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奥北CIAの中国現場実務Q&A Vol.38 2013年7月1日以降、労務派遣(間接雇用)の利用が制限される

中国ビジネスレポート 労務・人材
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

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2013年1月4日

記事概要

労働契約法改正法の最新内容を紹介する。

2012年12月28日公布、2013年7月1日施行の改正労働契約法により、派遣従業員(労務派遣、間接雇用)の利用が大きく制限されることとなった旨、聞き及びました。本当でしょうか?改正法の内容を教えてください。

2012年12月28日、全国人民代表大会常務委員会は「労働契約法」の改正法案を決定公布し、2013年7月1日から施行されることとなりました。旧労働契約法66条が改正されることにより、派遣従業員の利用が大きく制限されることになりました。すなわち、2013年7月1日施行の改正法では、旧法にあった「一般に」という文言が削除され、臨時性、補助性または代替性のある業務職位以外では派遣従業員の利用ができなくなることが明確化されたのです。

1.中国における労務派遣(間接雇用)の問題点
(1)臨時性、補助性、代替性
現状、多くの日系企業では、労務派遣(間接雇用)を活用しています。そのため、日系企業は、今後も中国において労務派遣を継続していくことができるか否か、ということに関心を持っていました。その際、まず問題となったのが、中国労働契約法第66条に明記されている「臨時性、補助性、代替性」の解釈についてでした。

今回の改正法案が公布されるまでは、この「臨時性、補助性、代替性」の解釈については、全国統一の法解釈規定はなかったため、各地域によっても差異が見られる状況でした(中国の法律解釈の難しさは、法律の解釈権が事実上行政当局にあることから、行政当局によって、異なる見解が出て来る点にあります)。

労働契約法旧66条(2008年1月1日施行、2013年6月30日まで有効の条文)

労務派遣は、一般に、臨時性、補助性あるいは代替性のある業務職位において実施する。

労働契約法新66条(2012年12月28日公布、2013年7月1日施行)
1.労働契約による労働者使用はわが国の企業の基本的な労働者使用形態である。労務派遣による労働者使用は補充形態であり、臨時性、補助性あるいは代替性のある業務職位においてのみ実施できる。

2.前項に定める臨時性のある業務職位とは、存続期間が6ヶ月を超えない職位のことを指し、補助性のある業務職位とは、主要営業業務の職位のためにサービスを提供する非主要経営業務職位のことを指し、代替性のある業務職位とは、使用者の労働者が職場から離れ専ら学習に従事し、または休暇等の原因により勤務できない一定期間内に、他の労働者により代わりに勤務する職位のことを指す。

3.使用者は労務派遣による労働者使用の数を厳しく制限しなければならず、その労働者使用総数に対し一定の割合を超えてはならない。具体的な割合は、国務院労働行政部門が別途定めるものとする。

① 臨時性の意味
従前、たとえば、広東省では、「勤務の存続期間が6ヶ月を超えない職場」を指しましたが、吉林省では、「勤務の存続期間が1年を超えない職場」という風に、地域により差異がありました。
これが改正法では、勤務の存続期間は「6ヶ月を超えない」ことが明確となりました。

② 補助性の意味
補助性については、各地域に差異はなく、「主要な業務をサポートする業務」を指すとされています。この点は改正法でも変化はありません。しかしながら、実態面では、補助的と言えない業務、たとえば営業職までをも労務派遣(間接雇用)で賄っている企業が大半だと思われます。この点は是正を図る必要性がより一層強まる見込みとなりました。

③ 代替性の意味
代替性についても、各地域に差異はなく、「正社員(直接雇用社員)が、病欠、産休その他の事由により業務に従事できない場合に、その他の人が暫定的に当該正社員の業務を行うこと」を指すとされていました。しかしながら、こちらについても、実態面では、代替的とは言えない業務までをも労務派遣(間接雇用)で賄っている企業が大半だと思われます。
この点について、改正法では、代替性のある業務職位とは、使用者の労働者が職場から離れ専ら学習に従事し、または休暇等の原因により勤務できない一定期間内に、他の労働者により代わりに勤務する職位のことを指すことが明確化されたため、現状の是正を図る必要性がより一層強まる見込みとなりました。

(2)直接雇用への切り替え問題
実態面としては、外資系企業の多くが労務派遣(間接雇用)に頼っている状況下、一気に労務派遣から直接雇用への切り替えという正規採用を強要するまでには至っていないのが現状です。しかしながら、この点については、今後、全従業員における派遣従業員の割合上限は、国務院労働行政部門が別途定めることになるものの、従業員全員を派遣従業員にできなくなることはほぼ間違いありません。

(3)同一労働・同一報酬の原則の問題
同一の労働をする限り、同一の報酬を支払わなければならないということは、中国法でも日本法でも何ら変わるものではありません。したがって、もし、毎月発生する目先の人件費を削減するために労務派遣(間接雇用)を活用しようとするのであれば、それは間違った対応と言わざるを得ませんし、改正法によってそういった活用はますます認められないこととなります。

2.中国における労務派遣(間接雇用)の今後の動向
上述の通り、改正法は2013年7月1日から施行されることとなりました。現在、派遣従業員を利用している中国現地法人は、現状の派遣従業員の利用方法が上述改正法に合致するか否か確認する必要があります。もし、合致しない場合は、2013年7月1日までに派遣従業員およびFESCO等労務派遣会社と協議することで、派遣従業員から正社員への切り替えなどの対応策を検討する必要があります。労務派遣(間接雇用)は認められなくなったとしても、社会保険の計算・申請等の部分を継続してFESCO等に業務委託していくことは一つの選択肢として残っています。

以上より、労務派遣を利用することで、直接雇用を避け、無固定期間労働契約を避けようとすることは、2013年7月1日以降は認められないため、日系企業としては、労務派遣者の労働形態を早急に見直す必要があります。

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