれを会社の定款に記載するものとし、株主は調整後の払込引受出資期限までに引受出資分を全額払い込まなければならない。株式有限会社の発起人は2027年6月30日までに、自身が払込を引受けた株式の全額を払い込まなければならない。……

筆者分析
●  「実施弁法」における、出資期限に関する要求は、新「会社法」「登録資本金規定」の規定を踏襲したものである。新「会社法」が施行されて以来、各地の市場監督管理部門において、出資期限に係る見直し作業を始めている。

●  なお、出資期限が2032年6月30日までに満了する会社については、「実施弁法」の規定に基づくと、出資期限を調整する必要がないものの、調整を禁止するものでもない。したがって、該当する会社は、自社の実情に応じて、出資期限を2032年6月30日まで延長することも可能である。

2.出資方式の多様化

「実施弁法」 根拠となる条項
第六条:株主は、金銭をもって出資することができ、また、現物、知的財産権、土地使用権、持分、債権などの金銭によって評価することができ、且つ法に従い、譲渡することのできる金銭以外の財産を価値評価して出資することもできる。法律にデータ、ネット上のバーチャル財産の権利帰属などについて規定がある場合、株主は規定に従い、データ、ネット上のバーチャル財産を価値評価して出資することができる。ただし、法律、行政法規の規定により出資としてはならない財産についてはこの限りではない。

出資とする金銭以外の財産については、法に依拠して価値評価・査定を行い、財産を確認するものとし、査定額を高くし、又は低くしてはならない。

新「会社法」

第四十八条:株主は、金銭をもって出資することができ、また、現物、知的財産権、土地使用権、持分、債権などの金銭によって評価することができ、且つ法に従い、譲渡することのできる金銭以外の財産を価値評価して出資することもできる。ただし、法律、行政法規の規定により出資としてはならない財産についてはこの限りではない。

出資とする金銭以外の財産については、価値評価・査定を行い、財産を確認するものとし、査定額を高くし、又は低くしてはならない。法律、行政法規において価値評価・査定に関する規定がある場合、その規定に従う。

筆者分析
●  実践では、データやバーチャル資産などを価値評価して出資するケース(例えば、医療データベース、ニューメディアのアカウントなどを出資とする)が次々と発生している。「実施弁法」第六条において、こういった時代の変化に対応すべく、企業の資金調達手段を追加している。

●  データ、バーチャル資産などを出資する場合に充足すべき前提条件:①出資対象となるデータ、バーチャル財産の所有権は明確であること(例えば、データ資産が登記されていること)。②出資対象となるデータ、バーチャル財産は法に依拠し、譲渡可能であること(例えば、プライバシーに係るデータベースの場合、その譲渡には制限がかかる)。③出資対象となるデータ、バーチャル財産は、評価・値踏み可能であること。

3.出資金払込の情報公示義務

「実施弁法」 根拠となる条項
第十一条:有限責任会社の株主が引き受けた、及び払込み済みの出資額、出資方式及び出資日、株式有限会社の発起人が引き受けた株式数などに関する情報は、発生した日から20業務日以内に、国家企業信用情報公示システムを通じて、社会に向けて公示しなければならない。

会社は、前項に基づき公示した情報が真実、正確、完全なものであることを確保しなければならない。

「登録資本金規定」

第四条:会社は、株主が引き受けた、及び払込み済みの出資額、出資方式、出資期限を調整し、又は発起人が引き受けた株式数などを調整する場合、当該状況の発生した日から20業務日以内に、国家企業信用情報公示システムを通じて、社会に向けて公示しなければならない。

会社は、前項に基づき公示した情報が真実、正確、完全なものであることを確保しなければならない。

筆者分析
●  「実施弁法」における出資金の払込みに関する情報公示義務の要求は、「登録資本金規定」の規定を引き継いだものである。

●  これまでの実務において、市場監督管理部門は通常、登録資本金、株主などの登記事項の変更、及び年度報告書の提出時に、登録資本金払込情報の記入を求める運用になっていたため、若干時間差が生じていた。一方、「実施弁法」では、出資に関する情報に変更が生じた日から20業務日以内に速やかに公示する必要があることをさらに強調している。これにより、企業の情報公示に対する要求がさらに厳しくなっており、また第三者が、企業の資格・信用状況を随時、照会しやすくなっている。

注目点その二:監査委員会、連絡人などの届出要求を詳細化

「実施弁法」 根拠となる条項
第十三条:監査委員会を設置して、監事会の職権を行使させる会社は、董事届出手続きを行う際に、監査委員会は、董事によって構成されることに関する情報を明記しなければならない。

 

 

 

 

 

第十四条:会社が設立登記を行うにあたって、法に依拠して、登記に関する連絡人の届出を行い、登記に関する連絡人の電話番号、電子メールなど普段使用している連絡方法を提供し、会社と会社登記機関との間の意思疎通、連絡が円滑に行われるよう、登記に関する連絡人を委任しなければならない。

登記に関する連絡人は、会社の法定代表者、董事、監事、高級管理職者、株主、従業員などが務めることができる。

登記に関する連絡人を変更する場合、会社は、変更の日から三十日以内に、会社登記機関にて届出手続きを行わなければならない。

 

第十五条:会社の董事、監事、高級管理職者が「中華人民共和国会社法」第一百七十八条に定める状況のいずれかに該当する場合、会社は法に依拠して、その職務から解除するものとし、原則として、それを知る又は知るべき日から三十日を超えてはならず、その職務を解除した日から三十日以内に、法に依拠して登記機関にて届出手続きを行わなければならない。

新「会社法」

第六十九条:有限責任会社は、会社定款の規定に従い、監事会又は監事を設けずに、董事会において董事から構成される監査委員会を設置し、本法に定める監事会の職権を行使させることができる。会社董事会の構成員の中の従業員代表は、監査委員会の構成員になることができる。

 

市場主体登記管理条例

第九条:市場主体の下記事項は、登記機関に届け出なければならない。……

(七)市場主体の登記に関する連絡人、外商投資企業の法律文書送達の受領者。……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新「会社法」

第一百七十八条:次のいずれかに該当する場合、会社の董事、監事、高級管理職者を務めてはならない。

……

董事、監事、高級管理職者が就任期間において、本条第一項に記載する状況があった場合、会社はその者の職務を解除しなければならない。

筆者分析
●  新「会社法」第六十九条、第一百七十八条の施行に合わせ、「実施弁法」では、監査委員会、董事、監事、高級管理職者がその資格を喪失した場合の届出要求をさらに明確にした。

●  また、「実施弁法」では、連絡人に関する届出要求をさらに強調している。これにより、今後、市場監督管理部門は、新「会社法」及びその関連政策の実施を推進するにあたり、企業との連絡・意思疎通を強化していこうという姿勢がうかがえる。

●  上記した届出要求は、新たに追加されたもの、又はこれまでは厳密に規定を守った運営がなされていなかった現状を踏まえて、今回、「実施弁法」においてさらに詳細化されたものも含まれている。企業においては、これら届出事項に注意を払っておく必要がある。

注目点その三:債務の支払いを免れるために財産を移転する、若しくは行政処罰から免れることを証明できる証拠がある場合、登記手続きが凍結されることになる

「実施弁法」 根拠となる条項
第二十条:申請者が債務の支払いを免れるために財産を移転する、若しくは行政処罰から免れることを目的として、会社の法人としての独立した地位及び株主の有限責任を濫用しようとしていることは明らかであり、法定代表者、株主、登録資本金を変更又は会社登記を抹消するなどによって、社会公共の利益に危害をもたらす可能性があることを証明できる証拠がある場合、会社登記機関は法に依拠し、当該登記又は届出手続きを受理しないものとし、すでに受理している場合には、取り消すものとする。 新「会社法」

第二十三条:会社の株主は、債務の支払いを免れるために、会社の法人としての独立した地位及び株主の有限責任を濫用し、会社の債権者の利益を著しく害した場合、会社の債務につき、連帯責任を負わなければならない。

株主が、自ら支配している2社以上の会社を利用し、前項に定める行為を実施した場合、各会社は、いずれの会社の債務につき、連帯責任を負わなければならない。

1名のみの株主を有する会社において、株主は会社の財産が株主自身の財産から独立していることを証明できない場合、会社の債務につき、連帯責任を負わなければならない。

筆者分析
●  本条を定めた目的は、減資、抹消、法定代表者若しくは株主の変更を行うことを通じて債務の支払いを免れるといった悪質な行為を規制するためであると考えられる。

●  企業による当該変更の申請に対して、今後、市場監督管理部門が変更登記の審査において、「証拠がある」ことを理由に、係る変更手続きを拒否する可能性がある。

●  本条では、債権者保護の観点から、債務の支払いを免れることを目的とした変更登記手続きの悪用を防ぐための方法として、新たな解決策が示されている。市場監督管理部門からどのような証拠(例えば、発効済みの司法文書など)を求められるかは不明であるものの、少なくとも市場監督管理部門との交渉が可能になっている。

注目点その四:市場監督管理部門が公示方式により、法定代表者、董事、監事、高級管理職者などの情報を消去することができる

「実施弁法」 根拠となる条項
第二十三条:会社が期日通りに、法に依拠し、発効している法律文書に明記された登記届出事項に係る法定義務を履行しなかったことにより、人民法院が会社登記機関に対し、法定代表者、董事、監事、高級管理職者、株主、分公司の責任者などの情報を消去するよう求める旨の執行協力の通知書を送達した場合、会社登記機関は、法に依拠し、国家企業信用情報公示システムを通じて、消去した登記情報を社会に向けて公示しなければならない。 新「会社法」

第十条:会社の法定代表者は会社定款の規定に従い、会社を代表して会社の事務を執行する董事又は総経理が担当する。

法定代表者を担当する董事又は総経理が辞任した場合、同時に法定代表者を辞任したとみなされる。

法定代表者が辞任した場合、会社は法定代表者が辞任した日から三十日以内に新任の法定代表者を決めなければならない。

筆者分析
●  これまでに、法定代表者などの変更に伴う登記情報からの消去を請求する事案においては、会社内部の決議を経ていないことなどを理由に、訴訟請求を却下する旨の判決が下されることが多かった。たとえ勝訴判決を獲得したとしても、後継者が未確定のままで、市場監督管理部門において、変更登記手続きを行うことはできないために、その判決内容を実現させることは難しい状況にあった。

●  新「会社法」施行後、新「会社法」の第十条は、ある程度において、法定代表者などの変更に伴う登記情報からの消去を強行する上での法的根拠になり得るものであったが、今回の「実施弁法」第二十三条においては、市場監督管理部門における上記運用上の問題を解決する観点から、さらに詳細化している。

終わりに:

「実施弁法」は、新「会社法」及びそれに関連する「登録資本金規定」などを踏まえ、市場監督管理部門における手続きを切り口に、新「会社法」をさらに着実に実施するうえでの手引きとなることが期待される。

(作者:里兆法律事務所 沈偉良、林曉萍)

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