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ログイン2017年2月1日
2015年2月28日、中国中央電視台(CCTV)の元キャスター柴静が、中国での大気汚染に関するドキュメンタリー映像「穹頂之下」を中国版YouTubeである動画投稿サイト優酷および人民ネットにアップしました。ここ中国国内でも大きな反響を及ぼしています。2月28日というのは一つの大きなタイミングを意味していそうです。「穹頂之下」の発表から5日後の3月5日より全国人民代表大会および全国政治協商会議(両者を合わせて、「両会」と言います)が開催されることになっていたからです。
今回は、元CCTVキャスター柴静の中国大気汚染ドキュメンタリー映像と中国現地で見られる中国政府からのメッセージ、環境保護に関する動きを紹介します。
1.元CCTVキャスター柴静の中国大気汚染ドキュメンタリー
柴静の中国大気汚染ドキュメンタリーである「穹頂之下」は、中国において多くの賞賛と共感を得ているようです。「穹頂之下」という中国語の題名は、スティーブン・キングの「Under The Dome」を意識してのものです。「Under The Dome」の中に出てくるドームに包まれてしまった街のように、今の中国は大気汚染に包まれてしまっていることを表現しています。
「穹頂之下」の中で、以前は、ロンドン、ロサンゼルスもひどい大気汚染を経験してきたものの、それらを克服し、大幅に改善していることを伝えています。北京でも、以前は空気が白くなっている減少を「霧」と表現していましたが、実際は「霧」ではなく大気汚染だと指摘しています。「雾霾(wumai)とは何か?」という分析を「穹頂之下」の中で柴静自身がデータを基に行っています。
大気汚染の原因として、(ニセ車を含む)自動車、発電所・石油業界などエネルギー分野、製鉄業など工業分野、建築による粉塵を主とするものとして紹介しています。これらの業界は、中央政府による汚職撲滅活動、国有企業改革運動の対象とも合致します。「穹頂之下」の内容は、全人代での環境保護活動、汚職撲滅活動の動きと合致しており、李克強首相による政府活動報告の導入部分を、結果として、中国人民の間に効果的に事前に波及させたとも言えそうです。
2.李克強首相の政府活動報告に合わせた環境汚染対策強化
実際、李克強首相は2015年3月5日の全国人民代表大会(全人代)の開会式における政府活動報告おいて、中国国民の間で不満が高まっている環境汚染に対して、全力で取り組むと表明しました。
上海ロイターの報道によると、山東省の地方当局は中央政府の意図を事前に汲み、全人代開幕日である5日までに、環境基準を満たしていない複数の鉄鋼所を閉鎖しました。中央政府が汚染対策強化に取り組む中、対象となった山東省の鉄鋼所閉鎖で影響を受けた公式な生産量は不明であるものの、取締強化の具体的な活動は、他の鉄鋼所にまで及んできています。鉄鋼業界は、政府の環境対策の対象となっています。需要低迷に直面している生産者にとって、生産コストの上昇につながる、より厳しい環境基準の適合は厳しいものです。環境保護当局は「穹頂之下」が発表された週に、山東省臨沂市と河北省承徳市の市長に対して、環境規制に違反した鉄鋼各社を厳重に取り締まるよう求めていました。あくまでも、中央政府が要求する環境基準への合致が生産継続の前提となっています。山東省臨沂市のある鉄鋼企業の関係者は、「市内の鉄鋼所はほぼ閉鎖された。生産再開のめどは立っていない」と述べています。
3.中国の環境保護活動の動き
中国では、2015年1月1日より新しい環境保護法が施行されています。この内容は非常に厳しいものとなっています。たとえば、企業が環境汚染をもたらした場合、その企業自体のみならず、当該企業の役員に対しても監督責任者の職務怠慢罪が科せられるリスクがあります。実際に、環境汚染物質を近隣に垂れ流していたという嫌疑で拘束され、保釈がなかなか認められない外資企業幹部も存在します。
中国ローカル企業の中には、たとえば、空気中に混じる汚染物質・臭いを濾過したうえ排出する空気濾過装置を法律に基づき表面上は設置するものの、実際には、コスト削減の観点のみからほとんど稼動させていないという企業もあるようです。このような環境保護を重視しない企業は大きなリスクをはらみながら日々稼動していることになります。短絡的な視点は、長期的には企業に大きな損害をもたらし得るということに気付く必要があります。
中国で生活をしていると、中国は、一度やると決めたことは非常に早いスピードで徹底的にやる国家だと感じます。「穹頂之下」の中で例として取り上げられていたロンドン、ロサンゼルスのみならず、パリや東京も、大きな大気汚染のドームの下にあった過去を克服してきた歴史を持っています。中国駐在日本人の中には、中国は今後10年間でさらに大きな変化を遂げるであろう、日本の10年間と中国の10年間はスピード感が違うと感じている方も大勢います。中国のスピード感であれば、今後の10年間でかなり大きな変化を遂げそうです。短絡的な視点は控えるべきであるも、今後、中国とかかわっていくには、中国に合わせたスピード感が必要となりそうです。
以上
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