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「政府情報公開条例(改正)」を読み解く

中国ビジネスレポート 法務
邱 奇峰

邱 奇峰

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2020年3月19日

新たに改正された「中華人民共和国政府情報公開条例」(以下「新条例」という)が2019年5月15日から施行された。全体としては、新条例は公開対象となる政府情報の範囲を拡大し、公開するうえでの手続き事項について、かなり具体的に規定している。また、知る権利の濫用を防止するため、政府情報公開の申請について一定の制限を設けた。本稿では新条例の主な改正点について解説する。

原文

解説

第一章 総  則

第二条 本条例にいう政府情報とは、行政機関が行政管理の職能を履行する過程において作成し又は取得した、一定の方式で記録し、保存された情報を指す。

1.     旧条例と比べ、政府情報は行政機関が「行政管理」の職能を履行する過程において作成し又は取得した情報であることに限定し、政府情報の概念を明確にした。従来の広すぎた政府情報の範囲が、これによって減縮された。

第二章 公開される主体及びその範囲

第十条 行政機関が作成した政府情報は、当該政府情報を作成した行政機関の責にて公開する。行政機関が公民、法人及びその他組織から取得した政府情報は、当該政府情報を保存している行政機関の責にて公開する。行政機関が取得したその他の行政機関の政府情報については、当該政府情報を作成し、又は最初に取得した行政機関の責にて公開する。法律、法規に政府情報公開の権限について別途定めがある場合、その規定に従う。

行政機関が設立した出先機関、内部機関が法律、法規に依拠して、対外的に自らの名義で行政管理の職能を履行する場合、当該出先機関、内部機関の責にて、その履行する行政管理の職能と関係のある政府情報についての公開作業を行うことができる。

2つ以上の行政機関が共同で作成した政府情報については、作成を主動した行政機関の責にて公開する。

1.     作成機関、保存機関及び主動機関が公開主体であり、政府情報の公開義務を有することを明確にした。また、行政機関が設立した出先機関、内部機関は法律、法規により権限を付与された場合、公開主体となり得るともされている。なお、例えば行政機関Aが行政機関Bから政府情報を入手している場合、機関Aは保存機関に該当せず、公開義務を負わないことにも注意したい。

 

2.     新条例は、公開しない情報を、絶対に公開しない情報、相対的に公開しない情報、公開しなくてもよい情報の3つに分けている。(1)絶対に公開しない情報には、法律、行政法規上、公開を禁止するもの、及び公開後は、国の安全、公共の安全、経済の安全、社会の安定を脅かし得る情報が含まれ、これらには例外はない。(2)相対的に公開しない情報には、商業秘密及び個人のプライバシーに関わるものが多いが、商業秘密及び個人のプライバシーに対する判断は行政機関の自由裁量によるところとなり、とりわけ後者に対する判断基準が実際にはややあいまいになっている。(3)公開しなくともよい情報には、主に内部事務の情報、経過的情報及び行政法執行事案記録の情報が含まれる。公開しない範囲を明確にすることは、実質上、行政機関の公開の要否に対する裁量権を制限し、客観的には、公開すべき政府情報の範囲を拡大した。

 

3.     行政機関による政府情報の公開は、自主公開及び申請による公開という2つの方式があることを明確にした。

第十三条 本条例第十四条、第十五条、第十六条に定める政府情報を除き、政府情報は公開しなければならない。

行政機関が政府情報を公開する際には、自主的な公開及び申請による公開という方式を採用する。

第十四条 法により国家秘密として定められる政府情報、法律、行政法規により公開が禁止されている政府情報、及び公開後に、国の安全、公共の安全、経済の安全、社会の安定を脅かし得る政府情報は、公開しない。

第十五条 商業秘密、個人のプライバシー等にかかわり、公開することで第三者の適法な権益を損なう政府情報については、行政機関は公開してはならない。但し、当該第三者が公開に同意し、又は公開しないことで公共の利益に重大な影響を与えると行政機関が判断するものについては公開する。

第十六条 行政機関の内部事務に関する情報(人事管理、後方事務管理、内部業務手順等に関する情報を含む)は公開しなくてもよい。

行政機関が行政管理の職能を履行する過程において形成された打合せ議事録、草案、交渉状、稟議・報告書等の経過的情報及び行政法執行事件記録の情報は、公開しなくてもよい。法律、法規、規則で、上記情報を公開しなければならないと定めている場合、その定めに従う。

第三章 自主公開

第十九条 公衆の利益の調整に関わり、公衆に周知させる必要があり、又は公衆が意思決定に参加する必要のある事項に関する政府情報については、行政機関が自主公開しなければならない。

1.     新条例では、行政機関が自主公開すべき情報を総則的規定と例示規定を組み合わせた方式により定めている。旧条例と比べると、範囲が拡大され、且つかなり明確である。

 

2.     機関の職能、機構の設置、執務場所住所、業務時間、連絡先情報、責任者の氏名、行政許可及びその他の対外管理サービス事項を取り扱う際の根拠、条件、手順及び取扱の結果、公務員採用試験により募集する職位、人数、試験の申込条件等の事項及び採用の結果を、行政機関が自主公開する政府情報に組み込み、且つ包括条項を追加した。

 

3.     新条例の精神に基づくと、将来、行政機関により自主公開される政府情報の種類は、絶えず増えていくと見込まれる。

第二十条 行政機関は本条例第十九条の規定に従い、当行政機関の次に掲げる政府情報を自主公開しなければならない。

(一)行政法規、規則及び規範性文書。

(二)機関の職能、機構の組織構成、執務場所住所、業務時間、連絡先情報、責任者の氏名。

(三)国民経済及び社会発展計画、個別計画、区域計画及び関連政策。

(四)国民経済及び社会発展の統計情報。

(五)行政許可及びその他の対外管理サービス事項を取り扱う際の根拠、条件、手順及び取扱の結果。

(六)行政処罰、行政強制を実施する根拠、条件、手順及び当行政機関が一定の社会的影響があると判断した行政処罰決定。

(七)財政予算、決算に関する情報。

(八)行政事業性料金徴収項目及びその根拠、基準。

(九)政府集中調達事業リスト、基準及び実施状況。

(十)重大な建設事業の承認及び実施状況。

(十一)困窮者支援、教育、医療、社会保障、就職促進等に関する政策、措置及びその実施状況。

(十二)突発的な公共事件の緊急対応マニュアル・早期警戒情報及び対処の状況。

(十三)環境保護、公共衛生、安全生産、食品薬品、製品品質の監督検査状況。

(十四)公務員採用試験により募集する職位、人数、試験の申込条件等の事項及び採用の結果。

(十五)法律、法規、規則及び国家の関連規定に自主公開すべきと定めるその他の政府情報。

第四章 申請による公開

第二十七条 行政機関が自主公開する政府情報を除き、公民、法人又はその他組織は、地方各級人民政府、対外的に自己名義で行政管理の職能を履行する県級以上の人民政府部門(本条例第十条第二項に定める出先機関、内部機関を含む)に対して、係る政府情報の取得を申請することができる。

1.     提供せず、処理しないケースを明確にした。それには以下のものが含まれる。(1)公開を申請する政府情報の数量、頻度が合理的な範囲を明らかに超えている場合。(2)回答済みの事項だが、同一の政府情報について再び公開を申請した場合。(3)工商、不動産登記資料等の情報に該当する場合。(4)政府情報の公開を申請する方式により、陳情、苦情申し立て、通報等の活動を行う場合。

 

2.     新条例によると、申請の内容が明確でない場合、行政機関は7業務日以内に補正を通告しなければならず、且つ具体的な補正期限も申請者に通告しなければならないとされている。

 

3.     新条例では、政府情報の公開についての回答期限を、旧条例の15業務日から20業務日にまで延長し、且つ当該期限には、第三者及びその他機関に意見を求める期間を含まないとされている。また、第三者及びその他機関からの意見提出期限は15業務日とし、その他機関が期限を過ぎて意見を提出する場合、公開に同意したものとみなされる。

 

4.     新条例では、申請による公開から自主公開に切り換えるメカニズムを構築しており、複数の申請者が同一の政府情報に申請し、又は申請者から自主公開するよう申し入れがあった場合、行政機関はそれを自主公開の範囲に組み入れることができる。

 

5.     申請者が政府情報公開を申請する数量、頻度が明らかに合理的な範囲を超えている場合には、行政機関は情報処理費を徴収することができるが、そうでない場合は、一切の費用を徴収してはならない。

第二十九条 公民、法人又はその他組織が政府情報の取得を申請する場合、行政機関の政府情報公開業務担当機構に申請するものとし、且つその申請は書簡、データグラムを含む書面により行われなければならない。書面により行うことが確かに困難である場合、申請者は口頭により申請し、当該申請を受理する政府情報公開業務担当機構が政府情報公開申請書への記入を代行することができる。

第三十条 政府情報公開の申請内容が明確でない場合、行政機関は指導及び解説を行い、且つ申請を受領した日から7業務日以内に、補正するよう申請者に一回限りの通告を行い、要補正事項及び合理的な補正期限を説明しなければならない。回答期限は、行政機関が補正の申請を受領した日から計算する。申請者が正当な理由なく、期限を過ぎても補正しなかった場合、申請を放棄したとみなし、以降、行政機関は当該政府情報の公開申請を処理しないものとする。

第三十三条 行政機関が政府情報公開申請を受領した場合、その場で回答できるものについては、その場で回答しなければならない。

行政機関がその場で回答できない場合、申請を受領した日から20業務日以内に回答しなければならない。回答期限を延長する必要がある場合、政府情報公開業務担当機構の責任者の同意を得たうえで申請者に告知しなければならない。また、延長する期限は、最長で20業務日を超えてはならない。

行政機関が第三者及びその他機関の意見を求めるために必要となる期間は、前項に定める期限に計上してはならない。

第三十六条 政府情報公開の申請について、行政機関は以下の状況ごとに、それぞれ回答を行う。

(一)公開の申請を受けた情報をすでに自主公開している場合、当該政府情報の取得方法、ルートを申請者に告知する。

(二)公開の申請を受けた情報が公開できる場合、申請者に当該政府情報を提供し、又は当該政府情報を取得するための方法、ルート及び所要期間を申請者に告知する。

(三)行政機関が本条例の規定に基づき、公開しないと決定した場合、公開しないこと及びその理由を申請者に告知する。

(四)検索したが、公開の申請を受けた情報が見つからなかった場合、当該政府情報が存在しないことを申請者に告知する。

(五)公開の申請を受けた情報が当行政機関の責にて公開するものではない場合、その旨を申請者に告知し、且つその理由を説明する。当該政府情報の公開に責を負う行政機関を確認できる場合、当該行政機関の名称、連絡先情報を申請者に告知する。

(六)行政機関は、申請者からの政府情報公開の申請について、すでに回答済みだが、申請者が同一の政府情報について再び公開を申請した場合、処理を繰り返さないことを申請者に告知する。

(七)公開の申請を受けた情報が工商、不動産登記資料等の情報に該当し、関連する法律、行政法規において、情報の取得について別段の規定がある場合、関連する法律、行政法規の規定に従い取り扱うことを申請者に告知する。

第三十九条 申請者が政府情報の公開を申請する方式により、陳情、苦情申し立て、通報等の活動を行う場合、行政機関は政府情報公開の申請として扱わないことを申請者に告知するとともに、係るルートを通じて申し入れるよう告知することができる。

申請者からの申請内容が、行政機関に対し官報、新聞雑誌、書籍等公開出版物の提供を求めるものであった場合、行政機関はそれらを取得できるルートを告知することができる。

第四十二条 行政機関が申請を受けて政府情報を提供する際には、費用は徴収しない。但し、申請者が公開を申請する政府情報の数量、頻度が明らかに合理的な範囲を超えている場合、行政機関は情報処理費用を徴収することができる。

第四十四条 複数の申請者が同一の政府情報について、同一の行政機関に公開を申請し、且つ当該政府情報が公開できるものである場合、行政機関はこれを自主公開の範囲に組み入れることができる。

行政機関が申請を受けて公開した政府情報について、申請者はそれが公衆の利益の調整に関わり、公衆に周知させる必要があり、又は公衆を意思決定に参加する必要のある事項であると判断した場合、当該情報を自主公開の範囲に組み入れるよう行政機関に提案することができる。行政機関は、審査・確認の上で、自主公開範囲に該当すると判断した場合、遅滞なく自主公開しなければならない。

(里兆法律事務所が2019年8月23日付で作成)

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