こんにちわ、ゲストさん

ログイン

中国における営業税の増値税一本化改革の全面推進を簡潔に読み解く(連載の一/全二回)

中国ビジネスレポート 税務・会計
邱 奇峰

邱 奇峰

無料

2016年9月14日

■ 営業税の増値税一本化改革実施に至るまでの経緯

1994年、中国において営業税と増値税が並存する流通税の税制構造が確立された。営業税は、主に中国国内で課税役務の提供、無形資産の譲渡又は不動産販売を行う組織と個人を対象とし、その売上に対して税金が課される税目である。一方、増値税は主に中国国内で物品の販売又は加工、修理整備役務の提供、貨物の輸入を行う組織と個人を対象とし、付加価値部分に対して税金が課される税目である。営業税と増値税の違いについて、下表で比較する。

内容 営業税 増値税
課税の原理 内税である。毎回取引するたびに通常、売上(全額)で営業税を計算し、二重課税問題が基本的に存在する 外税である。毎回の取引ごとに理論上、付加価値部分で増値税を計算し(計算が複雑である)、二重課税問題は基本的に解消される
課税ベース 売上 理論上の付加価値金額
課税額 売上×税率 販売税額-仕入れ税額
税率 相対的に低めである(3%、5%等) 相対的に高めである(13%、17%等)
発票の種類 普通発票、専用発票の区別はない 普通発票、専用発票に区別される。また、専用発票がある場合に限り、仕入れ税額として、販売税額から控除できる
税収の徴収管理 計算と徴収はシンプルであり、徴収管理も相対的に緩めである 計算と徴収は複雑であり、徴収管理は厳しく、法的責任は重い

2011年末、2012年初め頃から、中国では、営業税の増値税一本化に向けた税制改革が徐々に実施された。営業税の増値税一本化改革は、先ず上海交通輸送業及び一部の現代サービス業において試行された。その後、試行範囲と地区が徐々に拡大され、今回の営業税の増値税一本化改革が全面的に推進されるまでに、営業税の増値税一本化改革試行は全国範囲で実施されるようになり、交通輸送業、郵政業、電信業の三大業種、及び研究開発と技術サービス、情報技術サービス、文化クリエィティブサービス、物流補助サービス、有形動産賃貸サービス、公認会計士による保証業務、ラジオ・映画・テレビサービスという計7つの現代サービスを網羅するまでになった。

2016年3月23日、中国財政部と国家税務総局は共同で「営業税の増値税一本化改革試行の全面的推進に関する通知」(以下、「36号文」という)
を公布し、2016年5月1日(以下、「実施範囲拡大日」という)から、不動産業、建築業、金融サービス業、生活サービス業などの業種を営業税の増値税一本化改革実施対象に組み入れることを明確にした。これより、営業税の増値税一本化改革の実施対象範囲が拡大され、従来の営業税は増値税へと完全に切り替わることになった。統計によると、営業税の増値税一本化改革が全面的に推進されることにより、増値税税制(又はこれに類似する税制)を取り入れている約160カ国の中で、中国は増値税が適用される業種の範囲が最も広い国となった。

■ 営業税の増値税一本化改革の全面的推進の具体的内容(36号文)

実施範囲拡大日から、全国範囲で、従来は営業税の増値税一本化改革実施対象外であった業種を含む全ての業種が対象となり、そのうち、不動産業、建築業、金融サービス業及び生活サービス業が最も重要な位置を占めている。36号文によると、これら業種における営業税の増値税一本化改革による税率の変化は下表の通りである。

業種 旧営業税税率 改革後の増値税税率
不動産業 5% 11%
建築業 3% 11%
金融サービス業 5% 6%
生活サービス業(飲食業、ホテル業及びその他サービス業を含む) 通常は5%であるが、特定のサービス業(例えば、娯楽業)については、3%-20%の税率が適用される可能性がある 6%

備考:営業税と増値税の課税ベースは異なる(営業税は売上全額で税金を計算するのに対し、増値税は理論上、付加価値額で税金を計算し、増値税の計算過程では税金控除問題が生じる)ため、営業税の増値税一本化改革後、一見すると税率が若干引き上げられたかのように見えるが、営業税の増値税一本化改革は、係る業種、企業の税負担軽減を目指すものである(業種、企業の具体的状況と合わせて、実情に基づき計算する必要がある)。

1.不動産業及び建築業

統計によると、営業税税制下では、営業税の税源に最も大きく寄与していた業種は不動産業と建築業である。営業税の増値税一本化改革後、不動産業及び建築業の増値税税率は営業税が課されていた頃と比べやや高くなっており、営業税の増値税への移行政策は不動産業及び建築業にやや大きな影響を及ぼす可能性がある。中国政府は不動産業及び建築業が営業税から増値税へ着実に移行できるよう、具体的規定をいくつか出している。

(1)課税範囲
36号文における不動産業及び建築業の定義は営業税の規定と概ね一致していることから、増値税は不動産の建設(建築業)、販売及び賃貸(不動産)などの段階における業務に適用され、尚且つ例えば、住宅、工業用物件、商業用物件などの不動産の主要形態に影響を及ぼすことが予測される。

(2)過渡的政策
営業税から増値税へと着実に移行できるよう、36号文では過渡的政策を規定しており、原則として試行納税者は既存プロジェクトについて簡易課税方式で納税することができ、直ちに一般課税方式に切り替えて増値税を納付する必要はないとしている。そのうち、簡易課税方式について、下表で説明する。

業務 経営内容 売上 徴収率
不動産の販売 不動産開発企業が自社開発した不動産の既存プロジェクトを販売する場合 全代金と価格外費用 5%
一般納税者が実施範囲拡大日前に取得した非自社建設不動産を販売する場合 全代金と価格外費用-取得価格又は設定価格 5%
一般納税者が実施範囲拡大日前に取得した自社建設不動産を販売する場合/td>

全代金と価格外費用 5%
不動産の賃貸 一般納税者が実施範囲拡大日前に取得した不動産を賃貸する場合 全代金と価格外費用 5%
建築業 一般納税者が建築工事の既存プロジェクトのために建築サービスを提供する場合 全代金と価格外費用-下請け業者に支払う費用 3%

備考:「建築工事施工許可証」に明記された日付をもとに新プロジェクトと既存プロジェクトとを区別する。不動産の既存プロジェクト、建築工事の既存プロジェクトとは、「建築工事施工許可証」に明記された契約上の着工日が2016年4月30日以前のプロジェクトを指す。「建築工事施工許可証」を取得していない場合、建築工事請負契約に明記された着工日が2016年4月30日以前のプロジェクトを指す。

(里兆法律事務所が2016年5月27日付で作成)

ユーザー登録がお済みの方

Username or E-mail:
パスワード:
パスワードを忘れた方はコチラ

ユーザー登録がお済みでない方

有料記事閲覧および中国重要規定データベースのご利用は、ユーザー登録後にお手続きいただけます。
詳細は下の「ユーザー登録のご案内」をクリックして下さい。

ユーザー登録のご案内

最近のレポート

ページトップへ