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【濱の金融マンの海外取引実務コラム】第8回 輸出におけるリスクヘッジ手法の概要について

国際ビジネスレポート 外為・貿易実務
甲良 親弘

甲良 親弘

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2020年12月7日

Q 現在アジアを中心とした発展途上国に機械の輸出をしていますが、時々決済が遅延することがあります。輸出する際にはどの様なリスクヘッジの手法がありますか。

A 決済方法によっても異なりますが、一般的には以下の手法が考えられます。

(1) 信用状(L/C)確認(confirmation;コンファーム)

L/Cベースにて輸出を行なう場合、例えばat sight決済、usance決済等、様々なケースがありますが、L/Cに確認をつける方法があります。通常は、オープンコンファームといってL/Cの中で発行銀行がL/C確認をつけることを容認するのが一般的です。この場合、通常は信用状のアドバイス銀行が行ないますが、信用状の確認に応じるか否かは、当該銀行の任意です。確認を付与する場合は、アドバイスを行なう際に輸出者(=受益者)にカバーレターを添付し確認付与したことを記入してL/Cの原本と合わせて送付をします。

一方、L/C上では発行銀行が容認していないけれども、輸出者が確認を確認を付与してほしい場合があります。その際、輸出者は確認を付与する銀行とやり取りし、二者間で個別にサイレントコンファームを付与する契約を締結します。

確認を付与することにより輸出者は、船積前のリスク、船積後の決済リスク、信用状発行銀行の所在国のカントリーリスクを回避し、確認を付与する銀行のリスクに置き換えることが出来ます。

(2) フォーフェイティング(forfaiting)

日本国内では、フォーフェイティングは信用状付きの輸出取引について、遡及権無し(without recourse)で買取するケースを指す場合が一般的です。信用状の確認と異なるのは、本取引は、輸出が行われドキュメントが本件取扱銀行に提示されてから、内容確認して買取可能であれば実行するというところが異なります。通常は船積前のリスクはカバーしていません。

余談ですが、フォーフェイティングは、東ヨーロッパ諸国が、ソビエト連邦崩壊後に新たな国づくりを行なう際に、西側諸国にある中古の様々な機械類を東欧諸国に送る際に利用されるようになった取引形態と言われています。

(3) ファクタリング

ファクタリングは、海外の輸出ファクター(債権買取業者)が、輸入者のリスク引受が可能である場合、輸入者の与信枠を設定しその枠内で輸出債権の買取に応じるものです。通常比較的少額・多頻度輸出されるものについて、一定の枠内で取り扱いを行ないます。取引形態は、信用状無しの場合が大半ですが、信用状付きであっても検討は可能です。

(4) 輸出に関する保険の付保

日本では日本貿易保険(NEXI)という独立行政法人が行なう貿易一般保険を付保し、リスクヘッジを行なうケースが一般的です。輸出の際、船積前・船積後両方のリスクをカバーしてくれます。通常、海外商社名簿の中に登録のある先について日本貿易保険がリスクを取ってくれます。但し、商社名簿に登録が無い、登録を依頼しても、輸入先の比較的小さな企業については応じてくれないケースも多くなっているので留意が必要です。

また最近では、海外の民間保険会社が日本にも進出して輸出信用保険のサービスを提供しており、利用される方も増えてきております。

(5) 送金(オープンアカウント)取引における債権譲渡取引

茲許は信用状無しの取引が多いですが、その場合でも、決済までに例えば3か月や6か月といったテナー(期間)を要求されることもよくあり、輸出者にとってみるとその間のリスクのみならず、資金繰りをどうするかという問題を抱えるケースが非常に多いです。場合によっては、商品受領前に前払いを求められるケースもあります。その場合、輸入者側のリスクを取れる銀行と債権譲渡契約を締結し、遡及権無しベースで買取を行なう手法があります。本件はある一定以上の大口の取引について、個別に債務者宛に与信枠を設定し実行するケースが多いです。但しこの「大口」の意味は、例えば一年間に輸出する合計金額を指し、一回当たり(例えば毎月)の輸出金額が小さくとも構わないという意味です。

(6) 上記各手法の金額と期間の関係について

本日ご説明した手法が、金額と期間でどの様に適用されているか、イメージ図を作成してみました。本件は統計的なデータを取ったものではなく、あくまで小職の経験からのイメージにより分類しています。その為、この金額や期間に当てはまらないと出来ないということでもなく、あくまで最終的には個別判断となる点ご了承下さい。

Coffee Break 元銀行マンのつぶやき

以上お示しした通り、輸出債権のリスクヘッジ手法には様々な方法があります。書面の都合上、詳細にはご説明出来ませんが、どの手法にもメリット・デメリット・コストと手間の関係等あるので、お客様の輸出取引の実態に合わせて検討することが大切かと思います。
具体的なご相談がございましたらご一報下さい。

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