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大本営主義のワナ

中国ビジネスレポート 組織・経営
小島 庄司

小島 庄司

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2019年7月23日

引き続き、日本本社の皆さんに読んでいただきたい内容です。
前回は、F1仕様(欧米・日本仕様)でダカールラリー(中国市場)に挑んでいませんか? ラリーを甘く見ていると完走さえできません、という話でした。
今回は、中国事業の重要性が再評価され、役員クラスなど重量級の責任者や駐在員が置かれるようになった会社で起こりがちなこと、特に地域本部が集まる上海周辺で気をつけてほしいことです。

●増えると変わる行動様式

海外のホテルのロビーで観察していると、面白い光景にぶつかります。
東洋人が一人か二人。スーツ姿で礼儀正しい振る舞い。フロントで大声を上げることもなく、ごく控えめな印象。
おそらく日本人です。
ロビーで待ち合わせしているのか、ソファの隅の方で遠慮がちに腰をおろしました。
やがて同行の皆さんが集まってきました。二人が三人、四人に。安心したのか、話し声が少し元気になりました。やはり日本人です。
やがて八人、九人。一同揃ったようです。と、先ほどまでの物静かさはどこへやら。笑い声が突然高くなります。
あらら下ネタも解禁。これから夕食と二次会コースでしょうか。ひときわ目立つ一団としてロビーを抜け、夜の街に出ていきました。

なんとなくですが、こういう変化は、絶対的な人数に加え、その場で内輪の人数が相対的に多くなったときに起こるようです。
ごく少数派のときは大人しいものの、場のなかで自分たちの存在感が大きくなると、外部に自分たちを合わせるのではなく、内輪のやり方を優先して外に気を使わなくなる
日系企業の現場でも、同じことが起きています。

●重量級の駐在員が増えると

役員クラス・事業本部長クラスが現地にいるようになったり、地域本部や統括会社が置かれるようになったりすると、間違いなく日本人駐在者も増加します。ここでいくつかの要素が重なります。
□社内における日本人の数が、絶対的にも相対的にも増える。
□役員クラスの登板に対し、周囲が忖度して日本流管理を始める(またはご本人がそれを求める)
この結果、少人数のときは中国社員、中国の環境に気を配りつつ経営管理を行ってきたのが、突然、フル日本流管理に振れます。
上司や本社への報告資料が増加。資料のまとめ方は日本流。資料も会議も日本語で。
これまでは「まぁ急に日本のやり方を無理強いするのも良くないし」だったのが、「うちは○○(日本の会社名)だ。○○のやり方でやる。ついて来られないものは去れ」とやってしまう。
大胆な改革を図るべく、自社の現状や中国の実情を深く把握せず、米国式の制度導入を企画したり、形ありきで人や管理の現地化を進めてしまう(ひどいと、そもそも現地トップの功績づくりが最大の目的だったりする)。
突然の変化について来られない中堅幹部、古参社員が次々に会社を離れるも、ほとんど引き止めることも対策を打つこともしない。
会社内部の光景が大きく変わっていくため、改革をしているかのような錯覚に陥るものの、売上、回収率、生産性は上がるどころか混迷を深めていく・・・。
さらには、上海や香港の本部が、他エリアの実情を理解することもないまま、全国統一の管理統制を強化。
発言権のない他エリア幹部は、迷走する現実に直面しながらも、本部や本社に反論できない。
私はこれを「大本営主義」と呼んでいます。
幹部会議は日本人のみ参加。トップには日本人経由の情報しか上がりません。
この先に、どんな未来が待つのでしょうか。

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