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ログイン2013年10月21日
不動産取引は企業間でよく見られる取引活動であり、企業が拡大再生産を実現し、投資の多様化を図る方法の一つである。本文では中国における企業間不動産取引によく見られる方式とその関連税務事項について、以下の通り簡潔な分析を行った。
中国法の規定ならびに実務操作の慣例に照らし、中国における企業間の不動産取引の主要方式について、筆者は以下の【表一】に簡潔にまとめて説明する。
方式 | 名称 | 概念 |
一 | 資産譲渡 | – 不動産を譲渡する企業(以下、「譲渡人」という)は、自己の不動産を譲り受ける者(以下、「譲受人」という)へ譲渡する。 – 本取引は二つの主体にかかわり、取引対象は譲渡人の不動産である。 |
二 | 持分譲渡 | – 不動産を譲渡する企業の株主(以下、「譲渡人」という)は、自己の当該企業(以下、「対象会社」という)における持分の全てまたは一部を譲り受ける者(以下、「譲受人」という)へ譲渡し、譲受人が対象会社の株主あるいは支配株主となり、譲受人が不動産を実際に利用するという目的を実現する。 – 本取引は三つの主体にかかわり、取引対象は対象会社の持分である。 |
三 |
先に子会社を設立し、後に持分を譲渡する | – 不動産を譲渡する企業(以下、「譲渡人」という)は、不動産を評価、出資して全額出資子会社(以下、「子会社」という)を設立し、譲渡人の子会社における持分の全てを譲り受ける者(以下、「譲受人」という)へ譲渡し、譲受人が子会社の株主となり、譲受人が不動産を実際に利用するという目的を実現する。 – 本取引は三つの主体にかかわり、取引対象は子会社の持分である。 |
備考:
中国法の「土地建物の一本化」の原則により、建物(工場、倉庫、事務棟、店舗、分譲住宅などを含み、企業を取引主体とする不動産取引において、各種建物の取引における税負担は基本的に同じである)とそれが占有する土地使用権は通常、取引の際同時に譲渡される。よって、本文では建物と土地を区分せず、それらを併せて「不動産」としている。また、本文では譲渡人、譲受人いずれも企業である状況についてのみ説明する。
不動産取引の上記三つの取引方式の税負担について、筆者は以下の【表二】に簡潔にまとめて説明する。
番号 | 関連税目 | 税負担者 | 方式一 | 方式二 | 方式三 | |
事前の 子会社設立 |
後続の 持分譲渡 |
|||||
1 | 企業所得税 | 譲渡人 | ○ |
○ |
○ |
○ |
2 | 営業税および その附加 |
譲渡人 | ○ |
△ | × | △ |
3 | 土地増値税 | 譲渡人 | ○ |
△ | × | △ |
4 | 不動産取得税 | 譲渡人 | ○ |
△ | × | △ |
5 | 印紙税 | 譲渡、譲受の双方 | ○ |
○ |
○ |
○ |
備考:
① ○…「納付の必要あり」を示す。
② ×…「納付の必要なし」を示す。
③ △…「通常は納付の必要なしであるが、特別な状況では納付の必要あり」を示す。
上記「方式一」の税負担について、筆者は以下の【表三】に簡潔にまとめて説明する。
番号 | 関連税目 | 主要法律根拠および概要説明 |
1 | 企業所得税 | – 「企業所得税法」などの規定によると、不動産譲渡収入は相応するコストを控除した後、当年度の課税所得額に計上し、25%の税率に照らして企業所得税を納付しなければならない。 |
2 | 営業税およびその附加 | – 「営業税暫定条例」、「営業税若干政策問題に関する通知」などの規定によると、不動産譲渡の「全収入より不動産あるいは土地使用権の取得または譲受原価を差し引いた後の残金」について、5%の税率に照らして営業税を納付する。 – 「都市維持建設税暫定条例」などの規定によると、営業税の一定割合(各地で差異があり、例えば上海市区営業税附加の割合は通常営業税の13%であり、すなわち上海市区の営業税およびその附加の割合は5.65%となる)に照らして営業税附加を徴収する。 |
3 | 土地増値税 | – 「土地増値税暫定条例」などの規定によると、不動産の付加価値部分について、法定の四段階の超過累進税率(それぞれ30%、40%、50%、60%)に照らして土地増値税を納付する。 – 不動産の付加価値が正確に計算できないなどにおいては、実務において不動産譲渡総額(契約記載金額)の一定割合(通常は3%前後であり、各地で差異がある)に照らして土地増値税を納付ように要求することもある。 |
4 | 不動産取得税 | – 「不動産取得税暫定条例」などの規定によると、不動産譲渡総額(契約記載金額)の一定割合(通常は3%から5%であり、各地で差異がある)に照らして不動産取得税を納付する。 |
5 | 印紙税 | – 「印紙税暫定条例」などの規定によると、不動産譲渡総額(契約記載金額)の0.05%に照らして印紙税を納付する。また、譲受人は不動産権利書の手続き時に、通常、物件毎に印紙を貼り付ける必要もある(物件毎に5人民元)。 |
上記「方式二」の税負担について、筆者は以下の【表四】に簡潔にまとめて説明する。
番号 | 関連税目 | 主要法律根拠および概要説明 |
1 | 企業所得税 | – 「企業所得税法」などの規定によると、持分譲渡収入は相応するコストを控除した後、当年度の課税所得額に計上し、25%の税率に照らして企業所得税を納付しなければならない。 |
2 | 営業税およびその附加 | – 「持分譲渡関連営業税問題に関する通知」、「土地増値税暫定条例」、「企業事業組織の改編再編の不動産取得税政策に関する通知」などの規定によると、持分譲渡では営業税およびその附加、土地増値税、不動産取得税を納付する必要はない。 – しかし、留意すべきこととしては、「持分譲渡名目での不動産譲渡行為の土地増値税徴収問題に関する回答」、「持分譲渡が土地使用権変更に関わる場合の関連問題に関する回答」(以下、「二つの回答」という)の規定によれば、一度に100%持分の譲渡が行われ、持分の形で示される資産が主として土地使用権、地上建築物および付帯物である場合は、資産譲渡と見なされ、法に従って土地増値税を納付しなければならない(具体的には下記の備考を参照のこと)。 |
3 | 土地増値税 | |
4 | 不動産取得税 | |
5 | 印紙税 | – 「印紙税暫定条例」などの規定によると、持分譲渡総額(契約記載金額)の0.05%に照らして印紙税を納付する。 |
備考:
上記二つの回答は土地増値税についての規定のみを設けただけであり(営業税およびその附加、不動産取得税については言及していない)、実務においては各地の税務機関の理解と実施における尺度に差異があるにもかかわらず、二つの回答の適用対象がはっきりしているため、実務では「持分譲渡」を「資産譲渡」と見なされ、納税(営業税およびその附加、土地増値税、不動産取得税を含む)を求められた先例がある。納税を求められる際には、実務において、通常では以下の方法のいずれかで税額算出の基数を確定する。
① 持分譲渡金全額を直接「不動産譲渡金額」と認定する。
② 持分譲渡における不動産部分について価格評価を行い、当該評価額を「不動産譲渡金額」とする。
上記「方式三」の税負担について、筆者は以下の【表五】に簡潔にまとめて説明する。
番号 | 関連税目 | 主要法律根拠および概要説明 | |
事前の子会社設立 | 後続の持分譲渡 | ||
1 | 企業所得税 | – 「企業所得税法」などの規定によると、不動産による出資は非貨幣性資産の交換に該当し、販売と見なされ、相応するコストを控除した後、当年度の課税所得額に計上し、25%の税率に照らして企業所得税を納付しなければならない。 |
– 「企業所得税法」などの規定によると、持分譲渡収入は相応するコストを控除した後、当年度の課税所得額に計上し、25%の税率に照らして企業所得税を納付しなければならない。 |
2 | 営業税およびその附加 | – 「持分譲渡関連営業税問題に関する通知」、「土地増値税暫定条例」、「土地増値税のいくつかの具体問題の規定に関する通知」、「企業事業組織の改編再編の不動産取得税政策に関する通知」などの規定によると、不動産を評価、出資して、事前の子会社設立、後続の持分譲渡の二つの段階いずれも、通常では営業税およびその附加、土地増値税、不動産取得税を納付する必要はない。 – しかし、下記の二つの特別な状況については留意が必要である。 ① 新設会社が不動産を除く他の資産が少なく(「公司法」などの規定によると、譲渡人が子会社を設立する際には、現金出資は少なくとも子会社登録資本の30%を占めなければならず、即ち、価格評価して出資する不動産は多くとも登録資本の70%までである)、且つ一度に100%持分の譲渡が行われる場合は、二つの回答に基づき、上述【表四】の状況と同じとなり、資産譲渡に該当すると認定され、納税を求められる可能性がある。 ② 「土地増値税の若干問題に関する通知」などの規定によると、譲渡人または「事前に設立される子会社」が不動産開発業務に従事する企業である場合、価格評価して投資された不動産については、土地増値税を納付しなければならない。 |
|
3 | 土地増値税 | ||
4 | 不動産取得税 | ||
5 | 印紙税 | – 「印紙税暫定条例」などの規定によると、子会社は資金帳簿に記載された金額の0.05%に照らして印紙税を納付しなければならない。また、子会社は不動産権利書の手続き時に、通常、物件毎に印紙を貼り付ける必要もある(物件毎に5人民元)。 | – 「印紙税暫定条例」などの規定によると、持分譲渡総額(契約記載金額)の0.05%に照らして印紙税を納付する。 |
上記分析に基づき、企業間不動産取引の三つの取引方式の利害状況について、筆者は以下の【表六】に簡潔にまとめて説明する。
区分 | 方式一 | 方式二 | 方式三 | |
取引前 | 調査コスト | 低い | 高い | 低い |
取引中 | 税負担 |
重い | 通常は軽い | 通常は軽い |
取引手続き | 簡単 | 簡単 | 複雑 | |
取引時間 | 短い | 短い | 長い | |
取引後 | リスク | 小さい | 大きい | 大きい |
備考:
① 方式一:手続きは簡単で、初期調査コストは低く、リスクも小さいが、税負担は重い。
② 方式二:税負担は通常では軽いが、取引前に譲渡人の財務状況、債権債務関係などについて周到且つ慎重な調査を行う必要があり、通常は「譲り受ける不動産」の価値を遥かに超える対価を支払わなければならない。
③ 方式三:手続きは複雑であり、所要時間も長く、且つ特別な情況(詳細は【表五】を参考のこと)において、税負担は重くなるものと思われる。
以上のとおり、企業間不動産取引の三つの方式に関する主な税負担について簡潔に説明したが、実際に企業が不動産取引を行う際は、税負担を考慮するのみにとどまらず、取引の特定目的達成の可否、取引の遵法性、総合的な取引コストなどのその他の要素にもかかわってくる。また、税負担にしても、地域により特定の税目納付の有無、税率の高低などに一定の差異が存在し、更に検討する必要がある。これらはいずれも取引方式の選定に不確定性をもたらし、取引現地の法規、政策を研究した上で、取引の実際の必要に応じて総合的に判断し、周到且つ慎重に選択する必要がある。
(里兆法律事務所が2013年5月21日付で作成)
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