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生き残りをかけてアジアに出るな

中国ビジネスレポート 各業界事情
森辺 一樹

森辺 一樹

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2012年1月10日

 最近、「生き残りをかけてアジア進出」という言葉をよく見聞きする。景気低迷が続く日本市場でビジネスをしていても生き残れないので、生き残るために海外に出る、もしくは出ろといった内容のものだ。

 確かに日本の経済は低迷を初めて既に20年程になる。少子高齢化という問題がありこの先も急激な景気回復は望めないだろう。従って、外需を獲得しなければならないのは事実だ。特に成長著しいアジア市場の獲得は日本企業にとって最重要課題と言えよう。

 しかし、海外市場は生き残るために出る市場ではない。更に事業を成長拡大させるために出る市場だ。事業を拡大成長させたい企業は積極的にアジアへ出るべきである。世界中の投資マネーが今どこに向いているのかを常に見極めることが非常に重要だ。それらは今日本には向いていない。投資マネーが集まる国は急成長をする。資金が集まり、インフラが整備され、産業が生まれ、市場が新しいものをどんどん求め、生み出し、ビジネスチャンスが溢れる。その市場の場所と成長のタイミング、そして自社の事業領域の交差する地点を見極めることが成功する上で非常に重要だ。
 
 そして、最も重要なのが戦略の概念を変えるということだ。多くの日本企業の戦略は製品やサービスありきのプロダクトアウト(市場のニーズを意識せず、企業側の意向や技術を重視して製品やサービスを開発し、それらを市場に導入する考え方)の概念から抜け出せていない。製品やサービスはあるが戦略は無きまま進出するという企業は、大企業であっても多く存在する。所謂、出てから色々と学び考えようというものだ。これではまるで竹槍を持って現代の戦場に飛び込むようなものだ。

 アジアでは、製品やサービスありきの戦略では勝てない。市場ありきで戦略を立てるべきである。そしてその戦略は市場の可視化なくしては成り立たない。戦う前にどれだけ市場を可視化できるかが戦略構築の肝である。企業規模の大小に関わらず、事前の市場の可視化はアジア進出の必須条件だ。

 日本企業にとってアジアで事業をするということは、普通に考えても日本で事業をする以上に難易度が高い。特に世界中の競合がひしめく成長著しいアジアを中心とした新興国となれば、その難易度は先進国の比にならない。この様な市場に生き残りをかけなければならない企業が進出して勝てる訳が無い。生き残りをかける必要がある企業は国内に留まり、生き残りの道を探るべきである。勝手が良く分かった日本市場に留まった方がよっぽど長く生きられる。アジア市場を絶つということも一つの重要な経営判断だ。

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