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ログイン2013年11月1日
中国全国人民代表大会常務委員会は2012年12月28日に「『中華人民共和国労働契約法』の改正に関する決定」を公布し(本法律文書の主な内容はいずれも労務派遣従業員にかかわるものであり、以下「労務派遣新政策」という)、労務派遣新政策は2013年7月1日から施行されている。労務派遣新政策によると、企業は「労務派遣従業員の使用人数を厳格にコントロールし、その従業員使用総数の一定比率を超えてはならない」とされている。この制限規定のため、一部の企業は自社の労務派遣従業員を部分的に労働契約従業員に切り替えなければならなくなった(実務でいう「派遣から正社員への切り替え」)。現時点では、未だ関連比率は正式に公布されていないが(筆者の知るところ、関連比率は現在、人的資源社会保障部が検討中であり、10%前後になると思われる)、一部の企業は既にこれについて積極的に計画を立てている。
「労働契約法」第十条、第五十八条、第五十九条などの規定に照らせば、筆者の考えるところ、企業が行う労務派遣従業員の労働契約従業員への切り替えは、通常、「労務派遣関係の解除」と「労働契約の直接締結」の2段階が必要となり、以下の通りである。
1. 労務派遣関係の解除:労務派遣従業員と労務派遣会社との労働契約の解除および企業と労務派遣会社との労務派遣協議の解除を指す。
2. 労働契約の直接締結:企業が労務派遣関係を解除した後の労務派遣従業員との労働契約の直接締結を指す。
また、企業が上記事項を取り扱うにあたり留意しなければならない関連問題について、筆者は以下の通り簡潔に紹介、説明する。
労務派遣関係の解除
1.労務派遣関係の解除の内容、意義
労務派遣関係を解除する目的は、労務派遣従業員と企業が以後労働契約を直接締結できるよう法的障害を除くためである。現在、実務においては、ほとんどの場合、企業、労務派遣従業員、労務派遣会社が共同で書面による三者協議(以下、「三者協議」という)を締結する方式で解決している(ただし実践において、労務派遣会社ができる限り自己の責任から逃れようと、三者協議への参加に同意しない可能性もある)。前述の三者協議では主に以下の二つの問題を解決することになる。
1) 労務派遣従業員は労務派遣会社と労働契約を解除することについて。
後に企業と労働契約を直接締結するために、労務派遣従業員と労務派遣会社は双方間で以前に締結した労働契約を解除する。理論上、労務派遣従業員と労務派遣会社が労働契約を解除する方法は主として二通りである。第一は、労務派遣従業員が法に従って労務派遣会社に対し労働契約解除の書面通知を行う方法である。第二は、労務派遣従業員と労務派遣会社が協議のうえ労働契約を解除する方法である。労務派遣従業員の経済補償金などの事項の処理を考慮し、現在の実務では、上記三者協議において、第二の方法が労務派遣従業員、企業、労務派遣会社などの三者に比較的受け入れられやすい。
2) 企業と労務派遣会社が労務派遣協議を解除することについて。上記1)で述べた労務派遣従業員については、以後企業と労務派遣会社が以前締結した関連派遣協議で網羅する範囲に該当しないため、理論上、企業と労務派遣会社はこれらの一部の労務派遣従業員について労務派遣関係を解除しなければならない。実務においては一般的に、企業は労務派遣会社と上記三者協議を締結する方式で、前述の労務派遣従業員についての双方の労務派遣関係の解除を確認するため、通常は別途その他の協議などを単独で締結することはない。
2.経済補償金の取扱方案
労務派遣従業員と労務派遣会社が協議のうえ労働契約を解除する状況において、労務派遣従業員のこれまでの企業における勤務年数にかかわる経済補償金(労務派遣関係においては、経済補償金の一般的な名目上では労務派遣会社が支払うべきものであるとしても、実際には企業が労務派遣協議の取決めに従って全て負担する)の問題については、以下の二つの方案から選択することができる。
1) 経済補償金を支払い、新規に勤務年数を計算する。労務派遣従業員のこれまでの企業における勤務年数に基づき、法定基準に照らして経済補償金を計算、支給する。企業が労務派遣従業員と労働契約を直接締結した後で、企業が労務派遣従業員との労働契約を法に従って解除、終了する際に経済補償金を計算、支給しなければならない場合、労務派遣従業員が企業と労働契約を直接締結した後の相応する勤務年数を計算するだけでよい。
2) 経済補償金の支払いを行わず、勤務年数を合算する。労務派遣従業員と労務派遣会社が労働契約を解除する際、これまでの企業における相応の勤務年数について、経済補償金を支払わず、前述の勤務年数を企業が労務派遣従業員と労働契約を直接締結した後の勤務年数に合算し、将来企業が労務派遣従業員との労働契約を法に従って解除、終了する際に経済補償金を計算、支給しなければならない状況になった時点で、前述の合算後の勤務年数に基づき、経済補償金を計算、支給する。
「労働契約法実施条例」第十条などの規定に照らせば、筆者の考えるところ、現行法の条項には企業、労務派遣会社に対し労務派遣従業員について「勤務年数の買取」を義務付ける規定はなく、上記いずれの方案も適法であり、選択、応用することが可能と思われる。実務においては、方案1)には「勤務年数を買取り、新たに計算を開始することで、両者に貸し借りがない」という特徴があり、方案2)には「差し当たり買取りは行わずに合算し、即時に支払う必要はない」という特徴があると筆者は考える。
実務においては、労務派遣関係を解除した上で、各自の具体権利義務を確定し、労務派遣従業員の疑念などを取り除くために、労務派遣従業員、企業、労務派遣会社などの三者が上記1、2項の内容について共同で三者協議を締結することも考えられる。
労働契約の直接締結
「労働契約法」の関連規定によれば、労務派遣関係では、労務派遣従業員と労務派遣会社が労働契約を締結し、労務派遣会社は法定の使用者となる。後に企業と労務派遣従業員が労働契約を締結した時点で、企業は法定の使用者となる。よって、労務派遣従業員が労働契約従業員に切り替わる際、実務においては前後一貫して企業のために勤務するにもかかわらず、法律上ではその所属する使用者が異なる。よって、企業が本人と労働契約を直接締結する際には、以下の事項について明確な取決めを行うことに留意しなければならない。
1.労働契約の開始日
「労働契約法」第七条の「使用者は従業員を使用した日から直ちに労働者と労働関係を確立し・・・・・・」の規定によると、労務派遣従業員と企業が労働契約を直接締結する前後では、双方間の法的関係は異なるため(労働契約の直接締結前は労務派遣従業員と企業の間に直接の労働法律関係は存在せず、労働契約の直接締結後に労務派遣従業員と企業の間は直接の労働法律関係となる)、労務派遣従業員と企業が労働契約を直接締結した後のかかる具体権利義務に影響があるものと筆者は考える。よって、労務派遣従業員のこれまでの企業における勤務年数を区別するため、企業が労務派遣従業員と労働契約を直接締結する際には、労働契約の開始日を別途取り決めることで、労務派遣従業員のこれまでの企業における勤務年数を排除し、当該期日に基づき新たに労務派遣従業員の企業における勤務年数を計算する必要がある。
2.期間の定めのない労働契約締結の法定条件に関する事項
「労働契約法」第十四条第二項第(一)、(三)号などの規定によると、労働者の企業における勤続年数が10年を満たし、または期間の定めのある労働契約を連続2回締結した場合、企業は法に従って本人と期間の定めのない労働契約を締結しなければならない。筆者の見解では、上記法律条項には明確な説明がないとしても、上記法律条項を適用する前提が労働者と企業との直接の労働関係の存在であることから、労務派遣従業員が企業と労働契約を直接締結する前は、双方に直接の労働関係は存在しないため、その間の相応する勤務年数または期間の定めのある労働契約の締結回数については、上記法律条項を適用できないと判断する。実務においては、企業が労務派遣従業員と労働契約を直接締結する際には、労務派遣従業員のこれまでの企業における勤務年数は継続計算せず、これまで企業に派遣される際に労務派遣会社と労働契約を締結した回数は本人と企業が労働契約を締結した回数に合算しないことを明確に取り決めることを提案する。
3.医療期間について
現行の国および地方の医療期間に関する政策に照らせば、労働者が法に従って享受する医療期間の長さは、労働者の企業における勤務年数と関連している。弁護士の見解では、上記2で述べた通り、関連政策に明確な説明がないとしても、上記法律条項を適用する前提が労働者と企業との直接の労働関係の存在であることから、労務派遣従業員が企業と労働契約を直接締結する前の勤務年数を区別し、今後の紛争発生を抑えるために、企業が労務派遣従業員と労働契約を直接締結する際には、労務派遣従業員が享受する医療期間は本人と企業が労働契約を直接締結した後の勤務年数に基づき計算、確定することを明確に取り決めることを提案する。
4.その他
上記1、2、3項以外にも、労務派遣従業員を労働契約従業員に切り替える際には、具体状況に応じて、その他の事項の調整にもかかわる可能性があり、例えば以下の通りである。
1) 労務派遣従業員が企業と労働契約を直接締結した後の、本人の賃金、社会保険事項に関する具体的な処理については、企業が自ら直接処理しても、企業が労務派遣会社に別途委託して代行させても構わない。
2) 労務派遣従業員が企業と労働契約を直接締結する前に、企業が例えば本人と研修服務期間協議、競業避止協議などの個別協議を締結していた場合、双方が労働契約を直接締結した後はいずれも相応に調整する必要がある(例えば、関連協議で取り決めた内容が労務派遣会社の権利義務にかかわる場合は相応に変更する必要があるなど)。
労務派遣従業員の労働契約従業員への切り替えは、専門的で複雑な作業であり、労働法律関係の多岐にわたる調整にかかわるものである。本文ではその主な留意点を簡潔にまとめたが、実務においては、労務関連の法的リスクをできる限り抑えるため、企業は自己の労働規則制度に照らし、専門家の意見を基に、事前に周到な対応方案を定めておく必要がある。
(里兆法律事務所が2013年8月8日付で作成)
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