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人事労務は経営者の仕事:とってもシビアなプロスポーツに学ぶ組織管理。

中国ビジネスレポート コラム
小島 庄司

小島 庄司

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2014年5月21日

コラム概要
プロスポーツの監督は3年で大きな成果を迫られる厳しい世界。海外法人の駐在員の任期もおよそ3年。どんな手を使って過去と一線を画し、新たな目標を立て、チームをまとめ、勝ち癖を浸透させるのか。3年で大きな結果を出さなければならないプロの監督の手法は、駐在経営者にとっても参考になるはずです。
【2,036字】

今年はワールドカップの年。サッカー好きにとって四年ぶりの大イベントがもうすぐ始まります。野球ファンにとって今年の関心事は田中将大投手がメジャーリーグでどこまで活躍できるかでしょうか。日本を離れて十年も経つとテレビで観る機会は減ってしまいましたが、そんな私でも夢中になります。

こういうチームスポーツの世界は、観戦してエキサイトするだけでなく、仕事面でも本当にいろいろ学ぶことが多いです。ということでプロのチームスポーツに学ぶ組織管理。

●非常にシビアなプロスポーツの世界

ここではファン人口の多いサッカーを例に出しますが、皆さん自分の好きなチームスポーツに置き換えてイメージしてください。
皆さんが贔屓のチーム。優勝を争った時代もあったけれど、ここしばらくは中位以下に低迷。そこでオーナーが首脳陣を刷新。新しい監督が招聘された。期待するのはもちろん優勝。いきなり実現は無理でも、少なくとも優勝争いに絡むような快進撃を期待したいところ。さて、皆さんはファンとして成果が出なくても何年ぐらいは辛抱できますか?

5年以上、と答える人はまずいないと思います。まぁ期待が失望に変わるのを避けるため慎重に答えて「3年目には成果が見たい」、というところでしょうか。でも本音は違いますよね。日本代表チームの監督を見てください。1年目の終盤ぐらいにはもう十分なプレッシャーがかかります。結果が上向いていると感じられなければ、一試合ごとに「彼で大丈夫か」「刷新した方が」「いまならW杯に間に合う」などと散々やられます。

実際には、1年目でチームがよい方向に変わっているという「目に見える変化」が求められ、2年目で明らかに順位を上げ(できれば3位争いぐらい)、3年目で優勝争いをするぐらいでないと、その先の契約更新は難しいはず。つまり成果という意味では1年目から求められ、3年目ぐらいには大きな成果を出す必要があるわけです。

●駐在員の任期もちょうど3~4年・・・

これを現地法人の経営に置き換えたらどうでしょう。

過去には作れば作るほど利益が上がり、グループでも優良子会社として名を馳せていた。それがコスト上昇や組織の老化、顧客要求の厳格化などによって、ここ数年は利益がどんどん縮小している。皆さんはこんなタイミングで現地法人の経営を託された。

1年目で組織の雰囲気や顧客折衝などにおいて目に見える変化を出し、2年目に明らかな業績改善・向上を果たし、3年目にはグループ内の他現法や競合他社とトップ争いを演じるところまで持って行く……。シビアだと思いませんか。よくも悪くもこれまでの経営の積み重ねがあるわけですから、言葉が分からず文化や習慣が異なる世界へ飛び込んで1年目から結果を求められるというのは辛い。

でもこれ、プロスポーツの監督も同じなんですよね。

さらに言えば、駐在員には(たぶん)戻る本社があるけれど、プロの監督には後がない。一方で個人事業主であるプロ選手のプライドは、輝かしい学歴や職歴を持つ現地法人の社員たちよりもまだ高くて厄介。外から乗り込んだ監督が短期間で結果を出すためのハードルは、とっても高いんです。

奇しくも、日系駐在員の任期は一般に3?4年。求められるスピード感は外部から招聘された監督とちょうど同じです。彼らがどんな手を使って過去と一線を画し、新たな目標を立て、チームをまとめ、勝ち癖を浸透させるのか。3年で大きな結果を出さなければならないプロの監督の手法は、駐在経営者にとっても参考になるはずです。

●駐在員3年の計

もともと私は『駐在員3年の計』を提唱しています。初めから3年後を見据えて駐在生活に入りましょう!ということです。
普通に3年の任期を過ごしてしまうと、

1年目: 現地の職場や生活や干杯に慣れるので精一杯。何せ言葉が通じないし勝手も違う。
2年目: 慣れてきていろいろなことが見えてくる。ただ、言葉や文化の壁があり思うように組織を動かせない。
3年目: 自分の考えや課題意識に基づいて改革に着手!しかし道半ばでそろそろ帰任の準備が……。

といった感じで消化不良に終わってしまいます。本当に確保したいのは上記3年目の活動時間。
そこで、やりたいことをある程度やり切るには、前半のペースをぐっと上げる必要があります。

1年目: 筆談と確認と管理者面談を武器に、社員と直接話せる関係を築く(言語力はほとんど不要)。
2年目: 社員が「なぜ」を理解できるようケアしながら、方針を示し必要な挑戦や改革に着手する。
3年目: 改革が惰性化や後戻りしないよう弾み車を回しつつ、トップ主導でやってきたことを仕組みに落とす。

これで、自分なりの成果を形にして帰任することができます。

さて、皆さんの任期は何年のうち何年経ったところでしょう。自分なりのゴールを設定していますか。
こんな風に自分の立ち位置を確認しつつ、自分と重ね合わせてプロスポーツの監督を見てみると、観戦の仕方もちょっと変わって来るかもしれませんね。

ではまた次回!

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