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グローバル・アライアンス (少数出資の例)

中国ビジネスレポート マーケティング
牛田 賢

牛田 賢

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2013年5月13日

■前提
アライアンス<※注1>を実行する際には、下記①~③を確認する必要がある。
①戦略的整合性
自社の基本戦略に基づいて、何のために、どのような経営資源を、どのように獲得(若しくは提供)するかを明確にする。
→必要とする経営資源について、移動・模倣・代替が非常に困難である場合、アライアンスを選択する。
 
②「企業文化、目指す成果」共有と経営トップのコミットメント
パートナー間で「企業文化、目指す成果」を共有でき、経営トップに長期的な信頼関係を構築する強い意志があること。
→信頼、成果に対する考え方は、各国文化の中で同じではないため注意が必要である。
 
③経営資源共有と実行力
価値ある技術、ノウハウ、ネットワーク、販売チャネルなどに双方がアクセスして活用できること。
→双方のアクセスを実現するための体制を作り、効率的に推進できること。
 <※注1:説明>
アライアンスとは「企業間における経営資源の交換」であり、下記3条件が同時に満たされることである。
・複数の企業が独立したままの状態で合意された目的を追求するために結びつくこと
・パートナー企業がその成果を分け合い、かつその運営に対してのコントロールを行うこと
・パートナー企業がその重要な戦略的分野において、継続的な寄与を行うこと
→環境変化に柔軟に対応し易い。経営資源を「所有する」のではなく、「活用する」ものとして捉える。

■グローバル・アライアンス(日中提携)の具体例
「社会インフラ・公共サービス」に関する分野において、中国企業が日本の先進的なノウハウ・技術を欲しがっているカテゴリーが多々ある。
これらのカテゴリーでリーダーを目指す中国企業のいくつかは、競合他社(=他の中国企業)に打ち勝つべく、欧米及び日本のビジネスモデルを研究している。
一方で、ノウハウ・技術は一朝一夕に身につけることができるものではなく、試行錯誤を繰り返しているケースも多い。
また、これらのカテゴリーは、外資企業(日本企業)が単独で参入することは実質的に不可能であるため、日本企業は中国企業とのアライアンスにより成果を狙うのが得策である。

以下、日本企業による少数出資<※注2>の具体例
1999年創業の中国企業S社は、公共サービス関連の業界で大手の1社ではあるが、最大手企業N社とは売上で2倍超の開きがある。業界内には、数百社の中小・零細企業が存在し、圧倒的な大手企業は存在しない。
この業界は、黎明期から成長期へと移行しつつあり、今後は異業種の新規参入、及び業界内での淘汰が進むことが予想されている。
S社は、日本企業(S社と同業)のノウハウ・技術を得て、最大手N社及び他の競合他社に打ち勝ちたいと考えていた。
また、同時期にS社の同業である日本企業K社(日本市場における大手の1社)は、単独で中国市場に進出し成功を勝ち得ることは大きな困難を伴うため、信頼できる現地パートナー企業(中国市場での同業:特に営業力が強い企業)とのアライアンスによって、中国市場へ進出したいと考えていた。
こうした状況下、S社とK社のトップ会談が数回実施され、「企業文化・目指す成果」を共有した後、K社がS社に少数出資することを基本合意した。(K社はノウハウ・技術などをS社へ提供する。K社は配当により、リターンを得る)

ノウハウ・技術の提供は、人が人に対して行うものであり、短期間で移転できるものではない。
日本側は、中国マーケット、中国的な考え・文化・習慣を理解しつつ(目線を合わせて)、長期的な信頼関係の構築を目指す必要がある。
中国側は、日本的な考え・文化・習慣に理解を示し、ノウハウ・技術を吸収しつつも、中国マーケットで受入れられる「形」に修正する必要がある。
ビジネススキームの合意は比較的短い期間で実現可能であるものの、「真の成功」を勝ち得るためには、5~10年程度の長い時間がかかるものと考える。

<※注2:説明>

少数出資を実施する際は、双方の長期的かつ強いコミットメントが必要である。
中国側パートナーによるノウハウ・技術の不適切な盗用などを抑止することになり、安心して知識ベースの経営資源を提供できる。
中国側パートナーが提供するものは資産ベースの経営資源であるため、その法的所有権はパートナーに帰属する。
<メリット>
出資を通じて中国側パートナーの所有する経営資源に対して、その出資比率に応じた権利を主張できる。
<デメリット>
中国側パートナーとの調整が面倒である(調整しきれないケースも想定される)。

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