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中国現地経営は日々動く~中国駐在員の悩みと中国所在日系企業、中国民営企業、欧州企業の違い

中国ビジネスレポート コラム
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

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2020年8月5日

中国現地で日本人駐在員として中国人従業員に囲まれながら現地で会社経営をしている際、実は目の前の経営以外に駐在員を悩ますものがあります。それは中国現地会社の状況をいかにして日本本社管理担当者など周囲の方々にいかにして実情を理解してもらうかということです。

今回は、中国現地会社の経営は日々動いていることによる中国駐在員の悩みに関して、筆者が実際に勤務経験した中国所在日系企業、中国民営企業、欧州企業の経営手法の違いを踏まえ紹介します。

1. 中国駐在員には目の前の会社経営があり、従業員の生活がある。

中国駐在員には前提として、目の前の会社(中国現地工場・現地法人)を良くするために日々目の前の会社経営をする必要があります。総経理(社長)など管理者として中国に駐在した場合、営業以外に、財務会計、人事総務(労務)、政府対応、製造対応、購買の他、目の前の中国人従業員とコミュニケーションを取りながら中国現地会社を良くしたいという気持ちをもって働くことになります。
中国現地会社(現地工場)は、その会社が外国企業との合弁か、起ち上げ時の会社か、既に軌道に乗っている会社か、それとも清算に向けて進んでいる会社かという段階によっても課題も対応すべき内容も異なります。製造会社か販売会社かによっても大きく異なります。

筆者は中国現地では、日系企業だけでなく、中国民営企業(オーナー企業)、欧州企業での勤務経験があります。日系企業は中国の法律制度を熱心に勉強し現地規制を遵守します。社員の雇用は極力守ろう(従業員給与を固定費的に考える)とする反面、実は労働争議が起こりやすい特徴があります。中国民営企業と欧州企業は似通った性質を持っている部分があります。似ている部分は会社の業績に合わせた従業員管理の考え方、要求水準に達しない従業員の解雇の仕方です(変動費的に考える)。解雇を激しく行いがちな一方、日系企業ほどには労働紛争は起こらない特徴があります。

また筆者は、日本の商社に入社したつもりが、中国民営企業の立ち上げで武漢市に駐在した時には赤土の大地にプレハブ小屋、トイレはそこに穴を掘っただけという経験をしてきました。日系企業は工場立ち上げの際にはお金をかけてゼネコンに一切をまかせるというやり方をしがちですが、中国民営企業はそれは金の無駄遣いであると考え、自身で一つ一つ下請けを回り、交渉をしていきます。筆者は中国民営企業への赴任早々、床に貼る石の会社、ドアの会社、コンクリート会社等を一つ一つオーナーと共に回ることになりました。

2. 中国現地経営は日々動いている。当該中国現地会社に合わせた判断が必要

日本人の駐在員は一人という中国現地会社も多く存在します。駐在員は目の前に多くの課題を抱えながら少しでも中国現地会社を良くしたいと考え、その経営に立ち向かっています。会社経営は日々動いています。「後出しじゃんけん」はできません。中国のような変化の激しい国での会社経営なら猶更です。現場の経営は毎日動いていることを意識する必要があります。

駐在員も悩みながら試行錯誤しているため、あるときには間違った方向や足りないことも当然あります。そういった場合に相談に乗ってくれたり、方向を正してくれたり、足りない能力(駐在員と言えども万能ではないため、個々人のよって得手不得手は当然あります)を補足してくれる本社の管理担当者は非常に歓迎されます。

一方、以下のスタンスでの関与はうまく行かない恐れもあります。すなわち、①海外管理経験があっても欧米での経験を何でも中国に持ち込もうとしたり、②変化の激しい中国において10年前の知識と経験を押し付けようとしたり、③(周囲の中国人がほぼ日本語を話してくれたり、客先も日系企業がメインという)上海での経験を(周囲の中国人のほぼすべてが日本語も英語も話せず、客先も中国系企業ばかりという)内陸部の会社経営にもそのまま持ち込もうとしたり、④日本企業100%出資企業での経験を外国企業との合弁会社経営に持ち込もうとしたり等です。当該中国現地会社の実情に合わせた経営判断が必要となるからです。

3. 駐在員と共に走る伴走者が必要

駐在員には悩みが多くあります。例えば、日本国内で国内企業向けの営業しかやったことがなかった人が突然、海外に出て、総経理(社長)となり、労務・財務経理・審査法務・政府対応等、管理全般や経営を担わなければならなくなるようなことが多々発生するのが駐在員の境遇です。日本本社で勤務していれば、一人ではなく管理部門等相談相手が周囲にいますが、中国現地駐在員(特に一人駐在員)は孤独であり、本社からの支援がより必要な状況にあります。また、日本本社勤務時は平社員であったにもかかわらず、中国現地工場に赴任した途端、例えば副総経理(副社長)になる等も多々発生します。多くの人が経験のないことに試行錯誤しながら前向きに業務に励んでいます。中国は日本の25倍の国土を誇り、56の民族を抱え、地域によって別の国であるかの如く性格の違う中国人が待ち構える国です。

例えば、筆者は12年前に会社派遣で北京に語学留学したため、一通り中国語も話せますし、その後中国55の世界遺産の内、48の世界遺産に行き、中国のすべての省・自治区・直轄市を巡ってきたりして中国社会にそれなりに馴染んできたつもりでした。しかし、2013年に湖北省武漢市に駐在したときには当地の武漢語の訛りが強く(彼らは標準語ではなく武漢語を話したがる)、中国語の理解に困難を覚え、ショックを受けた経験があります。また武漢人の気質や生活態度、武漢人オーナーの中国民営企業での勤務経験では筆者がそれまで接してきたこととは異なることが多く、この点でもショックを受けたことを覚えています。例えば、武漢人オーナーは家族・親戚を会社内の重要ポジション(財務等お金を握る責任者)に張り巡らせ、家族ではない総経理のことは警戒し、客先との面談時には名刺を渡させないということもありました。他にも、会社は自分の財布も同然故、非常に経費管理に厳しく、一つ一つの歳出に目を光らせ、食堂でも無駄や盗難(卵泥棒というレベル)が行われていないかを監視カメラで管理するなどもしていました。

我々中国駐在員自身も難しい部分はありますが、中国各地や会社形態の違いを極力理解・親しみ、中国語に触れ、直接中国人従業員とコミュニケーションを取り、会社経営全般に目を行き届かせるよう努力すべきでしょう。一方、中国駐在員の多くが、日本本社で中国現地工場の本社側管理を担当する人は、海外や子会社等現地で管理者として苦しんだ経験を持つ人、それを理解する人と共に走ることができると非常に助かるのが現実です。駐在員一人の能力の限界は、専門家による支援や中国人従業員による頑張りで補足する以外に、財務経理、人事総務(労務)、法務・審査、販売・購買、品質管理、製造、技術などの専門家を有する日本本社からの支援が欠かせないからです。

以上

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