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【濱の金融マンの海外取引実務コラム】第7回 決済手段とリスクの関係について

国際ビジネスレポート 外為・貿易実務
甲良 親弘

甲良 親弘

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2020年11月26日

いつも当コラムをお読み頂きありがとうございます。今までの5回のコラムの中で、信用状を使用した決済、送金による決済、信用状を使用しない荷為替手形による決済についてご説明させていただきました。普段余り国際的な決済に従事されない方にとっては、少し難しいところもあるかもしれません。繰り返しになりますが、まずは細かいことよりも全体の流れを理解することが大切かと思います。

本日は、対外的な決済の方法と決済リスクとの関係についてご説明させていただきます。海外のお客様と商売をされる上で、輸出者にとっても輸入者にとっても、決済リスクを常に考えながら業務にあたる必要があります。国内取引に比べて海外取引は、取引の相手方がそばにいませんので、決済が不能になっても、簡単には取立にゆくことが出来ません。

Q これから国境をまたいだ取引を始めようと考えているのですが、実務的にはどのように決済を行ないますか、また、それは輸出者・輸入者からそれぞれ見て、リスクはどうなっていますか。

A 下記の表は、輸出者・輸入者のそれぞれの立場から見た場合の、危険度合いの高低について表にしてみたものです。

(1) 前払い送金

これは商品が届く前に、輸入者が送金により事前に支払を済ませる方法です。輸出者にしてみれば、未だ商品を発送する前に資金を受領することが出来るので、極めて有利な決済方法です。一方、輸入者から見ると、商品が届く前に全額支払いを済まさないといけないので、最も不利な支払い方法となります。輸出者にとっては望ましい決済方法ですが、もし仮にこの方法でしか輸出に応じないとなった時に、輸入者が別の会社でよりよい決済方法を提示したが故に、肝心の商売自体を失注してしまうこともあるかもしれません。決済にかかるコスト的には一番安い方法です。

(2) 信用状(L/C)取引

L/C取引については、輸入者から見れば、L/Cを開設した段階では資金の支払いは行なわれておらず、L/C開設銀行から輸入貨物の到着の連絡があった段階で初めて決済=支払いを行うことになります。一方、輸出者から見ると、まずL/Cが発行・到着すれば、それは「L/Cに記載された書類を銀行に提示すれば、輸出した商品が輸入者に届いているかいないかに関係なく、輸出代金を回収することが出来る」いうことを意味します。また、L/Cは輸入者の決済にかかる信用リスクを補完しているとも言えます。
一方本件にかかるコスト面ですが、L/C開設銀行は輸入者のリスクをとった上で取引を行っていること、輸出側の買取銀行は、輸入側から資金が到着する前に輸出者に資金を立て替えて支払いを行うことになるので、当然のことながらコスト的には送金取引よりも割高になります。

(3) L/Cなしの荷為替手形取引(D/P、D/A)

この取引形態は、輸出者が対外決済を銀行経由で行うものです。第6回のコラムでご説明しましたが、輸入者側の取扱銀行はあくまで書類を取り次いで輸入者に提示し支払いの取立を行っているだけで、輸入者のリスクを負担している訳ではない点に留意して下さい。輸出側の取扱銀行も、当該手形を買取こともありますが、これはあくまで輸出者のリスクを負担したうえで前払いを行っているのみですので、輸入側で不払いがあれば銀行は輸出者に買い戻し請求を行うことになります。

(4) 後払い(延べ払い)送金

この方法は、通常輸出者が商品を受領後、契約時の条件に基づき送金により対外決済を行うものです。輸出者からみると、最も有利な取引形態です。一方輸入者にとってみれば、商品を出荷したにもかかわらず、決済代金の受領を待たなければならず、決済上も資金繰り上も最も不利な取引形態です。取引に際しては、輸入者は輸出者の信用力をよく見極めた上で本決済方法を選択する必要があります。

(5) 委託取引(Consignment)

委託取引とは、輸出者は商品を先に輸入者に発送し輸入者に販売を委託し、輸入者が販売を行なってから初めて資金決済を行う取引形態です。輸出者は決済リスクだけでなく、委託のために出荷した商品が販売まできっちりと保全されているかというリスクにも晒されることになります。輸入者としては、最終的に顧客に販売するまで資金負担がない取引なので、資金的には大変有利な取引形態です。但し、上記のような性質があるので、取引上のマージンは一番厚くなる点に留意する必要があります。この取引は、消費財のような商品には向いておらず、資本財の取引には有効な取引です。

元銀行マンのつぶやき~常に決済を念頭に契約交渉して下さい!

上記で述べた通り、決済手段には様々な方法があり、業種や商品毎にも商慣習もあるので、一概にどの決済手段が適用できるかは、また有利なのかは一概には言えません。営業の方は商品を売りたいので、決済条件について甘めになってしまうことはままあり、一方経理財務の方は決済リスクはキャッシュフローを考えると、出来るだけ資金回収の早い方法を望みます。ただ、どちらが正解ということはなく、どこかで妥協点を見つけないといけない訳で、この辺りはバランス感覚が会社として問われるところだと思います。

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