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ログイン2011年2月21日
今もなお、中国ビジネスの現場で発生し、日系企業の頭を悩まし続けているのが労働ストライキである。このシリーズでは、日系企業がどのように労働ストに対応していけばよいのか、分析・解説していく。
ストライキ対応、労働者との効果的な交渉
中国のストライキは「労働者-会社-行政」の三極対峙の様相を呈しており、会社としては、労働者との効果的な交渉がストライキを解決する上で非常に重要な課題となっている。
内資企業
交渉の特徴
○ 労働組合や共産党組織(党委など)の主導で行う。
○ 行政の力を利用して調整を行う。
効果:大部分が収拾
仲裁になる可能性:比較的少ない
日系企業
交渉の特徴
○ 会社の管理職が主導で行う。
○ 交渉に乗り出すのがやや遅い。
効果:一部ストライキは収まるが、繰り返して起こりやすい。
仲裁になる可能性:やや多い
欧米企業
交渉の特徴
○ 会社の管理職が主導で行う。同時に現地労働組合との関係を利用して調整を行う。
○ 交渉に乗り出すのが比較的速い。
効果:大部分が収拾
仲裁になる可能性:普通
日系企業は明らかに内資企業、欧米企業に劣ることがわかる。日系企業の労働者との交渉時の弱点は、教訓として主に以下のようにまとめることができる。
1.交渉開始がやや遅い。
ストライキの発生/近々発生するというときに、会社がどのタイミングで交渉に乗り出すか、誰が会社を代表するのか等についての決定がやや遅い。
(例)A社の遅番が高温手当ての引上げを要求して会社の総務部責任者と衝突した。会社が適時調整に乗り出さなかったために、工員の間に不満が広がり、最後はストライキとなった。
2.方策決定が不明確
対峙している問題の核心について、解決の方向、対策案を明確にすることができない。
(例)B社では会社制度の改革により労働者の不満がたまってストライキが起こり、労働者は補償金の支払を要求、会社としては払う意思はあったものの、労働者にどう説明するかについてなかなか決定を下せず、労働者が痺れを切らし、事態を収拾することができなくなった。もしも、会社の意思決定が速ければ、損失も抑えられていた例である。
3.戦略不足
交渉を行ったとしても、戦略をしっかり検討しなければ時間の無駄となる。
(例)C社では人員削減による補償金に労働者が満足せず、ストライキが起こった。会社は交渉の際に重要点をしっかり押さえなかったため、解決しないまま交渉だけが長引き、事態はより深刻化した。
4.交渉責任者の選定ミス。相手の状況を考慮せずに分析を誤った。
(例)D社は交渉時の会社代表に赴任したばかりの日本人総経理を選んだが、中国の状況に通じていないことから逆に労働者の反感を買った。
上述失敗例を参考に、日系企業がストライキ対応において効果的に労働者と交渉するにはどうすべきかについて以下意見を述べる。
1.会社代表の選任
中国人管理職(又は総務部責任者)を選択すること。言葉の障害がないだけでなく、中国人管理職であれば労働者に近づき易く、特に労働者との意思疎通においては明らかに有利である。従って、その後交渉での退路を残しておくためにも、日本人総経理が表に出ることは避けるべきである。
以下は、中国人管理職を選任するときの条件としての参考である。
1.1年齢:35~50歳
1.2職務:科長以上(総務部でもなくてもよい。労使の対立が根深い場合は総務部責任者の交渉は返って逆効果となる。)
1.3勤務年数:2年以上(通常、2年以上の管理職であれば、会社の組織構造、労働者の状況にも詳しい)
1.4性格:弱くもなく、高圧的な態度も取らない。
1.5理解力:企業方針、社風をよく理解している。
1.6コミュニケーション力:行政との意思疎通に一定の能力を持つ。
2.交渉場所
2.1会社内
証拠が確保できるため、監視カメラのある場所が最適である。もちろん、会社にとって有利な場所を選ぶことが必要である。
2.2会社外
社外の場合は、セキュリティと証拠確保のためにも開放された場所がよい(喫茶店やホテルのロビーなど)。
3.交渉時の対策
3.1ストライキの中心人物を調査するには
労働者の要求の多くは重複して出されてくるため、会社としてはこの点を利用して労働者に要求をまとめさせる。通常、要求をまとめる労働者がストライキの中心であることが多い。
3.2要求への回答期限
回答期限については、会社は主導権を握るべきである。回答がはっきりしている要求については期限を設定してもよい。はっきりしていない件については、会社ができるだけ回答期限の条件を設定する(○○の条件を満たすならば、○○日までに回答するなど)。
3.3交渉戦略
○労働者の本当の意図を知る。
交渉の前半は、一定の話術で労働者と意思疎通を図り、最終的に労働者の真意を知る。
○重要でない要求は受け入れることで、労働者にある程度心理的プレッシャーを与え、後半の交渉で主導権を握る。
○適切な時期を見て強硬的に労働者を分裂させ、ストライキの中心人物への対応に精力を集中させる。
○日本の親会社に現地の状況を理解させ、対策の効率を上げる。必要に応じて第三者から親会社にアドバイスを提供する(弁護士事務所、コンサルティング会社など)。
4.交渉期間
当所の経験では、ストライキ前半の交渉は3日を超えてはならない(労働者の大半を集団化させない)。後半は1週間を超えないことである。この期間を超えた場合は、大規模な騒動に発展する可能性が高い。
主執筆:王穏
執筆:毛奕、李飛鵬、呂玉崧、齋藤彰
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