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【コラム】中国現場体験記(49) 中国で生活を始めると~食事編~

中国ビジネスレポート 各業界事情
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

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2012年6月13日

日本を離れ海外で生活を始めると、それがたとえどこであっても、今までとは勝手が異なるため、慣れるまでは一苦労があります。中国は日本の25倍の国土を誇り、生活の場とは言っても、単純に「中国」と一括りにすることはできません。乾燥の激しい北京、湿気の高い広州、大都会の上海、中国大陸とは一味違う香港、はたまた日本人の少ない内陸部など、中国国内であっても、その地域によって生活環境は大きく異なります。

中国の料理も、それぞれの環境によって、食材・味付けなどが大きく異なるため、やはり、「中国料理」「中華料理」とは一括りにできません。今回は、首都北京で生活した筆者の経験や在中日本人の方々から聞いた話をもとに、中国における「食事」について現地事情を紹介します。

1.北京に着いて早々
多くの日本人が北京で生活を始めて早々に悩まされるのが腹痛、下痢です。元々下痢をしやすい体質の人であれば気にすることもないのかも知れませんが、下痢に対する耐性が弱いとそうはいきません。

私自身、北京に着いてから1ヶ月間もの間下痢が続きました。北京に来てから知り合った日本人に聞いても、多くの人が同じ経験をしていました。酷い風邪になって寝込む人もいましたし、湿疹が治まらないという人もいました。

北京で体調を崩した友人のひとりは、その原因が北京の食事にあるのだろうと考えました。それからその友人は、毎日食べるものの種類を差し引いたり、足したりして何が原因かを分析しました。その結果たどりついた原因物質は、「油」でした。

日本企業から派遣される語学研修生の大半は、中国語を話す環境を作り出すため、妻帯者であっても単身で住むことが会社から義務付けられています。そのため、外食の機会は自然に多くなります。

2.食用油
あるとき、北京の日本料理屋で食事をしながら店主と話していると、食用油の話になりました。その日本料理屋の隣には、ローカルファーストフード店のような食堂がありました。その食堂は、使用済み油を隣の溝に捨てていたらしいのですが、その食用油はもともと新品ではなく、使用済み油を仕入れ、それを店の料理に使っていたとのことでした。小さい頃から耐性があればそれでも問題ないのかも知れませんが、耐性のない日本人は下痢だけに止まらず、湿疹・アレルギーなど、体の各所に異変が現れます。

3.カニ
カニなどの甲殻類には特に気をつける必要があります。

北京は海に面しておらず、また、鮮度を保つような輸送環境も整っていないため、食べ物は往々にして新鮮ではありません。(上海の高級店で食べた上海カニにあたり、入院騒ぎになった方もいます。北京に限らず、油断してはならないようです)。そのため、同じ食べ物でも、食べても良い店と食べてはいけない店を見極める必要があります。たとえば、信頼できる店では刺身を食べるが、街中にあるちょっとした食堂ではやめておく、という具合です。北京では、健康食ブームもあってか、お金持ちや都会に住んでいる人ほど、日本料理を食べています。近年は、生で食べ物を食する習慣がなかった内陸部の一般的な中国人にも生食が徐々に広がってきています。

あるとき、私は北京にある台湾料理店に入りました。そこは有名な店であり、清潔でもあったため、安心して何でも注文をしていました。出てきた料理を大いに平らげ帰宅すると、突然、体に異変を感じました。疲れているのかと思い早く寝ると、翌日、自分の腕と足が赤紫色に腫れ上がり、象の手足のようになっていることに気付きました。私はアレルギー体質ではなく、日本にいたときには何を食べてもアレルギー反応が出ることはありませんでした。慌てた私は、早速病院に駆け込みました。

医者(中国人):「昨日は何を食べました?」
私:「台湾料理です」
医者:「具体的には?」
私:「A、Bに、後、カニ餡かけが乗った料理も食べました」
医者:「原因はカニですね。甲殻類を食べながらビールを飲みました?」
私:「飲みました」
医者:「駄目ですね。甲殻類には特に気をつける必要がありますが、魚介類を食べるときにはビールは駄目で、白酒ですね」

中国人によく言われるお約束の言葉を医者からも指摘されながらも、原因物質はカニだということが分かり、何だかほっとしたのも事実でした。

4.牛乳
牛乳・ヨーグルトなどの乳製品が好きな私も、中国では気をつけて商品を選びます。

北京に到着後、新居の近くにあったスーパーで牛乳を手に取ったところ、あることに気付きました。日本とは異なり、牛乳の賞味期限が異様に長いだけでなく、常温でも保存できるということがパックに記載されていました。中国と日本では牛乳の種類が違うようですが、そのとき私は、これからは気楽に牛乳も飲めないなと思ったものでした。

5.包丁
中国では包丁にも気をつける必要があります。

あるとき、私は新疆ウイグル自治区ウルムチを旅していました。そこでは、名物のハミグアと呼ばれるメロンやスイカが街中の屋台で切り売りされていました。道行く人たちは、その場で買って食べていました。

そのときの運転手が「ハミグアはおいしいから食べてごらん」と、屋台で切りたてのハミグアを買って来てくれたことがありました。屋台には切り置きのハミグアやスイカなどが並んでいましたが、運転手は新しいほうが新鮮という理由だけでなく、「洗った包丁で切ったものでないと下痢になるから」と、わざわざ包丁を店主に洗わせたうえ、その場で新たに切らせていました。この屋台はまだ果物を切るだけですから清潔な方です。ハエが集った包丁で切る程度です。しかし、ローカルの食堂では、刺身も肉(牛、豚、羊)も同じ包丁で洗いもせずに切ることがしばしばあります。私自身、厨房に入って生きた動物(鳥、ネズミ)をさばくのを見学させてもらったことがありますが、「中国料理屋の厨房をのぞくとそこで出される料理が嫌になるよ」と言われた事を思い出しました。

6.中国人以上に気をつける
現地のバクテリア、細菌に順応した体内・腸内環境を備えている中国人でさえ気をつけるのですから、総て殺菌済みの環境に慣れている日本人はさらに気を付ける必要があるわけです。

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