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【コラム】中国現場体験記(40) 偽装結婚と「集団就職」~集団就職編~

中国ビジネスレポート コラム
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

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2012年3月1日

2.日本での集団就職
(1)広州にて
初めて中国に出張した2007年、広州市で日本語を上手に話す中国人女性と出会いました。筆者がどこで日本語を勉強したのか尋ねたところ、「広島で働いていたの」と彼女は答えました。東京でも、大阪でもなく、広島であることに興味を覚えた筆者が、「なぜ広島?」と続けて聞いたところ、当時の職場が広島の店舗と提携していたから、広島に派遣された、とのことでした。

このときの筆者は、「ふ~ん、経験を積むためだったのかな?」程度に彼女の話を聞いていました。

(2)大連にて
その3年後、場所も変わり大連で、一次会の食事を終え、二次会でカラオケを歌っているときのことでした。筆者の隣にいた中国語研修生(日本人)が「えっ?!」と驚いた声を上げました。「どうしたの?」の聞いたところ、「この人(中国人女性)が熊本で働いていたと言っています」とのことでした。

3年前とは異なり中国語を解するようになっていた筆者は、中国語で色々と事情を聞いてみたのです。

筆者:「どうして熊本なの?」
中国人女性:「私が熊本を選んだわけではないのよ」
筆者:「どういうこと?」
中国人女性:「日本への出発当日、大連の空港に集まった際、あなたはここ、あなたはそこ、と割り振られたのよ。私はたまたま熊本に行くよう言われただけ」
筆者:「日本に行く直前まで、日本のどこに行くか決まっていなかったということ?」
中国人女性:「中国のブローカーが集めてきた、日本で働くことを希望する女性達は集団で日本に行くのだけど、それぞれ行き先が違うのよ。私は熊本のスナックで働いていたの」

彼女の居留資格は、とある会社が発行した虚偽の招聘状に基づくものだったそうです。クラブやスナックで働くために日本へ居留することは認められていません。

3.日本よ、日本よ
中国の急激な経済発展が伝えられる中、その裏側では、今でも日本を目指す中国人女性が大勢います。彼女たちは、中国の都会で身分保障(社会保険で守られていないため、病気になると一気に貧乏になる)なく働くぐらいなら、同じく身分証明が得られない日本で、より多額の金銭を稼ぐことを夢見てやってきます。彼女たちは言います。日本人は優しいと。中国人相手や韓国人相手に仕事をすると体を壊すまで飲まされたり、無茶をさせられたりするが、日本人の多くはそんなことをしないと。日本人相手には一攫千金とはいかないが、体を壊すこともないから、確実に稼げると。

彼女たちが確実に稼げると思う日本で働くためには居留資格が必要です。しかし、簡単には日本の居留資格は取得できません。そこで、「偽装結婚」や、虚偽の招聘状に基づく「集団就職」など、ありとあらゆる方法を使って日本を目指すのです。

彼女たちに罪の意識はありません。誰も傷つけていない、誰も困らない、なぜ悪い、と考えるのです。「上に政策あれば、下に対策あり」とは中国でよく言われることです。法律は守るものではなく、うまく「対策」を練り、いかに儲けるかが優先されているのです。

生きることにたくましい中国人による「対策」は、今後もイタチごっこのまま続くのでしょうか。

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