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「労務派遣暫定規定」の重点、難点に対する解読と対応(後半)

中国ビジネスレポート 法務
邱 奇峰

邱 奇峰

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2014年6月9日

2012年末に公布された「労働契約法修正案」、2013年11月に公布された「労務派遣若干規定(意見募集案)」(以下「新規草案」という)、最近公布された「労務派遣暫定規定」(以下「新規定」という)(2014年1月24日公布、2014年3月1日正式施行)という、労務派遣関連法律制度の集中更新は(意見募集から最終公布までも多くの案が存在する)社会の広い注目を集めてきた。

「新規定」は労務派遣の規定を系統立てたものであり、「労働契約法」を詳細化する以外にも、いくつかの新規定を制定した。全体として、「新規則」が派遣先企業の派遣従業員使用に新たな挑戦を突き付けることは避けられない。「新規定」の条文、各地方政策および実務経験に照らし、当所は「新規定」の重点、難点について解読し、関連対応策を簡潔に2回にわたり紹介する。

前回からの続き)

三、派遣先企業は「職務とかかわる福利待遇」を提供する際、派遣従業員を区別してはならない


同一労働同一報酬の「報酬」には、賃金以外に、その他も含まれるかについて、常に論争がある。これまでの主流観点は、「報酬」とは賃金を指し、社会保険、補充保険、福利待遇などは含まないというものであった。「新規定」第9条では、「派遣先企業は労働契約法第62条の規定に基づいて、被派遣労働者に対し職務とかかわる福利待遇を提供しなければならず、被派遣労働者を区別してはならない」と規定されており、派遣先企業は「職務とかかわる福利待遇」を提供する上で派遣従業員を区別してはならず(実質上の同等待遇)、将来的に派遣従業員が派遣先企業と「同一福利紛争」を生じることが予想される。

「同一労働同一報酬」に関する法律規定の変更について、派遣先企業は以下のとおり対応することが考えられる。
1.派遣従業員の現行の福利政策が法律の規定に合致しているかを分析し、違反している場合、派遣従業員の福利政策を改めて制定することが望ましい(従業員手帳または福利関連規定)。
2.派遣従業員の福利政策を制定する際には、全ての派遣従業員を完全に同じにすることは求められていない。「労働契約法」第63条が定める同一労働同一報酬の要求は、「同一の労働報酬分配方法を実行する」であり、即ち、派遣先企業は従業員個人の業務経験、作業技能、勤務への積極性などの個別要因を総合的に考慮し(ただし、派遣従業員の出身により区別してはならない)、分配方法において統一すればよいのであり、総合的な状況が同じであれば、同一の福利を与え、総合的な状況が異なれば、福利の分配に相違があっても構わない。

この他、社会保険、補充保険と同一労働同一報酬の関係について、「新規定」では規定を設けていないため、これまでの主流観点に基づき実施したとしても、リスクは大きくない。ただし、福利待遇で区別しない政策を見る限り、今後、派遣従業員の出身により社会保険、補充保険などの項目における待遇を区別しないことが、よりリスクの少ない、紛争の少ない方法と言える。

四、派遣従業員の戻し、打切り

派遣従業員の戻し、打切りと経済補償金の問題について、「労働契約法」の規定が簡単過ぎるため、実務において、多くの紛争を伴う問題を生じてきた。「新規定」は関連経験をまとめ、一部の重点問題について規定を設けた。

1.「労働契約法」第65条は、派遣従業員に「第39条および第40条第1項、第2項に定める状況」が存在する場合、派遣先企業は派遣従業員を戻すことができ、労務派遣元企業は労働契約を解除することができると規定しているのみであり、その他の派遣元への戻しの状況については規定がない。「新規定」第12条には新たに多くの派遣元への戻しの状況が追加され、例えば、「労働契約法」第40条第3項(客観状況に重大な変化が生じた場合)、第41条(経済的人員削減の状況)、「派遣先企業が法に従って破産宣告、営業許可証の取上げ、閉鎖、抹消命令を受け、または繰上げ解散あるいは経営期間満了後の経営不継続を決定した場合」、労務派遣協議が期間満了により終了した場合である。今後は、派遣先企業の派遣従業員戻しにはより多くの法的根拠を有し、特に常用されるのは「客観状況に重大な変化が生じた場合」、「経済的人員削減」などである。

2.ただし、「新規定」第15条では、「新規定」第12条の規定に従って派遣従業員を戻す場合、労務派遣元企業は直接労働契約を解除してはならず、「再派遣を行う際に労働契約の取決め条件を維持しまたは引き上げたが、被派遣労働者が同意しない」場合に限り、労働契約を解除することができるとも規定されている。労働契約が解除されていない場合、派遣従業員が戻された後、仕事がない期間においては、労務派遣元企業が最低賃金を下回らない基準で報酬を支払う。

3.「新規定」は形を変えて「戻しに関する取決め」を制限した。「新規定」第24条では、「派遣先企業が本規定に違反して被派遣労働者を戻した場合、労働契約法第92条第2項の規定に基づき執り行う」と規定しており、「労働契約法」第92条は処罰に関する規定となっていることから、「新規定」が非法定状況における派遣従業員の戻しについては、基本的に否定的な姿勢であることがうかがえる。このため、今後、被派遣労働者の戻しの状況を取り決める必要があるとしても、できる限り法定の戻し状況の範囲内で解釈できるようにすることが望ましい。

4.「新規定」第13条は「戻し延期」に関する規定を追加しており、派遣従業員が「労働契約法」第42条、第45条に定める状況(例えば医療期間、三期、労災期間など)にある場合、派遣先企業は「客観状況に重大な変化が生じた」、「経済的人員削減」を理由として派遣従業員を戻すことができず、派遣期間満了の時点から関連状況が消失するまで延長した上で、はじめて派遣従業員を戻すことができる。

五、地区を跨ぐ労務派遣


地区を跨ぐ派遣従業員の社会保険利益を確保するため、「新規定」第18条、第19条は派遣先企業所在地にて保険に加入する原則を確立した。労務派遣元企業が派遣先企業所在地に分支機構を設立している場合、分支機構が保険加入手続きを行い、分支機構が存在しない場合、派遣先企業が労務派遣元企業の代わりに保険に加入する。

地区を跨ぐ労務派遣について、派遣先企業が回避しなければならない負担は、労務派遣元企業の代わりに保険加入することで自己の管理コストが増加することである。よって、労務派遣を利用する際に考慮する点の一つが、社会保険納付などの一部人的資源管理作業を労務派遣元企業に行わせ、自己の管理コストを引き下げることであり、派遣先企業が地区を跨ぐ労務派遣を選択する場合、できる限り派遣先企業所在地に分支機構を有する労務派遣元企業を選択することが望ましい。

六、一部の新動向に関する簡潔な紹介

先頃、実務を通じて、当所が把握した情報は以下のとおりである。
1.現在多くの地方は全体として模索、調査研究段階にあり、全面的な「新規定」実施の検査は行われていない。
2.上海は、派遣先企業と労務派遣元企業を指導するため、現在、「新規定」の実施細則の制定を準備している。
3.北京では既に2014年3月10日に「京人社発 [2014]2号」である「北京市労務派遣使用状況届出作業通告」を発布し、従業員使用調整プランの届出作業について規定を設けた。
4.浙江省では既に2013年3月4日に「浙人社弁発〔2014〕19号」である「人的資源社会保障部弁公庁の労務派遣暫定規定の実施徹底作業の実施に関する通知についての浙江省人的資源社会保障庁弁公室の転送」を公布し、従業員使用調整プランの届出作業および関連作業について規定を設けた。

まとめ

「新規定」の内容は多く、当所は差し当たり上述したいくつかの点における重点、難点を選択して解読した上で、ご参考までに関連対策の分析を行った。労務派遣メカニズムの全体的な整理または再構築については、各派遣先企業の具体的な状況に基づき、個々に検討した上で的確な措置を講じる必要がある。

(里兆法律事務所が2014年5月4日付で作成)

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