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輸入貨物の課税価格とロイヤルティなどの費用の加算問題

中国ビジネスレポート 税務・会計
王 倩

王 倩

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2011年5月26日

記事概要

税関実務において、原材料・部品を輸入する際の課税価格に「ライセンス契約」で定められたロイヤルティを加算するよう税関が求めてくることがある。以下、この問題について詳しく述べていきたい。

一、問題の提起
中国における多くの外商投資企業は、「技術移転契約」または「商標使用許諾契約」(以下「ライセンス契約」という)を親会社と締結し、対価としてロイヤルティを支払っている。また、生産活動において、原材料・部品を親会社から輸入し、輸入した原材料・部品をもとに組み立てなどの加工を行い、中国国内外に販売を行っている。

税関実務において、原材料・部品を輸入する際の課税価格に「ライセンス契約」で定められたロイヤルティを加算するよう税関が求めてくることがある。以下、この問題について詳しく述べていきたい。

二、ロイヤルティを課税価格の加算要素とされる場合の法的根拠とその分析
関税の課税対象は輸出入貨物であり、有形の物のみがその対象である。本来、無形の権利は課税対象ではない。「ライセンス契約」に定められたロイヤルティを原材料・部品の課税価格に加算するのであれば、所定の要件を満たさなければならないはずだ。「中華人民共和国輸出入関税条例」(以下「関税条例」とする)によると、以下の通りになる。

第十九条【輸入貨物の課税価格は、以下の費用を含まなければならない】
第5号:「当該貨物を中華人民共和国国内に販売する条件として、買手が支払うべき当該貨物に関連するロイヤルティ」

この条項に対し、さらに分析を加えたい。
この規定によると、ロイヤルティを輸入される原材料などの課税価格の加算要素とするには、以下の条件を満たさなければならない。

ア、ロイヤルティの支払いが当該貨物を中国国内に販売するための条件になっている
イ、支払われたロイヤルティが輸入貨物そのものと関連性がある

前記する二つの条件が同時に満たされてはじめて、ロイヤルティは課税価格の加算要素になる。
また、「中華人民共和国税関が輸入貨物の課税価格に対する審定弁法」第十一条第一号第三号によると、買手が売手に直接又は間接に支払うロイヤルティが以下の状況のいずれか一つに該当する場合、ロイヤルティを課税価格の一部として加算しない。

ア、ロイヤルティが当該貨物と関連しない
イ、ロイヤルティの支払が当該貨物を中国国内に販売する条件になっていない

(1)ロイヤルティが輸入貨物と関連するかどうかの判断について
以下、ロイヤルティを具体的に、特許権またはノウハウの実施許諾のロイヤルティと商標権の使用許諾ロイヤルティに分けて説明する。

①ロイヤルティが当該貨物と関連しないとは、例えば、現地企業が親会社と「技術移転契約」を締結したが、対象となる技術は輸入される原材料・部品を生産するために用いられた技術ではなく、輸入後の原材料・部品を加工する際に必要な技術である場合。

この場合、現地企業が親会社に支払うロイヤルティは輸入貨物(原材料・部品)に具体化されるものではないのである。原材料・部品を生産する行為と原材料・部品に対して加工を施す行為は、別々の行為であり、企業が関係特許権またはノウハウの実施許諾の対価として支払うロイヤルティは、輸入貨物(原材料・部品)とは関連性がないと認められる。この場合、原材料・部品の輸入時の課税価格にロイヤルティを加算する必要はない。

②逆に、特許技術またはノウハウのロイヤルティの支払いが輸入貨物(原材料・部品)そのものと関連性がある場合とは、輸入貨物そのものが特許製品またはノウハウ製品であって、輸入者が貨物に具現化された特許またはノウハウのために費用を支払う場合である。

この費用が輸出側によって輸出販売に付された条件である場合、この費用を輸入貨物の課税価格に加算しなければならない。

③商標使用許諾のロイヤルティが輸入貨物と関連するか否かを判断する際、以下に掲げる点を考慮する必要がある。

ア.輸入貨物に関係商標がすでに付されているか
イ.輸入貨物は、輸入された後、関係商標を付しただけでそのまま転売できるものであるか
ウ.輸入貨物は、輸入された後、簡単加工を行って、関係商標を付してそのまま転売できるものであるか

(2)ロイヤルティが当該貨物(原材料・部品)を中国国内に販売するための条件になっているかどうかの判断
現地企業と親会社が締結した「原材料・部品の売買契約」と現地企業と親会社が締結した「ライセンス契約」が別々の契約であり、また、約定されたロイヤルティの支払いが、原材料・部品を購入する際の前提条件になっていない場合、ロイヤルティの支払いは、当該貨物(原材料・部品の売買契約)を中国国内に販売するための条件とはなっていないと認めるべきである。この場合、原材料・部品輸入時の課税価格にロイヤルティを加算する必要は無い。
 
三、売手の得る再販収益などを課税価格の加算要素とされる場合の法的根拠とその分析
ロイヤルティの加算問題に近い問題として、売手の得る再販収益の問題がある。「関税条例」の第十九条第六項によると、「売手は直接又は間接に買手から取得した当該貨物の輸入された後の販売、処置又は使用による収益」は、課税価格に加算すべきである。

現地企業と親会社が締結した「ライセンス契約」に定められたロイヤルティの性質が、原材料・部品の輸入販売代理権、またはそれに近い権利を現地企業に与えるものでない場合、第十九条第1項第六号には当てはまらないことになる。

四、まとめ
多くの外資企業は、親会社から原材料・部品を購入し、同時に、親会社から生産技術を導入したり、商標使用の許諾を得たりしている。時として、その原材料・部品の価格とロイヤルティは一体化しているものと理解されやすく、ロイヤルティは原材料・部品の輸入時課税価格の一部を構成していると見られがちである。

従って、もともと課税価格に加算されるべきではないロイヤルティについて、税関から問題視され、追徴課税を要求される可能性が生じている。この場合、企業側は、「ライセンス契約」と「原材料・部品売買契約」の状況を詳細に説明し、ロイヤルティを課税価格に加算する必要が無いことを税関側に説得すべきである。

外資企業が、親会社から原材料・部品を購入すると同時に、製品の販売量に応じてロイヤルティを支払う場合、当該ロイヤルティは原材料、部品の輸入課税価格に加算すべきであるとの誤解を招きやすい。これを避けるため、加算対象のロイヤルティが存在するか、契約で誤解が生じやすい表現が存在するかの視点で、自社のライセンス契約、技術援助契約、その他の無形資産の支払いに生じる契約をもう一度よく見直してみることをお勧めする。

関係契約の規定をより明確にしたうえで、今までのやり方を維持していくことももちろん考えられるし、また、もうひとつの選択肢として、貿易コストや税務コストを比較検討したうえで、原材料、部品を直接海外の親会社から輸入せず、親会社が先に原材料等を仲介の貿易会社に売り、その貿易会社が原材料等を現地企業に輸出するという方式に切替えることも考えられる。これにより、原材料・部品の売手と生産技術や、商標のライセンサーとが異なることになり、原材料・部品の取引とロイヤルティの支払いが、はっきりと二つの独立した取引行為に分離する。これで、ロイヤルティは原材料・部品の課税価格に加算すべきであるという税関の主張を完全に退けることができる。

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