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今のアジアと日本の高度成長期を重ねるな

中国ビジネスレポート マーケティング
森辺 一樹

森辺 一樹

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2013年2月26日

 今でこそ少なくはなったが、消費材メーカーの方々とお話をすると、今のアジアの経済成長を、日本の高度成長期と重ねる方がしばしばいる。この考え方は、アジア市場獲得を目的とした戦略を構築する際に非常に危険だ。

 且つて、日本の高度成長期の時代、三種の神器などと言われ、テレビや冷蔵庫、洗濯機などの家電製品を消費者が挙って求めた。メーカーは皆、工場をフル稼働させ、大量生産で市場の要望に応えていった。
 今のアジアでも同じことが起こっている。人々の生活が急激に豊かになり、中間層がどんどん増えている。今、アジアには、約9億人の中間層が存在する。それは今後も更に拡大し、テレビや冷蔵庫、洗濯機を求めていくだろう。

 しかし、日本の高度成長期の時代と大きく異なるのは、テレビや冷蔵庫、洗濯機は、既に限られたメーカーしか製造できない新しい技術ではないということと、アジアは日本のようは一億総庶民・総同種の特殊市場ではないということだ。

 日本の高度成長期の時代、メーカーは、テレビや冷蔵庫、洗濯機という新しい技術が生んだ、限られたメーカーのみが製造できた製品で、人々のライフスタイル(生活様式)そのものを変えようとした。この時代は、家電を生産できるメーカーが限られていたため、ライフスタイルが大きく変わる、向上することさえ消費者が望めば、プロダクトアウト(市場のニーズを意識せず、企業側の意向や技術を重視して製品やサービスを開発し、それらを市場に投入する考え方。)で十分市場を取れた。
 
 しかし、今のアジア市場において、テレビや冷蔵庫、洗濯機は、人々のライフスタイルを大きく向上させるための道具には変わりがないが、既に新しい技術ではない。その為、それらを製造できるメーカーは、韓国しかり、中国しかり無数に存在する。また、例え、同一国の人でも、日本のような同じ生活スタイルやレベル、文化や言語を共有している市場ではない。この様な市場では、現地ニーズに合わせたマーケットイン(企業が製品や商品、サービスの開発や販売に際して、市場ニーズをくみ取った上でそれらを取り込んでいく考え方。)の考え方が必要となる。

 それを無視してプロダクトアウトに頼ろうとすると、より品質の高いテレビ、より機能性の高い冷蔵庫と品質や技術力で勝負しようとしてしまい、それが価格に影響を及ぼす。そして結局は、アジア市場にそぐわない製品投入で市場から淘汰されてしまうのだ。アジアの消費者は高すぎる品質も高すぎる技術も求めていない。日本の消費材メーカーのアジアでの敗因の多くはここにある。

 昨今のアジアの経済成長は、決して日本の経済成長期と重ねてはならない。市場環境と競争環境、そして消費者特性が且つての日本とは異なることを確りと認識しなければならないのだ。

(2012年4月 筆者執筆)

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