こんにちわ、ゲストさん
ログイン2011年1月11日
今もなお、中国ビジネスの現場で発生し、日系企業の頭を悩まし続けているのが労働ストライキである。このシリーズでは、日系企業がどのように労働ストに対応していけばよいのか、分析・解説していく。
ストライキ対応、日系企業は如何に行政と意思疎通を図るか
現在中国で起こっているストライキの大多数は、労働者が自発的に行っており、規範化、組織化されたものではない(海外のストライキのように、労働組合が組織する「労働組合-会社」という二極対峙の形態とは異なる)。中国政府は労使紛争の無秩序な混乱状態を改善することの重要性を意識し、賃金集団協議制度(前回取り上げた「広東省企業民主管理条例」(草案))を大々的に推し進めているものの、現段階において、この無秩序、混沌とした状態をすぐに変えることは難しく、ストライキは「労働者-会社-行政」という三極対峙の形態を成している。
1.意思疎通の時期を正しく選択する
1.1一定人数の労働者との労働契約の満了又は更新前に、実情に応じて行政に事前報告を行う。
1.2季節性の業務については、労働者採用の閑散期又は最盛期の到来前に、行政に採用計画を提出する。
1.3ストライキの発生後は、ストライキが行政に与える危機やリスクを感じさせることで、一定の協力を得る。
2.会社からの代表を誤りなく選定する
「日系企業は代表人が会社の代表となることは実際には難しいので厄介な問題に直面したときの戦略決定が遅い」ということが、行政の日系企業への印象である。従って、意思疎通を図るときにはこの悪い印象を変え、効果的に協力を得ることが必要である。また、ストライキを処理するに当たっては、行政はより権限のある者を会社代表として選定することを好む。
2.1中小企業
現地企業の中間管理職以上の中国人責任者(総経理又は董事長が授権している者。現地の状況に詳しい者。)
2.2大企業
現地企業の高級管理職以上の中国人責任者(総経理又は董事長が授権している者。現地の状況に詳しい者。)。必要に応じて、親会社の関連部門が授権した代表者。
注:中国人責任者を交渉の代表とすることの最大の理由は、正確に意思疎通が図れることである。言葉、思考習慣、コミュニケーションの違いによる不必要な誤解が生じず、効率が悪くなることが避けられる。
3.適格、臨機応変に行政の担当者を選択する
ストライキに対応するに当たっては、事態の発展により行政の対応機関及び職能も絶えず変わることから、行政側の担当者を正確、臨機応変に選択する必要がある。
3.1予防段階:開発区管理委員会又は外商投資担当機関
3.2発生段階:現地労働局を主な連絡相手とし、実情に応じて、現地の総工会と必要な連絡を保つ。
3.3対立段階:現地労働局を主な連絡相手とし、開発区管理委員会又は外商投資担当機関の支持を取り付ける。
3.4収拾段階:現地労働局
4.正確な表現で会社の意志を伝える
当所で取扱って事例の中で、日本人特有な表現により、最終的に行政の理解が得られず不利な状況に立たされた日系企業もある。従って、行政との交渉においては表現方法に注意する必要がある。
4.1重要な段階では書面で行う。
時間を無駄にしないためにも必要でない場合に書面で連絡することは慎重を期すこと。行政との連絡は、初期段階では口頭で行い、共通認識の基礎を築き、その後書面で行う。
4.2曖昧な表現はできるだけ避ける。
日本語特有の曖昧な表現は避け(特に書面においては)、解釈が異なり、行政に誤解されることを避ける。
4.3未決事項について軽率に意見を出さない。
行政との良好な関係確立を考慮した結果、未決事項について傾向的意見(「**%程度の賃金切上を考慮してもよい」、「検討できないわけではない」等)を出してしまった場合、行政は同意見を会社の結論と見なす可能性もある。行政はストライキ案件においてはあくまでも微妙な立場であるため、その後会社の意見が変わったとしても、行政の支持を得ることが難しくなる。
5.行政の態度を正しく見極める
行政には特有の「処理方法」があるため、日系企業は行政の態度を正確に判断、把握し、時間の浪費を避ける必要がある。
5.1行政内部で検討するおおよその期間。
5.2行政の基本態度、段階的方針、最終結論。
5.3行政の説明(「お役人言葉」、「外交辞令」なのか、真意なのか。)
6.会社間で連携を取り、共通の問題として行政に提出する
実践では、企業間で連携し、統一した要求を行政に提出することは意思疎通の方法として効果的である。例えば、必要な措置を講じてストライキを抑制するよう求める、労働者との交渉について一定の職責を求める、統一、合理的な賃金引上げ基準を提出するなどである。
大連市の日本商工会ではこのような交渉方法を通じて行政に書面の要求を出している。
7.大企業で発生した大規模なストライキは、行政の要求をある程度満たす又は同意することを前提に、行政と「契約」を締結する
大企業で発生した大規模ストライキは、会社に重大な経済損失を与えることが多い。個別事例では、会社が行政と「契約」を締結し、最終的に行政自らがストライキの収拾に乗り出して成功した例もあるため、検討可能な方法である。
「契約」には以下の条件を含む。増資計画を繰り上げて実施する、プロジェクト規模を拡大する、環境保護への投資を改善又は追加する、現地が必要とする公益プロジェクトを請け負う等。
主執筆:王穏
執筆:毛奕、李飛鵬、呂玉崧、齋藤彰
有料記事閲覧および中国重要規定データベースのご利用は、ユーザー登録後にお手続きいただけます。
詳細は下の「ユーザー登録のご案内」をクリックして下さい。
2018年4月11日
2018年2月26日
2018年2月2日
2017年12月20日
2017年11月20日