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人事労務は経営者の仕事:優秀な管理者に労務管理を任せていませんか?

中国ビジネスレポート コラム
小島 庄司

小島 庄司

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2014年7月31日

コラム概要
労務問題や政府の難題対応など、面倒なことを確実に解決するには、優秀な管理者に任せるのが一番。でもこれ、実はマズいやり方。組織が一通り落ち着くまでは仕方がないとしても、経営者の負荷や不安を減らすためにエースを労務管理に投入することは、実は経営上の大きな損失なのです。
【1,728字】

今回は、組織のレベルを上げていくための問題提起、『優秀な管理者に労務管理を任せてはいけない』です。

「オイオイ、おまえは以前から『人事労務は経営者の仕事』って言ってるやろ。というか、そもそもこのコラムのタイトルがそのまんまやないかい。経営者が信頼できる管理者に労務を任せるのは、おまえの主義主張通りやないのか?」

ご指摘ごもっともなので、少し説明を。今回の話には二つの前提があります。
①組織をLevel3より上に成長させたい場合、労務管理を優秀な管理者に任せてはいけない。
②「労務」ではなく「人事労務」を経営者と優秀な管理者で管轄することは、どのような情況でも賛成。

ここで分かりにくいのが『Level3』と『労務と人事労務の区別』でしょう。

●組織の要求レベルが上昇中

Level3というのは、私が勝手に区分している現地法人の組織レベル5段階の三つ目です。

 Level.1 組織の成長なんて絵空事に思える (無管理の組織)
 Level.2 故意に損失を出す行為はなくなった (労務を押さえた組織)
 Level.3 標準通りに作業・業務を進めている (日常業務が回る組織) ←これ
 Level.4 業務管理が現地化できた (管理者が部下に教える組織)
 Level.5 経営管理が現地化できた (現地で自策自立している組織)

従来、中国の現地法人に対する見方は、「まず決められた通りにきっちり仕事をしてくれれば御の字」あたり。これが上述のLevel3、『標準通りに作業・業務を遂行できている』組織です。

ところが、競争激化や納入条件の厳格化、各種コストの上昇などを受け、『管理者が部下に教える組織』、『市場開拓などにより現地で自策自立できる組織』まで、生き抜くためのハードルが上がっているのが現実。従来の期待レベルで生き残れるのであれば、今回の問題提起は読み流し可です。「このままではマズいかも」と感じるのであれば最後まで読んでみてください。

●エースを火消しに使うな

次に労務と人事労務の区別。同じ意味で使われることもあるこの二つ、私は区別して使っています。

文字通り労務は人事+労務の半分。労務は労使関係、日常の就業や勤怠、紛争の予防と解決、労働条件や安全衛生など『日常の労働に専念できるための管理』であり、主として就業規則の領域。一方、人事は採用、教育、任免、評価、給与、昇降格など『社員の成長を促すための仕組みの管理』であり、主として人事制度の領域。

どちらも中国での経営管理に不可欠なものの、立ち上げから標準業務レベルまで到達するのに重要なのは間違いなく労務。だから組織が一定のレベルに到達するまで、労務を優秀な管理者に任せることは賢明な判断です。ところが、さらに上の成長を求める段階で鍵を握るのは人事制度の活用。優秀な管理者には社員の成長を促す人事や市場開拓など、会社の未来を創造する攻めの仕事を任せなければなりません。

労務問題は経営者にとっての厄介事。この対処や解決を信頼できる管理者に任せたくなる気持ちは分かりますが、火消しの仕事をエースに任せていては、いつまで経っても新たな課題への挑戦ができません。

●便利使いは経営者の怠慢!

優秀な管理者を人事や市場開拓などに回すのは、経営者にとって思い切りが必要。労務が手薄になったり、再び自分がフォローに回ったりするかと思うと気が重い。彼(女)に任せていれば、辞めさせたい社員の対応だって、労使協議の調整だって、仲裁員との協議だって経営者が出る幕はない。

でも、厳しい言い方をすると、これは経営者の怠慢。いつまでもエースを便利使いしていると、組織全体の成長につながらないし、本人だって挑戦的で創造的な仕事に取り組めない。そういう『面倒な仕事の丸投げ』が優秀な管理者の疲労、見限り、離職につながるケースを多々見てきました。

彼らが疲弊して離職してしまったら、一番損をするのは経営者。辞意を漏らされてから慰留して、職位を上げたり昇給したりしても手遅れですよ。会社のためにも、本人のためにも、優秀な管理者には挑戦的で創造的な仕事を任せてください。

経営者もエースも、自分にしかできない仕事、特に将来の業績を創造する仕事に集中するのが自社発展の道。エースはマイナスを潰す仕事ではなくプラスを創造する仕事に投入するのが、結果的に枕を高くして寝られる秘訣です。

ではまた次回!

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