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ログイン2020年12月25日
いつも本コラムをお読み頂き有難うございます。本日は海外事業で使用される保証状取引について解説させて頂きます。
Q 今般、海外とのプラント取引について入札に加わることとなりましたが、その際に保証状を事前に差し入れる様、事業主体側から要請がありました。また、当該入札を落札した場合には、契約の履行に関わる保証状を差し入れる必要があると入札要項に記載されています。それぞれの保証状はどの様な性質を持っていますか、また発行に当たってはどの様な点に留意したらよいですか。
A 事業主体側から海外の事業に入札を行なう際に求められた保証状は、「入札保証」と言われるもので、英語ではbid bond、bid guarantee、tender bond等と言われています。通常入札する事業契約額のある一定額を要請されることが多くなっています。
入札保証を入札者に入札の際に事前に差し入れさせるのは、入札業者が入札をしたが、理正当な理由なく入札を辞退することを抑制すること、落札した後に一方的に契約を破棄することを抑制すること、契約の辞退時に経済的な損失をリカバーすること等が主な目的です。
また、入札者が該当事業を落札し事業に当たる際に契約を履行することに関する保証状は、「契約履行保証」といい、英語ではperformance bond/guaranteeと呼ばれるケースが多いです。
契約履行保証は、例えば当該事業を進めている間に、事業者が中途で事業の遂行を中止してしまったり、元々の契約期間内に事業が完遂しない場合等に発生する経済的な損失をカバーするために発行します。
どちらの場合も通常は入札者が取引のある銀行や保険会社に依頼をして発行します。
保証状の内容については、契約毎にそのカバーする内容が異なるので、契約書を締結する際に十分に検討することが必要です。
Q その他にどの様な保証を求められる場合がありますか。
A 海外事業では様々なケースで海外事業者から保証状を求められるケースが多いですが、以下に代表的な事例についてご説明します。
(1) 前払金保証 (Advanced payment bond/guarantee)
海外の事業主体が、契約に従い工事代金や物品の代金を(一部)前払いするケースがあります。事業主体側としては、前払いをしたにもかかわらず、工事や納入が滞ってしまった場合、契約が履行されない場合に損失を被ってしまう可能性があります。当該リスクを保全するために、契約金額に応じて前払全保証を要求してくる場合があります。工事等が長期に亘る場合には、マイルストーンに応じて段階的に減額されてゆく場合もあります。
(2) 留保金保証 (Retention bond/guarantee)
契約する工事やプロジェクトが長期になると、事業主体側に対し工事代金や商品の支払代金を留保する資金を積むことを求められるケースがあります。留保金保証は、当該資金を実際に積む代わりに銀行からの保証状を差し入れることにより、事業主体側は資金負担を軽減することが出来ます。事業主体側は現金を受領したのと同等の効果を得ることが出来ます。
(3) 品質保証 (Warranty bond/guarantee,maintenance bond/guarantee,quality bond/ guarantee)、メンテナンス保証 (Maintenance bond/guarantee)
工事が終了・検収も終了し受領書(final acceptance, provisional acceptance)等が手交された後にも、プラントや商品に瑕疵が見つかる可能性があります。その為、事業主体側は、ある一定期間、こうした偶発的な損失をカバーするため、当該ボンドを要請することがあります。
Coffee Break 元銀行マンのつぶやき
保証状の取引は、信用状取引や送金取引のように定型化されておらず、文面も都度かつ案件毎に異なりますので、保証状を求められる取引を行なう必要がある時には、できるだけ事業主体側と前広に文言について交渉し、発行を依頼する金融機関とも打ち合わせしておくことが必要です。
小職の経験上、保証状の文言や発行については、契約交渉上比較的後回しにされてしまうことが多いようで、直前になり発行について相談されるケースが多々ありました。契約交渉に当たっては、営業・財務・技術・商品の各担当者が綿密に連絡を取り合い、不利な契約を呑まされることが無いように万全の体制にてあたることが大切かと思います。
次回は保証状の発行に関する事例と、基本的な法務面について解説したいと思います。引き続き宜しくお願い申し上げます。
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