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【コラム】中国現場体験記(43) 国境線で食する北朝鮮料理と北朝鮮の人の中国語

中国ビジネスレポート コラム
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

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2012年3月28日

ⅱ.北朝鮮料理店
(ⅰ)北京に住む北朝鮮の人(日本でいう喜び組?)
船から下りるとちょうどお昼過ぎでした。北朝鮮との国境の街には、北朝鮮から来た人たちが働く北朝鮮料理屋があります。日本人には馴染みのない北朝鮮料理屋ですが、中国では国境線や、また北京や上海などの都市でも営業しています。北京の北朝鮮系のホテルの中には北朝鮮政府が開いた北朝鮮料理屋があります。このホテルは、そもそも北京の日本人街である麦子店という場所にありました。

北朝鮮料理は韓国料理を田舎風にしたイメージです。味付けは全く辛くありません。辛いもの好きが多い中国にあって異色の存在です。中国料理である湖南料理や四川料理とは対極にあります。そこで出されているビールは中国産のアサヒ生ビール、演奏に使われている楽器は日本の河合製でした。日本の事は忌み嫌っているだろう、と思っていた私には意外なものでした。従業員が演奏する曲のなかには、北朝鮮政府から指定されたと思われる「悪の帝国アメリカ~、アメリカを殲滅せよ~」という内容の歌もありました。彼女たちは中国語でも歌ううえ、朝鮮語で歌っているときにも中国語字幕が用意されているため、私にも歌の内容が把握できたのでした。

従業員の女性たちは、ある時は韓国人客と一緒に舞台で踊ったり、ある時は誕生会を開いている中国人一家のために、「Happy birthday」を中国語で歌ってあげたりしていました。従業員たちは気さくに挨拶してくれましたが、やはり政府の監視下に置かれているようで、団体生活を強制されているとのことでした。

(ⅱ)丹東の北朝鮮料理店
丹東では有名な北朝鮮の店に行ってみました。外から店の様子を見ると、ちょうど北朝鮮の女性たちが演奏をしながら歌を歌っているところでした。ドアを開け閉めする係りの従業員も美人を揃えており、北朝鮮料理屋の中でも高級店のようでした。期待も大変高まり、いざお店に入ろうとしたところ、その従業員が我々をお店の中に一歩も入れてくれません。理由を聞くと、ある北朝鮮の要人が来店しており、貸切状態との事でした。

仕方なく、別の裏寂れた北朝鮮料理店(さきほどの高級店とは異なり大衆店の趣)に入りました。ここは、上述の北朝鮮政府が開いた店(詳細は後述)とは異なり、働く女性たちといい、どこか場末のスナックのような雰囲気がありました。北朝鮮料理の中には犬肉料理もあり、とにかく何でも挑戦だと私も食べてみたのですが、残念ながらそれほど美味しいとは思いませんでした。北朝鮮の酒は質が悪いのか、あまり飲むと悪酔いします。北京の北朝鮮料理店で飲酒した友人の一人は、「血を吐きそうになった」と言っていたほどです。種類も、きゅうりを入れて飲む焼酎の他、何だかよく分からない酒がありました。

各地の地ビールを飲むことが好きな筆者は、「北朝鮮の地ビールはないの?」と聞いてみたところ、北朝鮮なまりの中国語で「そういうものはありません」と言われました。彼女たちは、北朝鮮出身の朝鮮族の女性に中国語を習っているとのことでした。

話が逸れますが、中国語のなかでも、特徴的なのは、南方の中国人が話す中国語です。彼ら南方人は、普通話(中国語の標準語)では発音に「h」を入れるべきところに「h」を入れません。たとえば、美味しいという意味の中国語、「好吃haochi(ハオチー)」は「haoci」と発言するため、「ハオツー」と聞こえます。これとは逆に、朝鮮族の発音の特徴は、普通話では「h」を入れないところに「h」を入れ、ます。たとえば、中国語でイチゴを意味する「草莓caomei(ツァオメイ)」は「chaomei」と発言するため、「チャオメイ」と聞こえます。

北朝鮮政府直轄の店に派遣されているほどの人であれば、通常の北朝鮮人とは異なるエリートだと思われます。ところが、そもそもなまりのある東北部の朝鮮族に習っているためか、一様に中国語が上手ではありませんでした。北朝鮮のエリート層の中国語を聞いて、なんだか自分の中国語に自信を持ったのでした。

ⅲ.鴨緑江を北へ
昼食を終えた後、鴨緑江沿いの道を北上しました。その間、右手には常に北朝鮮が間近に見えており、所々には北朝鮮側の監視所らしき建物(掘っ立て小屋)がありました。最初に運転手に向かうよう要求したのは、河口断橋でしたが、運転手はその存在すら知りませんでした。「地球の歩き方」を見せながら説明するも、「丹東から30km」と書いてあるこの橋に行くことを運転手は極端に嫌がりました。意地でも行こうかとも考えましたが、これからも北朝鮮国境線を走るのだからまあ良いかとあきらめ、行き先を変更しました。

向かった先は、寛甸満族自治県(満州族の居住区域)にある、明代の万里の長城の東端・虎山長城です。虎山長城は同じ長城でも、北京の八達嶺(日本人が観光に行く長城と言えば、通常、この八達嶺のこと)や慕田峪(橇で滑り降りることができる)、敦煌の玉門間とは違い、無名な上、一番下から徒歩で上り下りしても1時間もかからない規模です。しかしながら、この虎山長城の特色は、頂上から真下に北朝鮮を見下ろせる、というものです。虎山長城から北朝鮮の田園風景を眺めていると、得体の知れない様々な感情が押し寄せてきました。

虎山長城に行き、この日のスケジュールは終了でした。大連への帰路は、北朝鮮首脳が通るときには全面通行止めにされる大連・丹東間の高速道路でした。ようやく大連市内に入り、丹東を出発するときに電話で予約しておいた海鮮料理店へ向かうかと思いきや、到着した先はガソリンスタンドでした。予約した時間が過ぎ行く中、客である我々を先に目的地へ送ることなく、漢族の運転手は悠々と給油をしています。日本なら、接客中に給油してお客の時間をロスする事はあまりないように思われますが、中国人はあくまでもマイペースなのでした。


※吉林省図們から見る北朝鮮
途中から崩れ落ちている橋の向こうは北朝鮮
北朝鮮国境警備隊の監視所が見える

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