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【コラム】中国現場体験記(51) 「優酷」による「土豆網」の買収と中国の知的財産権事情

中国ビジネスレポート コラム
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

無料

2012年7月11日

2012年3月12日、中国動画サイト最大手の「優酷」が、ライバルの「土豆網」を株式交換で買収することが発表されました。「優酷」と「土豆網」は、いわば中国の「ユーチューブ」です。中国では、日本のドラマが、日本での放映日翌日には中国語の字幕付きのうえ、無料で「優酷」や「土豆網」で見ることができます。日本同様、韓流ブームの中国では韓国のドラマはもちろん、アメリカのドラマなども、同様に翌日には見ることができます。
今回は、「優酷」による「土豆網」の買収という報道の裏側にある、中国の知的財産権事情の一例を紹介します。

1.中国の街角で
中国では、街角で正規版ではないDVDが売られています。日本のドラマや映画なども、放映された翌日にはDVDが売り出されます。たった1日で中国語の字幕付きのものが制作されているのです。

これは中国の一部地域に限られたことではありません。大都市・上海の街中でも、リアカー一杯の非正規版DVDが販売されています。政府のお膝元である首都北京よりも、上海など地方の方が多いという実感です。

DVDの値段は、私が以前上海で見たときには1枚5元(約66円)でしたが、最近、たとえば広州では1枚7元(約93円)に値上げがされたようです。連続ドラマなど5枚組みのDVDの場合は、35元(約465円)となります。非正規版のDVDは、街中でリアカーを引きながらゲリラ的に売っているだけではありません。一般のDVD販売店に入っても、若干値段は高いものの、それでも格安の非正規版が売られています。中国で買った正規版は、日本のDVDデッキやパソコンでは再生できないことがありますが、非正規版にはそういった規格上の規制が施されていないことが多いため、大抵の機械で再生することができます(すべてがすべて、再生可能と言うわけではありません。デッキよりもパソコンでの方が再生しやすいようです)。

これまで中国では、一方では知的財産権は守るべきと提唱し、一方ではいかにそれらを利用して金儲けをするか考える人が跡を絶ちませんでした。しかし、昨今、公安による取締り機会の増加により、街中からリアカーが消え去ることも増えてきました。ところが、公安がいなくなると、どこからともなく雨後の筍のように彼らは這い出してきます。結局は、どこまで本気か分からない公安と、頭を引っ込める亀のようなリアカー集団との、筋書きのあるドラマが上映されているかの如くです。

2.「優酷」と「土豆網」
インターネットサイト「優酷」「土豆網」でも日本のほか、韓国・アメリカ等のドラマ・映画が見られます。こちらもDVD同様、放映された翌日には中国語の字幕付きがアップされています。

これらはもちろん、無料で、いつでも見ることができます(どこででも、というわけには行きません。周知の通り、中国ではインターネット接続に制限がかけられているからです。たとえば、新疆ウイグル自治区ウルムチ、カシュガルに行ったときには、厳しい接続制限が課せられているのを感じました)。そのうえ、ハイビジョン対応であるため、中国で日本の番組をTVで観るより画質が綺麗というおまけまで付いてくるのです。

「優酷」は業界1位、「土豆網」は業界2位の企業です。報道によると、「優酷」の時価総額は28億5000万ドル(約2,340億円)で、「土豆網」の6倍にも上る大企業です。このような大企業が、知的財産権違反ではないかと心配になる企業運営をしているのです。

3.知的財産権保護の必要性
中国に進出する企業はもちろん、進出しない企業であっても、自社の権利保護には十二分に注意が必要という事が、この一例を以ってしても分かります。

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