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ログイン2013年2月15日
昨今、民事訴訟に係わった企業はご存知と思うが、以前の訴訟手順に比べ、裁判所の立件に先立って頻繁に「訴訟前調停」が行われるようになった。「訴訟前調停」については、現行の「民事訴訟法」には専用規定がなく、たとえ企業が「訴訟前調停」に関する情報を求めても、手懸りがないのではと思われる。本文は最高人民法院が発布した「訴訟と非訴訟とに繋がる矛盾紛争を解決する健全なるメカニズムの確立に関する若干意見」および
Q1:「訴訟前調停」とは?
A:「訴訟前調停」はその名の示すとおり、裁判所が民事事件を受理する前に(必要であれば立件後にも可能である。関連規定に照らせば、ここで言う「民事事件」とは広義の意味であり、具体的には民事、商事、労務、婚姻などの各種事件を含む)、自己の職権または当事者の自由意志による申請に基づき、裁判所が調停員または調停機関に依頼して調停を行うことである。調停成立後は、当事者が提訴を取下げるまたは裁判所が関連民事法律文書を発行し、面倒な訴訟手順は行われない。
「訴訟前調停」は裁判所が推進する「訴訟と調停を組み合わせた多様紛争解決メカニズム」の建設の主要措置である。
Q2:なぜ「訴訟前調停」が行われるか?
A:関連法律文書によれば、「訴訟前調停」の実施は訴訟以外に非訴訟の紛争解決方法を提供し、調和のとれた社会紛争解決を図るためである。筆者の理解では、上記理由の他、直接的な原因として、昨今の民事紛争の急増が考えられる。裁判所は「訴訟前調停」を通じて一部の紛争を処理することで訴訟事件を減少させ、裁判官の作業量を軽減させることを望んでいる。
Q3:「訴訟前調停」は裁判所の強制要求であるか?
A:関連法律文書によれば、「訴訟前調停」は自由意志の原則の下で行われなければならない。実際、裁判所の多くは積極的に当事者に対し「訴訟前調停」への誘導を行っている(程度の差はあれ、おそらく求められる)。なお、当事者が合理的な理由をもって「訴訟前調停」を行わない意思を示せば、通常、裁判所は立件し訴訟手順を進めることになる。
Q4:「訴訟前調停」の大まかな流れは?
A:
【付注】:当事者は既に訴訟資料を提出済みではあるが、裁判所は未だ正式受理の手続を行っていない場合については、「当事者の提訴見送り、裁判所の立件なし」で処理される。既に正式受理の手続が完了してはいるが、裁判所の書類発行を必要としない場合については、裁判所は立件後、当事者の提訴取下げとして処理する。正式受理の手続が完了しており、裁判所の書類発行を必要とする場合については、裁判所は立件後、民事調停書を発行する。
Q5:「訴訟前調停」の成立後に当事者が意志を翻した場合、再提訴可能であるか?
A:民事訴訟関連法の規定によれば、当事者は提訴見送りまたは提訴取下げ後も再提訴可能である。ただし、離婚事件については、提訴取下げ後6ヶ月間は再提訴できない。
Q6:「訴訟前調停」を通じて合意した調停協議書を相手方が履行しなかった場合、強制執行は可能であるか?
A:調停機関が発行した「調停協議書」に関し、当事者は協議発効の日より30日以内に裁判所へ調停協議書に対する審査を請求することが可能であり、裁判所は民事調停書(または確認書)を発行する。審査期間は通常、15日を越えない。裁判所が民事調停書(または確認書)を発行した後、一方の当事者が全てまたは一部の履行を拒否した場合、相手方当事者は裁判所に対し強制執行を申し立てることが可能である。既に30日が経過し時効となったものについては、裁判所は調停協議書に対する審査を行うことができず、調停協議書は強制執行力を持たないため、当事者は裁判所へ提訴する他なくなる。よって、この点を踏まえれば、義務の履行を伴わないまたは直ちに履行ができる事件については、当事者は裁判所へ民事調停書の発行を求めずに調停機関の発行する調停協議書を選択してもよいが、直ちに履行ができない事件については、当事者は裁判所に対し民事調停書の発行を求めるべきであり、調停機関の発行する調停協議書を選択すべきではないと筆者は判断する。
Q7:「訴訟前調停」の費用は?
A: ・商事事件については、基準受理費の20%に基づき徴収する。 【付注】「基準受理費」とは「 A:全体として、メリットは以下のとおり。 Q9:「訴訟前調停」は当事者にどんなデメリットがある? A:全体として、デメリットは以下のとおり。 以上のとおり「訴訟前調停」の基本状況を紹介した。「訴訟前調停」の実施は主として双方の意思により決定されるもので、裁判所が当事者に用意したもうひとつの紛争解決の選択肢であり、当事者に義務を課すものではない。企業は訴訟に臨む前に、実情に基づき「訴訟前調停」実施の可否(当然、裁判所からも求められると思われる)について検討し、いかにして有効に「訴訟前調停」を利用するかを研究することが考えられる。
なし1.訴訟前調停により、当事者の提訴見送り、裁判所の立件なしとなり、訴訟資料が返還された場合。
2.訴訟前調停により、当事者は和解し、裁判所が立件後、当事者の提訴取下げとして処理した場合。
3.労働紛争事件の場合。
発生
(裁判所は立件後、民事調停書を発行する。) 離婚事件
財産総額20万人民元以下(20万を含む)の場合、事件毎に50人民元を徴収する。
財産総額20万人民元以上の場合、基準受理費の10%に基づき徴収する。
非財産事件
基準受理費の20%に基づき徴収する。通常、20人民元が下限。
訴訟金額が1万人民元以下(1万を含む)の場合、事件毎に20元を徴収する。
訴訟金額が1万人民元以上の場合
・民事事件については、基準受理費の10%に基づき徴収する。
財産分与事件
基準受理費の50%に基づき徴収する。
Q8:「訴訟前調停」は当事者にどんなメリットがある?
1. 時間の節約。訴訟前調停の期限は通常で30日であり、双方当事者の同意があれば、60日まで延長することが可能である。訴訟前調停を通じた紛争解決は、民事訴訟の数ヶ月またはそれ以上の審理期間と比べ、時間が大幅に短縮される。
2. 費用の節約。訴訟前調停では、当事者が和解後提訴を取下げた場合、裁判所は費用を徴収しない。裁判所が民事調停書などを発行する場合でも、裁判所は通常、比較的小額の固定金額または基準受理費用の一定比率に基づき徴収するため、費用を少なからず抑えることが可能となる。また、その他のコスト(弁護士費用などを含む)も相応に減額されることとなる。
3. 紛争を協議解決する可能性が高まる。裁判所を通じた調停は、調停人の立場が比較的中立であり、且つ専門性も持ち合わせているため、当事者双方の賛同を得やすく、当事者双方が調停を通じて合意する可能性をある程度高める。これは紛争の拡大を防止し、当事者に対する負の影響を低減することを可能にする。
1. 調停が不調に終われば、却って時間の浪費となる。双方が訴訟前調停で和解終結させられなかった場合、裁判所は改めて訴訟手順を始める必要があり、当事者にとっては訴訟とは別に予定外の手順を踏んだこととなり、時間が浪費される。
2. 当事者が訴訟財産保全を必要とする場合、支障が生じる恐れがある。裁判所の実務では通常、立件後に初めて財産保全を行うことが可能である。訴訟前調停は通常、立件前に調停が行われるため、当事者が訴訟前調停を選択すると、通常、裁判所は立件を行わず、財産保全も実行不可能となり(理論上は「訴訟前の財産保全」措置が存在するが、実際には難度が非常に高く、裁判所は通常、先に提訴立件した上で「訴訟中の財産保全」措置を申請するように要求する)、相手方当事者が訴訟前調停期間中に財産を移転するという支障が考えられる。このような状況では、当事者は裁判所と協議の上、訴訟前調停を行わずに、直接立件して訴訟手順を始めるべきである(理論上では、当事者が立件後に裁判所へ財産保全を申し立て、同時に「訴訟前調停」を申請することも可能ではあるが、当該状況では当事者双方の話合いの余地は少なく、加えて裁判所が財産保全を始めているのであれば、双方が「訴訟前調停」を行うことは困難である)。
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