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ログイン2014年5月29日
国務院は2014年2月7日に「登録資本登記制度改革方案」を承認した。本方案は、登録資本登記制度、企業年度検査制度等の改革を通じて、市場主体の参入管理を一層緩和し、市場主体に対する管理方式を転換した。本文においては、筆者は関連法律法規及び実務経験に基き、本方案について簡潔に紹介し解説する。
2005年に改正された「会社法」及びその付帯的な商事登記制度は、コスト高、政府の過度の干渉、企業情報の不透明さなどの弊害を徐々に露呈してきた。2012年末以降、広東省の東莞、深セン、珠海、中国(上海)自由貿易試験区では相次いで工商登記制度改革の「テスト」が行われ、2013年12月28日に改正された「会社法」は更に国家立法レベルで登録資本引受登記制度などの改革措置を確立した。
上記背景に基づき、2014年2月7日、国務院は「登録資本登記制度改革方案の公布に関する国務院の通知」(国発〔2014〕7号)を公布し、正式に全国範囲で登録資本登記制度改革方案(以下「本方案」という)を実施することを正式に承認し、更に詳細化し、各項の改革措置を明確にした。
以下の文では、筆者は本方案において企業が着目している改革措置について、簡潔に紹介し解読する。
1. 登録資本引受登記制の実施、登録資本登記条件の緩和
具体的には以下の内容が含まれる。
■登録資本は払込登記制から引受登記制に変更される。筆者は「自由意志による引受+政府登記+社会公示」とまとめた。
・会社株主(発起人)はその引受出資額、出資方式、出資期限などを自主的に取り決めた上、会社定款に記載しなければならない。
・会社株主が引き受けた出資総額または発起人が引き受けた株式資本(即ち会社登録資本)は工商部門にて登記を行わなければならない。
・会社は、株主が引き受けた出資額または発起人が引き受けた株式、出資方式、出資期限、払込状況について市場主体信用情報公示システムを通じて社会へ公示しなければならない。
■登録資本登記条件を緩和する。筆者はこれを「四つの廃止」としてまとめた。
・登録資本最低限度額を廃止した。法律、行政法規および国務院の決定で特定業種の登録資本最低限度額について特段の規定がある場合を除き、有限責任会社の最低登録資本3万元、一人有限責任会社の最低登録資本10万元、株式会社の最低登録資本500万元の規制を廃止した。
・「会社設立時における全株主(発起人)の初回出資割合」に関する規制を廃止した。
・「会社全株主(発起人)の貨幣出資金額が登録資本に占める割合」に関する規制を廃止した。
・「会社株主(発起人)の全額出資期限」に関する規制を廃止した。
■会社の払込資本については、以後、工商登記事項としない。会社登記の際には、出資検証報告書の提出を必要としない。
■現行の法律、行政法規および国務院の決定により、登録資本払込登記制を実施すると明確に規定されている会社については、当面の間、現行規定に基づき執り行う。
【筆者の観点】
■株主は自己の引き受けた出資額を上限に会社の債務に対し責任を負うため、自己の引き受けた出資額が高いほど、会社の債務に対し負う責任も大きくなる。よって、出資者は登録資本払込登記制が引受登記制に変更されたからといって、恣意に引き受けるべきではない。
■初回出資割合、全額出資期限などに関する規制が廃止されたとしても、株主は会社定款に定められた出資期限に基づいて出資義務を履行しなければならず、さもなければ、会社に対する満額出資を行わなければならない以外にも、既に期日どおりに満額出資を行ったその他の株主に対する違約責任を負わなければならない。
■全ての企業が登録資本最低限度額を取り消されたわけではなく、外商投資性会社(最低登録資本は3,000万米ドル)、外資国際運送会社(実務における最低登録資本は500万人民元)など、現在も依然として登録資本最低限度額に関する要求がある。
■現行の法律、行政法規および国務院の決定により、登録資本払込登記制を実施すると明確に規定されている企業については(銀行業金融機関、証券会社、労務派遣会社などを含む)、現時点では登録資本引受登記制を実施しない。
■登録資本引受登記制の実施に伴い、会社の登録資本はやや長い期間において全額の払込が行われることはない。このため、一部の特別な資格、優遇待遇などで会社の登録資本に対し一定金額を満たす要求があるものについては、ある程度において実質的な意義を失うこととなり、相応に修正されるものと思われる。ただし、明確に修正されるまでは、これら登録資本に対する要求は原則として依然有効である。
■「会社の払込資本は、以後、工商登記事項としないこと」、「会社登記の際には、出資検証報告書の提出を必要としないこと」により、「会社登記管理条例」などの関連規定および各地工商部門の事務手順、提出文書に関する要求などはいずれも改正済みまたは現在改正が進められているため、注意する必要がある。
■現在の中国社会では、信義誠実の失われること著しい。登録資本が払込制から引受制に変更された後は、初回の取引を行う前に、取引相手について信用調査を行うか、あるいは必要な担保等の提供を求めることが望ましい。
2. 企業年度検査制度から企業年度報告公示制度への変更
具体的には以下の内容が含まれる。
■企業は年度毎の所定の期間内に、市場主体信用情報公示システムを通じて工商部門に対し年度報告を申告した上、社会へ公示しなければならず、いずれの企業および個人も照会可能である。
■企業年度報告の主な内容には、会社株主(発起人)の出資払込状況、資産状況などが含まれ、企業は年度報告の真実性、合法性について責任を負い、工商部門は企業年度報告の公示内容に対し抜取検査を行うことができる。
【筆者の観点】
■「年度検査」から「年度報告」への変更は政府の監督管理の緩和を意味するものではない。一つには、企業は自己の年度報告の真実性、適法性について責任を負わなければならず、真実隠蔽の状況、虚偽を弄する状況が見つかった場合、工商部門は企業に対し処罰を科した上、その法定代表者、責任者に関する情報を公安などの部門へ通報する。もう一つには、企業が三年を超えて年度報告公示義務を履行しなかった場合、「ブラックリスト」に記載される。
■国家工商行政管理総局は2014年3月1日からの企業年度検査作業の停止を決定しているが、企業年度報告公示制度の具体的な実施、実務規定などは未だ公布されていないため、注意が必要である。この他、外商投資企業について言えば、これまで商務部門、工商部門、財政部門、税務部門、外貨部門、統計部門が実施していた連合年度検査も随時変更があるため、同様に注意が必要である。
3. 住所(経営場所)登記手続きの簡素化
具体的には以下の内容が含まれる。
■申請者が場所の適法使用証明を提出すれば、直ちに登記を行うことができる。
■市場主体住所(経営場所)の条件については、省級政府は自らまたは下級政府へ授権して具体的な規定を設けることができる。
【筆者の観点】
■企業数の増加に伴い、企業住所(経営場所)は徐々に都市において不足する資源となっている。また、もう一方では、多くの小規模零細企業、サービス類企業、新規設立企業などの住所(経営場所)に対する要求は決して高くない。上記考えに基づき、本方案は前述の企業住所(経営場所)登記手続き簡素化の措置を提起したと筆者は考える。
■手続きの簡素化は、政府の監督管理の緩和を意味するものではない。本方案は住所(経営場所)登記手続きの簡素化を行うと同時に、住所(経営場所)の管理強化を求めている。工商部門は法に従って登記住所(経営場所)と実際の状況が一致しない問題を処理する。特定条件を具備しなければならない住所(経営場所)について、または違法建築の利用、建物用途の無断変更などを伴う経営活動への従事については、計画などの部門が法に従って管理する。許可審査事項にかかわる場合は、許可審査に責任を負う行政管理部門が法に従って監督管理を行う。
■各地の経済発展状況、都市建設管理などがそれぞれ異なるため、本方案では各地方政府が住所(経営場所)に関する条件について具体的な規定を設けると定めている。よって、地方政府のこれらの規定に対し注意する必要がある。
4. その他
具体的には以下の内容が含まれる。
■電子営業許可証および全工程電子化登記管理を推進する。
■市場主体信用情報公示システムを構築する。企業は規定に照らして年度報告および取得した認証条件・資格の許可情報を申告、公示する。
■信用制約体制を整備する。
■その他。
【筆者の観点】
■登記管理の電子化、市場主体信用情報公示システムおよび信用制約体制などの制度の実施は、社会大衆の情報公開および情報共有の期待に応えるものであり、大衆による監督、信用制約などの方法を通じて企業に対する監督管理を強化することができる。
■信用制約体制が規則違反のあった企業および個人に対し厳格に講じる信用制約措置には、経営異常名簿または「ブラックリスト」に記載された企業およびその責任者に対し連動呼応システムを実施して各部門が共同で行う信用制約措置、完全な国外求償保障体制を構築して規則違反行為のあった国外投資者およびその実際の支配者に対し対中国投資の厳格な審査または制限を行う措置が含まれる。
■全国企業信用情報公示システムは既に2014年3月1日から投入運営されており、当該システムが公示する企業情報には、基本情報、投資者情報、主要人員情報、分支機構情報、行政処罰情報などが含まれる。企業も当該システムを通じて、取引相手などの登記情報、信用状況を照会することができる。
本方案は登録資本登記制度などの事項について改革を進めた全体方案であり、関連改革措置の具体的な実施は、関連法規、実務規定などの制定、改正に依る。これらの法規、実務規定など、および本方案の実施状況については、企業は注意する必要があり、筆者も引き続き注目していく。
(里兆法律事務所が2014年3月10日付で作成)
備考:
「登録資本登記制度改革方案」
http://www.gov.cn/gongbao/content/2014/content_2620280.htm
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