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「外資三法」の改正意見と展望

中国ビジネスレポート 法務
邱 奇峰

邱 奇峰

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2014年4月23日

「外資三法」(「外資企業法」、「中外合弁経営企業法」、「中外合作経営企業法」)の公布は、中国の「改革開放」初期(前世紀70年代末、80年代初頭)に遡ることができる。当時、中国の発展には国外の資金、技術、管理経験などの優位性ある資源を切に必要としており、このため関連法律根拠により規範化と保障を行う必要があった。ところが、その年代には、法律が解決しなければならない問題は未だ出現しておらず(実践経験が乏しい)、立法技術にも限りがあったため、会社法律制度の構築もいささか不慣れであった(「会社法」の公布も前世紀90年代のことである)。「外資三法」はこのような時代背景の下、時運に応じて生まれたものであった。

その後30年余りの間に、中国の外資利用に関する政策は次第に論理的になり、「会社法」も公布され絶えず整備が進められ、内外資企業が税法上統一された後は、基本法のレベルにおいても「内外資統一」の呼び声が高まってきた。「外資三法」には奥深い時代背景があり、このため法律の適用においては、限定的なものとなり、延いては過去のものとなっている。

これら歴史的要因の後押しもあり、「外資三法」の改正は正式に中国全国人民代表大会常務委員会の五箇年(2013-2018)立法計画に盛り込まれた。「外資三法」改正の起草をつかさどるのは商務部条法司で、2013年12月に社会各界から改正意見を広範囲に求めており、「外資三法」の改正作業は既に始まっている。本文においては、「外資三法」の改正方向と改正内容について、その予想と展望をまとめた。これは当所の「外資三法」に対する改正提案でもある。

改正方向の予測

2013年、中国(上海)自由貿易試験区(以下「自由貿易区」という)は正式に名称を掲げ成立した。自由貿易区は中国における今後の外商投資監督管理体制などの制度改革の「試験地点」と見られており、自由貿易区において試行が成功した政策は、一定期間の後、全国範囲で推し進められる可能性が高いと思われる。現在、自由貿易区では参入前内国民待遇、ネガティブリスト管理(ネガティブリスト以外の分野における審査許可制から届出制への変更などを含む)、登録資本引受制などの政策の試行が既に始まっている。

その他、昨今では「会社法」の改正も行われ、登録資本払込制から引受制への変更が正式に確認された。

自由貿易区の試行政策の如何を問わず、「会社法」の改正は、いずれも中国の投資監督管理方式の転換に直接かかわるものであり、本方面に関する内容は、同じく「外資三法」の改正に適用されるものと判断する。これに基づき、「外資三法」の改正は以下の方面で行われるであろうことが予想される。

1.三法統一:「外資三法」の制定と公布には奥深い時代背景があるが、現在、「外資三法」を分けて制定しなければならない実質的な必要はなく、外商投資企業については原則として一つの新法を必要とするのみである(例えば「外商投資企業法」)。よって、今次「外資三法」改正方式は、改めて新法の制定を行い、旧三法の個別改正は行わないことが予想される。

2.市場参入:現行の市場参入機構の主な根拠は「外商投資産業指導目録」であり、産業毎に奨励、許可、制限、禁止の異なる待遇が存在する。自由貿易区において既にネガティブリスト管理政策が試行されていることに鑑み、昨今中国政府が投資協定に関する協議への注力を強化していることと併せ、市場参入機構において国際的に通用している方法により近づくという要望が更に突出し、今次「外資三法」の改正では、ネガティブリスト管理政策が正式に確認されるものと予想される。

3.行政審査許可:外商投資企業の設立および変更は商務、工商、税務、品質監督、外貨、税関などの多くの部門の関連手続きにかかわり、時間、コストがかかる。自由貿易区において既に企業の登記設立前の「審査許可手続き」が「届出手続き」への変更が試行されている(ネガティブリスト以外の分野)ことに鑑み、今次「外資三法」の改正では、関連行政審査許可手続きの簡素化が正式に確認されるものと予想される。

4.管理構造:現行の「外資三法」およびその実施細則/条例における外商投資企業についての管理構造に関する規定は「会社法」の関連規定と合致していない。関連政府部門は「外商投資の会社審査許可登記管理への法律適用に伴う若干事項に関する実施意見」(工商外企字[2006]第81号)において、「会社法」と「外資三法」の具体的な適用と実施に関する事項(大まかには、外商投資企業について、「外資三法」は「会社法」に優先し、「会社法」は外商投資に関するその他の規定に優先する)を明確にしたが、当該実施意見はあくまでも部門規範性文書であり、法律のレベルで関連法律法規の適用と実施に関する事項を確認することは必要である。「会社法」は幾度かの改正を経て、既に良好な適応性を備えているため、今次「外資三法」の改正では、「会社法」の関連規定をより多く参考にし、または直接引用するであろうことが予想される。

5.内国民待遇:中国の対外開放水準の絶え間ない向上に伴い、現段階では、法律面および実務面において、外商投資企業の「内国民を上回る待遇」は既に少なく、且つ逐次取り消される傾向にあるが、一方の外商投資企業の「内国民を下回る待遇」は一部の地域および一部の分野において依然として存在する(例えば、予定外の審査許可を必要とするなど)。自由貿易区において既に参入前内国民待遇などの政策が試行されていることに鑑み、今次「外資三法」の改正では、「内国民待遇」が主要原則となるであろうことが予想される。


改正内容の予想

上記改正方向に関する説明に照らし、今次改正内容の予想について、以下の通り表にまとめた。

事項 現行規定 改正予想
1.適用および効力 ・その他の法律法規との適用関係および効力の優先状況を確認するものと思われる。
今次「外資三法」の改正では、外商投資企業に関する一般事項は「会社法」、「パートナーシップ企業法」などの一般法に照らして実施することが明確にされ、外商投資企業としての特殊性に関する事項についてのみ規定が設けられるものと思われる。
2.資本参加 ・個人が中国側共同経営者として中外合弁経営企業に参加することを認めていない。

【関連する法律根拠】「中外合弁経営企業法」第一条など。

・個人が中国側共同経営者として中外合弁経営企業の共同経営に参加することを認めるものと思われる。
個人が中外合弁経営企業の中国側共同経営者となれるかについては、現在の市場条件と制度条件に照らせば問題なく実行可能である。また、「外国投資者の国内企業の買収・合併に関する規定」などの規定に照らせば、国内企業の自然人株主は、外国投資者が国内企業を買収・合併した際に、外商投資企業の株主として存在することができる。

・外商投資企業の機構形態を整理し、駐在員事務所、出張所などの形態で従事可能な業務範囲を確定するものと思われる。
今次「外資三法」の改正では、外商投資企業の形態(外商独資企業、外商合弁企業、中外合弁企業、中外合作企業などが含まれる)について改めて整理するものと思われる。この他、外国企業の駐在員事務所、出張所、および直接中国で生産経営に従事する外国企業などの形態についても、統一的な認定と規定を設けた上、法律面でこれらの形態が従事可能な業務範囲を明確にすることも考えられる。

3.市場参入 ・市場参入機構には「指導目録」形式による管理を採用する。

【関連する法律根拠】
「外資企業法」第三条、「中外合弁経営企業法実施条例」第三条など。

・「指導目録」形式を「ネガティブリスト」形式に転換するものと思われる。
対外開放水準の絶え間ない向上に伴い、「ネガティブリスト」という国際的に通用している方法に、より合致する投資管理機構が、今後の外商投資監督管理のトレンドになる。

・内外資統一の「国家奨励投資産業目録」の制定に着手するものと思われる。
「ネガティブリスト」制度の実施後、旧「指導目録」において奨励類に該当した産業については、内外資統一の奨励投資産業目録を制定し、内外資企業、産業別企業間全体の平等な対応を実現すると同時に、ハイテク、環境保護、公益などの産業にかかわる企業に対する奨励と優遇政策を維持するものと思われる。

4.行政審査許可 ・設立、変更登記前に商務部門(旧対外貿易経済合作部門)にて審査許可手続きを行う。

【関連する法律根拠】
「外資企業法」第六条から第十条、「中外合弁経営企業法」第三条など。

・企業登記前の「審査許可制」を「届出制」に変更するものと思われる。
国務院が個別の文書を発布して自由貿易区における「審査許可制」から「届出制」への変更を実施し一切の法規、政策の障害を除くに伴い、中国が今後、外商投資に対し「参入を緩和し管理を厳格にする」新政策を実施する姿勢と方向性が十分に明らかになった。「審査許可制」から「届出制」への変更も重点事項の一つとなるであろうことが予想され、これにより国際的に通用している方法に、より近づくことになる。

・外国投資者の出資比率、出資型式、出資期限などに関する規制が取り除かれるものと思われる。
「会社法」が上記内容の規制を取り消すに従い、今次「外資三法」の改正でも関連した変更が行われ、上記内容の規制を取り消すであろうことが予想される。

・事務手続きが簡素化され、各行政部門の事務処理の効率が高まるものと思われる。
外商投資企業の設立、変更手続きの相対的に複雑で煩雑な特徴に対し、今次改正後は、一部手続きが簡素化されるものと思われ、手続き所要時間も短縮されるであろうことが予想される。自由貿易区内で現在試行されている工商部門を要とした「ワンストップ受理」方式は、今後も参考にされるものと思われる。

5.管理構造 ・内外資の最高意思決定機関が一致せず、監査役または監査役会設置の必要性も確定していない。

【関連する法律根拠】
「中外合弁経営企業法」第六条など。

・内資企業と外資企業には統一的に「会社法」が適用されるものと思われる。
「外商投資の会社審査許可登記管理への法律適用に伴う若干事項に関する実施意見」で定める関連法律法規の具体的な適用と実施に関する原則に照らし、管理構造に関し、今次「外資三法」の改正では、「会社法」における規定を多く引用し、または「会社法」を適用すると直接規定するであろうことが予想される。

6.内国民待遇 ・外商投資企業の財務税務、労務、外貨などにおける権利義務を規定した。

【関連する法律根拠】
「中外合弁経営企業法」第八条から第十二条、「外資企業法」第十一条から第十九条など。

・「内国民待遇」の原則を徹底し、同時に外商投資企業の特殊性も考慮するものと思われる。
今次「外資三法」の改正では、外商投資企業の投資決定、日常経営、雇用、利益還流などに関する自主権と法的権益が明確になるであろうことが予想される。

今次「外資三法」の改正では、「会社法」などの法律制度との整合性を確保し、且つ実務上の必要を満たすと同時に、現行の外商投資に関する法律法規を整理し指導する作用を発揮するであろうことが予想される。

上述の予想と展望は、当所の今次「外資三法」の改正に対する提案でもある。無論、立法部門は最終的に各方面の要素、各方面の意見を総合的に考慮して、総合的な判断、選択を行うであろう。「外資三法」の改正については、当所も今後、継続的に注目していく。

(里兆法律事務所が2014年1月29日付で作成)

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