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釜口不動産鑑定士の“やさしく解説、日本の不動産事情”第6回「土地と建物は別の取引ができる」

中国ビジネスレポート 各業界事情
釜口浩一

釜口浩一

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2011年1月14日

記事概要

日本で不動産を売買する場合、“土地”と“建物”をそれぞれ売買することができます。つまり、“土地の売買”と“建物の売買”があるということですが、今回はその注意点を解説します。【3,330字】

一言で「不動産」といいますが、日本で不動産を売買する場合、“土地”と“建物”をそれぞれ売買することができます。つまり、“土地の売買”と“建物の売買”があるということです。

戸建住宅の場合、一般的には、建物の敷地である「土地」と上物である「建物」の2つをまとめて売買します。たとえば、東京都渋谷区広尾1丁目2番地3号という住所にある戸建住宅を売買する場合、その土地と建物をそれぞれ売買することになります。面積等の細かい記載は省略しますが、売買の契約書では以下のようになります。

土地:東京都渋谷区広尾1丁目3番5
建物:(所在)東京都渋谷区広尾1丁目3番5 (家屋番号)3番地5

1.土地の確認は「地番」で。

余談ですが、ここで、“アレッ”と思った人は多いでしょう。丁目以下のところが住所と違います。「広尾1丁目2番地3号」は“住居表示”というもので、自分の住所を書く際に通常使うものです。住民票の住所も、これです。「広尾1丁目3番5」は“地番”というもので、土地を売買する場合、こちらを使います。地番毎に所有者などが法務局に記録されています。その記録は、昔はファイリング式の帳簿になっていたので「登記簿」といわれていました。地番は土地の区画の順に順序良く並んでいるわけではありません。また、欠番していることもあります。そこで、住所をわかりやすく表示するために1962年(昭和37年)に法律ができました。住所と地番が同じこともありますが、都市部では異なることが多いです。

この土地の戸籍とでもいう「地番」と、郵便物などが届くための「住居表示」が違うことが多いのです。したがって、土地を買う場合、かならず「地番」を確認する必要があります。また、地番だけでは、その地番が付された土地が“どこにあり、どんな形をしているか”がわかりませんので、それが分るためのものとして、「公図」という図面があります。所有者などが記載されている登記記録も公図も、それぞれの土地を管轄する法務局(いわゆる「登記所」)で、の確認できます。法務局が管轄する土地がどこか、そして、その法務局はどこにあるかは、インターネットで調べることができます。また、多くの土地の登記記録と公図は、インターネットで入手することができます。

不動産登記の記録は、土地・建物毎にそれぞれあります。土地の場合、土地を“自分のものである”と他の人(第三者)に主張するためのものとして、「地番」毎にあり、それぞれ、所有者などがわかるようになっています。そして、登記の内容を確認する際に、法務局から入手する書類は「登記事項証明書」というものです。全部事項証明書は、過去の履歴もわかります。

2.建物のみ買うということもある。

戸建住宅の売買の場合、土地と建物をまとめて売買することが多いのですが、そうでないこともあります。新築の戸建住宅で、「価格が、周辺の同じような戸建住宅と比べて安いなあ」という場合、土地を借りているということがあります。これは、売買するのは「建物」のみ。土地は、その土地の地主から“借りる”というものです。

日本の場合、先ほど説明したように、不動産登記の記録が、土地と建物に分かれており、それぞれ売買の対象とできるのです。そのため、建物のみ売買して、土地は“借地契約”を結ぶということがあります。この場合、土地は他人から借りているので、“借地契約”の内容がどのようなものかを確認することが大切です。借地契約を確認する場合、最も大切なポイントの一つは、“契約期間終了時に、土地を地主に返す必要があるのか”ということです。

土地建物を貸し借りする場合、重要な法律として「借地借家法」があります。この借地借家法で、土地のうえに建物を所有する目的で土地を借りる場合、期限が来たら契約が終了する「定期借地」と、契約更新可能な「普通借地」という契約に大別されているのです。

定期借地契約の場合、期間が満了すると、必ず地主(通常、土地所有者)に返します。また、定期借地契約の場合、住宅用かそれ以外かで、契約する賃貸借期間の制約に違いがあります。つまり、土地を地主に返さなくてはならない時期も確認する必要があるということです。そのため、土地を借りるのであれば、“いつ返さなくてはならないか”ということを確認します。

住宅目的、事務所や店舗目的など、土地を使う目的に関係なく、借地契約は、古くからあります。また、場所も、郊外だけでなく、東京都心など大都市部でも多くあります。借地契約は、そのほかにも、最初の契約時の一時金やら、契約更新時の一時金、借地借家法が施行される前の借地契約は昔の借地法が適用されるなど、さまざまな定め、慣習がありますので、土地の売買とは違った部分のチェックが必要となります。

3.他人と持ちあう(共有)

土地や建物を、何人かで持ち合うことも可能です。さきほどの土地の例でいうと、“東京都渋谷区広尾1丁目3番5”の土地を、兄弟で半分ずつ所有するということもできます。たとえば、チェイス一郎とチェイス二郎の兄弟とします。

この場合、土地の登記簿の該当欄に
チェイス一郎 持分2分の1
チェイス二郎 持分2分の1
というように記載されます。

建物も同じように持ち合うことが可能です。親から相続して、兄弟が持ち合っていることが多々あります。この場合、それぞれの権利者がそれぞれ、自分の持分を売ることができます。したがって、あなたが購入する土地の所有者は、だれか。複数の人がいる場合、だれから話を持ちかけられているのかなどを確認することが大切です。共有者のひとりが勝手に、「他の人の分も売ります」と言っていることもありますから。

4.マンション

分譲マンションを売買する場合、一棟の建物の1室を売買します。これは、建物は物理的には一つですが、その一部分を売買できるようにしているのです。さきほどの共有は、物理的に“この部分”というのはなく、全体を割合で所有するのですが、マンションは、“この部分”というのがハッキリしますので、共有と違うわけです。分譲マンションのように、一棟の建物の一部を“この部分”と明確に区別して売買できるものを「区分所有建物」といいます。

さきほどの不動産登記記録でも、マンション用の記載の仕方がされています。建物の全部事項証明書には、「一棟の建物」「専有部分」というように、建物全体(一棟の建物)と売買する1室(専有部分)が分るようになっています。区分所有建物は、住宅だけでなく、オフィスなど他の用途でもあります。また、建物の玄関や廊下など、マンションの所有者が全員で使用する部分は、「共有」になります。

ところで、建物には土地が必要です。そこで、建物の登記簿にも、その建物の敷地について記載があります。この確認も必要です。専有部分であるマンションの1室と、その1室が存在するための敷地の権利(敷地利用権)は、原則、一括して売却する必要があり、別々に売却することはできません(分離処分の禁止)。しかし、所有者間の取り決めである「規約」で別々に売却することができると決めてある可能性はあります。また、法律(建物の区分所有等に関する法律)で分離処分の禁止が定められる前にできた築後30年程度経っているマンションの場合、分離処分できる可能性があります。必ず、専有部分と伴にこれに係る敷地利用権も買うことになっているか確認する必要があります。

そして、この敷地利用権は、借地契約に基づく借地権ということがあります。数年前に土地価格が値上がりして、分譲価格が高くなったときにも、分譲価格を下げるためなどの理由で、土地は借地ということがありました。近くの同じようなマンションと比べて安いと思ったときは、土地が借地のことがあります。特に、定期借地権の場合、将来、建物取り壊しのうえ更地にして地主に返さなくてはならないので、注意しましょう。また、マンションの場合、さきほどの規約には、マンションを所有するうえで大切な決め事が多々ありますので、内容を必ず確認しましょう。

(3,330字)

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