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日本製家電が世界から消える日

中国ビジネスレポート コラム
森辺 一樹

森辺 一樹

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2013年11月27日

こんな日が永遠にこないことを心から願っていた。しかし、世界は着実にその日に向かって進んでいる。

1980~90年代、少年期の大半を海外で過ごした私は、日本人であることがこんなにも誇り高いのかと、日々の生活で強く感じたことを今でも鮮明に覚えている。当時、世界は日本製で溢れていた。車、バイク、テレビ、ステレオ、携帯電話、冷蔵庫、洗濯機、身の回りの何もかもが日本製品だった。日本に住んでいれば、当たり前のことかもしれないが、海外に住む日本人にとって、それは何よりの誇りだった。
駐在員は自信に満ち溢れ、日の丸を背負って世界を相手に戦う父親世代は、息子達の憧れの存在ですらあった。そこに韓国や中国、台湾企業の姿は無い。たまにちらつく欧米勢ですら小さな存在に見えた。「向かう所敵無し」、日本企業からはそんな声さえ聞こえてきそうな、それ程に日本は無敵の存在だった。

あれから20年以上が経ち、世界は様変わりしてしまった。テレビはブラウン管から液晶に変わり、韓国勢にその座を奪われた。パソコンは、中国レノボ、台湾エイサー(Acer)、アスース(ASUS)に、いつの間にか抜かれてしまった。冷蔵庫や洗濯機といった白物家電も世界では中国ハイアール(Haier)が首位。 携帯電話に関しては、スマートフォンに変わったこと以前の問題だった。

一方で、高額な掃除機や扇風機を平気で売る英ダイソンやスエーデンのエレクトラックス、米アイロボットなどは、圧倒的なブランド力と独創的なデザインで、他社とは一線を画す。また、高級オーディオシステムを売る米ボーズやデンマークのバング&オルフセン。そして、iphoneやipad、ipodを世界中で爆発的に大ヒットさせたアップルも同様だ。

ほんの10年前、誰が台湾製のパソコンが世界を席巻する日が来ると予測できただろうか。だれが韓国製のテレビや携帯電話がトップシェアを取ると予測できただろうか。
中間層は韓中台に取られ、富裕層は欧米に取られる。そんな構図が世界中で出来上がりつつある。国内市場においても、近い将来、そんな構図は出来上がるだろう。

日本勢は高い技術を持ちながらも、何を誤ってしまったのか。

答えは簡単だ。縮小する国内市場にいつまでも執着し、海外市場、特にアジア新興国を軽視したことだ。未だに国内市場の回復に未練を残す企業は少なく無い。そして、世界の多様性を無視し、日本が考える「良し=高機能・高品質」をそのまま世界に押し付けたことだ。

残念ではあるが、世界の現実を見れば見る程、家電の世界では多くの企業が既にここからの逆転は粗不可能だろう。しかし、決して失望することは無い。世界は大きく変わった。ごく自然なことだ。だからこそ、日本勢は何を残し、何を捨て、何を新たに生み出していくのか、次の新たな成長のために、そのことと真剣に向き合う時期が来ているのだ。

(2012年9月執筆)

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