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企業の撤退過程における労働紛争問題(連載の一/全三回)

中国ビジネスレポート 労務・人材
邱 奇峰

邱 奇峰

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2016年6月13日

企業は撤退過程において多くの解決すべき問題に遭遇するが、労働紛争問題はその中でも比較的重要な事項であり、また厄介な問題の一つでもある。本稿では、企業の撤退過程においてよく見受けられる労働紛争問題及びその対処方法について考察する。

一、一般従業員の労働紛争問題及び企業の対応

1.経済補償金又は賠償金をめぐる紛争

企業の解散・撤退は、法律上は、「労働契約法」第44条に定める労働契約が終了する状況に該当するため、企業は撤退を理由として、法に依拠し従業員との労働契約を終了する権利があり、その場合、法定の経済補償金を支払うだけでよい。しかしながら、従業員は通常、労働関係の法律に対する知識はなく、又は完全に理解しているわけではないため、労働契約の解除と終了の2つの概念を混同することがよくあり、また区別して捉えていないため、企業が労働契約の終了を申し入れた際に、従業員は通常、企業によるこのような申し入れは、労働契約の理由なき一方的解除であるとして、賠償金として2倍の経済補償金を支払うよう主張することがある。

当該紛争の発端は、従業員の法律に対する理解不足にあるのだが、中にはより多くの補償金を得るために故意にこのような要求をしてくる従業員もいるため、このような紛争を解決するために、広い範囲にわたり周知と説明を徹底させることが必須である。その際よく採用される周知及び説明には以下のような方法がある。

● 企業のトップ及び人事が進んで従業員への説明を行う。
● 企業が労働組合に説明をしたうえで、労働組合から従業員に対して説明を行う。
● 弁護士に頼み、弁護士が従業員に説明をし、且つ労使の意思の疎通をとる。
● 企業が現地の労働部門に支援を要請し、労働部門から従業員に対して説明を行う。その他。

2.解雇予告手当をめぐる紛争

企業が解散に伴い、従業員との労働契約を終了する場合には、法律上、30日前までに従業員に事前通知する必要はなく、解雇予告手当の支払いもしなくてよい。しかし、企業が従業員に離職を求めた場合には、企業はいずれも解雇予告手当を支払う必要があると従業員が一括りに認識してしまっているがために、企業に支払いを要求してくることがある。

当該紛争も従業員の法律に対する理解不足を発端とするものであるが、この場合も前述の1点目の紛争に対する対処方法と同じく、広い範囲にわたり周知と説明を徹底させることは必須である。また、法律上は、労働契約が終了する30日前までに従業員に事前告知する必要はなく、解雇予告手当を支払う必要もないのだが、実務では、従業員が協議書に迅速に署名してくれるよう、従業員と協議を行う際に、協議書に迅速に署名してくれたことのインセンティブとして、解雇予告手当を支払っている企業もある。

3.上乗せ補償をめぐる紛争

法定の経済補償金のほか、企業は撤退を円滑に進めるために、法定の経済補償金金額に上乗せした金額の支払いを検討することもある。この上乗せ補償で比較的よく見受けられるものには、経済補償金の上乗せと離職合意書締結インセンティブの2つがある。経済補償金の上乗せ及び離職合意書締結インセンティブの金額は、企業が現地の実情及び自社の状況により確定する。しかし、従業員からは企業側が提示した金額を上回る額での上乗せ補償を主張してくる場合がある。

法外な額の上乗せ補償をめぐる紛争は法律上の紛争ではなく、双方の利益をめぐる紛争であり、企業は以下の方法で対応することを検討するとよい。

● 従業員の要求を拒否する方法。企業が提示した上乗せ補償がすでに非常に高待遇の金額である場合、企業は従業員からの要求を拒否することができ、この場合、従業員がどのような行動に出たとしても、企業は自己の立場を堅持すべきである。
● 従業員の要求を適切に考慮する方法。企業は最初に提示する第一段階の方案と上乗せ方案の両方を予め準備しておき、始めの段階では優遇の度合いが若干低めの第一段階の方案を開示し、従業員がやや猛烈に要求してきた場合に、改めて上乗せ方案で対処するかどうかを検討する。このとき、金額を上乗せするのであれば、何度も上乗せするのではなく、小額の上乗せを一度だけするにとどめるべきであり、何度も上乗せしてしまうと、従業員の期待度が高まる一方であるため、対処することが一層難しくなる。

4.賞与及び未使用の年次有給休暇の補償をめぐる紛争

労働契約を終了させる際、賞与及び未使用の年次有給休暇の補償をめぐっても、紛争が生じる場合がある。賞与については、企業は通常、1年単位で支給しており、勤務期間が1年未満の月の部分については、支給条件を満たさないために支払わない。しかし、従業員は自分の利益を優先させるため、1年未満ではあるものの、勤務を履行済みの月についても月次換算して月割り分の賞与を支払うよう企業に要求することがある。未使用の年次有給休暇の補償については、企業は従業員が勤務を履行済みの期間に応じて、法に依拠し日数を計算し、日額賃金の200%の金額を支払うだけでよい。しかし、従業員は丸1年分の年次有給休暇の日数で換算し、日額賃金の300%で余分に支払うよう主張してくる可能性がある。

賞与及び未使用の年次有給休暇の補償をめぐる紛争については、原則的には企業は妥協せずに、自社の立場を堅持し、法律規定に従い処理すればよい。

● 賞与については、企業は自社の規則制度又は慣例に従い対処するとよく、月ごとに換算して支払うとする規定又は慣例がない場合、そのように換算しなくともよい。
● 未使用の年次有給休暇の補償については、企業は従業員が勤務履行済みの期間に応じて法に依拠し日数を換算し、日額賃金の200%の金額を余分に支払うとよい(法律規定の日額賃金の300%には、勤務時に支払い済みの日額賃金100%を含むため、別途実際にに支払う必要のある金額は、日額賃金の200%だけである)。従業員の最終離職日までまだ日がある場合には、企業は補償することなく、従業員に年次有給休暇を取得させてしまうことも可能である。

(里兆法律事務所が2016年4月8日付で作成)

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