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【コラム】中国現場体験記(5) 中国のタクシーとお世辞

中国ビジネスレポート コラム
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

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2011年5月16日

記事概要

中国に進出する日系企業の日本人にとって、中国でのタクシー乗車は中国を実体験できる空間となります。それはどういう意味でしょうか?「以心伝心」に関する中国人と日本人の違い、お世辞を言わない中国人と言う日本人についての現場体験記です。

筆者は中国国内での移動には地下鉄・バス以外にタクシーを多く利用します。タクシーは中国および中国人について多くのことを学べる空間であり、日本でタクシー乗車することとは意味合いが異なると言えます。今回は、中国のタクシーに乗車していた際に、出会った出来事に関する一考察です。

1.中国のタクシー
(1)安価
中国ではタクシーが日本では考えられないくらいに安価に利用できます。日本人からすれば、日本で電車に乗るのと同じような感覚です。多くの中国人もタクシーを度々利用しています(もちろん、北京で言えば、地下鉄一律2元=約25円、バス一律1元=約12.5円、バスの乗車カードを持っていれば、一律4角=5円と、地下鉄・バスの方がタクシーよりも格段に安価であるため、地下鉄・バスの利用者の方が多いですが)。
そのため、日本ではほとんどタクシーを利用しない筆者でも、中国ではタクシーを多用しています。

また、中国では後述するように、タクシー・バス等はあうんの呼吸で運転をするため、自分で車を運転するなど筆者にはもってのほか、自転車を運転することも怖いと感じることが多々ありました。日本企業の多くは、中国では車を自分で運転することは禁止しているようです。これに対して、欧米企業は禁止していない会社も多くあるようで、車の接触等の交通事故を起こし、中国人に囲まれて文句を言われている欧米人も中国各地でちょくちょく見かけました。

(2)中国のタクシーの特徴
中国のタクシーにおける乗車時の特徴は、たとえ客が1人でも助手席に座り運転手と世間話をしながら目的地に向かう、ということです。これは生の中国体験となる良い機会となります(ただし、運転が荒いため、助手席は危険に思えますが。特に、東北地方(黒龍江省、吉林省、遼寧省)の運転手は気が短い人が多いですので、その危なさが増すように感じます)。

中国のタクシー運転手の大半は、かなりの話好きで中国に触れる良い機会になる一方、日本人からすれば、客を客と思っていないような対応を取ることが多々あります。たとえば、客を乗せながら、携帯や無線で、家族や仲間と世間話等をすることは当たり前ですし、乗車拒否なども当たり前のようにあります。行きたくない場所に行こうとする客を乗せてしまい、交通の流れ上発車せざるを得なかったときなどは、客の前で平気で文句を言ってきます。

また、中国人はよく、こちらの言ったことが分からなかったときには、「ああ?」と大きな声を返してきます。タクシーに乗ったときにも、こちらが要求する行先が通じなかったときには、「ああ?」と言われます。日本人からすれば、侮辱されたようにも感じてしまう態度ですが、これは中国人からすれば、一般的な癖で本人には全く悪気はないようです。
ただし、日本人客が多い店では、日本人はこの「ああ?」を嫌うから絶対に言うな!と教育されているところが多いようです。
いずれにせよ、重要なのは、日本人はこのような文化の違いにめげてはいけないということかと思います。

(3)あうんの呼吸
運転も日本人にはない絶妙な「あうんの呼吸」で行うため、筆者が運転手なら、毎日交通事故に遭うのは間違いなしです。中国人同士にしか分からない「あうんの呼吸」というものを感じることになります。逆に、中国では、車も人も列に割り込むことが当たり前ですので、列に割り込まれても誰も怒りません(日本人なら怒る)。

(4)貪欲であること
筆者は、現地滞在中は、いつ何時でも中国人と話す機会があれば、貪欲にその機会を捕まえて中国語で話しかけ、中国語の無料レッスン兼中国現場実務自己学習会を勝手に開催することを心がけていました。

中国人は話好きな人が多いため、こちらから話しかけると喜ばれることが大半です(こちらが話したくないときでも、熱心に話しかけられることも多々ありますが)。また、外国人である日本人と話すことを喜んでいるように見受けることが多々ありました。この点については、日本で報道されている中国人の日本人感とは異なるように思います。筆者は多くの中国人と本音ベースの付き合いをしていたため、中国人の日本人に対する考え方にも触れることができました。中国人(漢族)からすれば、日本人は「けち、悲観的、神経質」だそうです。逆に日本人から見れば、中国人は情報統制されているせいか、「日本の中国に対する円借款等ODAのことを知らない。楽観的過ぎる、いい加減」と感じる部分もありました。中国人の日本人のどちらが良い悪いではなく、考え方の違いだと思えるようになりました。

筆者の中国語の講師の一人は高級官僚の奥さん(日本語は全く出来ない)でしたが、本音で言いたい放題でしたので、中国人の日本観やODAに対する中国人の考えも学ぶことができたのです。政府による情報コントロール下にあるため、高級官僚の奥さんのような層でも、日本の中国に対する円借款等ODAのことを知らないことが多いですし、その他エリート層でも、共産党の指導者問題等のことは日本人以上に知らない人が多いのが実状です。

2.お世辞を言わない中国人とお世辞を言う日本人
上述のように、筆者はタクシーに乗ったとき、食事をするとき、旅行をするとき等、機会を捕まえては中国人に中国語で話しかけ、中国というものを体感するように心がけていました。

(1)お世辞
その中で気付いたのは、中国人は日本人のように(心にも思っていない)お世辞は言わないということです。

日本人は、外国人が「こんにちは。ありがとう。」しか話せなくても、「日本語お上手ですね。」と笑顔で言うことが多々あるように思います。
一方、中国では、間違った中国語や発音(四声)で話しかけると、手厳しく「下手くそ。勉強していてその程度か。子供と同じレベルだな。」等々指摘を通り越して、人の中国語レベルを散々けなされる経験をします。タクシーに乗ったときにも、人の中国語を平気でけなしてきます。こちらは客なのに・・・、と思うのですが、日本人のように表裏を分け、(心にもない)お世辞を言わない分、良い訓練となります。

(2)以心伝心
中国人からすれば、日本人は思ったことを言わないため、腹で何を考えているか分からない、ということになります。逆に、日本人は思ったことを周りや相手に言うことを嫌い、以心伝心で、「俺の(私の)意図を察知してくれ」、という態度を取ることが多々あります。
この「以心伝心」は中国では(特に漢族に対しては)全く通用しない、というのが、筆者の中国体験です。
とにもかくにも、相手が嫌がるのでは、と遠慮をして言葉に出さないのでは、中国人には全く意図が伝わらない、という経験を多くします。良いことも悪いことも、自分の考えは「以心伝心」ではなく、徹底的に言葉に出して伝えないと、中国人には伝わらないのです。
   
3.中国人だってなまっている
中国語(共通語)に関して言えば、そもそも当の中国人自身がすごくなまった中国語を話していることが多々あります(わざとなまった中国語を真似して話すと通じやすいほどです)。むしろ、きれいな共通語を話す人はほとんどいません。首都である北京は他の地域の中国人からすれば北京なまりがきつい、と言われるほどです。

中国大陸は広大であるため、同じ共通語(普通話)であっても、地域によって、話し方の癖がありますし、なまりがあります。共通語と言っても、きれいな共通語を話す人は中央電視台(CCTV、日本のNHKに相当)のアナウンサーくらいで、皆なまっています。北京人も北京語なまりです(共通語とはまた違う北京語の言葉遣いが多々あります)。共通語というのは日本語のようなもので、同じ日本語であっても、東北なまりもあれば、関西弁、名古屋弁、九州弁もあるというのと同じでかなり幅の広いものです(中国大陸はヨーロッパの2倍の面積を誇ることからすれば、日本以上に、なまりに幅のあることを感じていただけると思います)。同じ共通語でも、北京と上海では違う言葉遣いをするのです。

こちらが当の中国人に対して「中国人のくせに中国語がへたくそだな。俺くらい上手な中国語を話してみろ。」と言うくらいに図太く生きる必要があるのが、中国でたくましく生活する秘訣だというのが筆者の現場体験です。

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